数多くの異なるセンサーを統合した小さなデバイスが、カメラを使わずに人間のさまざまな行動をモニタリングする。商品化には認識率を限りなく100%に近づける必要がある。
ジェラド・ラプトは、センサーが搭載されたインターネット接続の家電機器を買わずに、家をもっとスマートにしたいと考えている。代わりにクラッカー1枚ほどの大きさの装置にセンサーを山ほど搭載し、それを壁のコンセントに差し込み、ティーケトルからペーパータオル・ディスペンサーにいたるまで室内のあらゆるものをモニタリングする方法を思いついたのだ。
ラプトはカーネギーメロン大学で人間とコンピューターの相互作用を研究する大学院生だが、統合センサーと自身が名付けたプロジェクトの一環としてこのガジェットを作った。ペーパータオルがあと何枚残っているか読み取ったり、人がいつ建物に出入りしたかを探知したり、高齢な家族に目を光らせたり(家電を通して典型的な行動パターンを追うなど)できるという。デンバーで開催された「CHI(コンピューター・人間相互作用カンファレンス)」で公開された。
統合センサーはまだ市販製品ではないが、最初のテストでは非常に正確に作動した。ラプトの研究チームは、過去に製造した100個のデバイスに対してストレステストを実施している。現時点では1個当たりの製造コストは100ドルだが、大量生産で30ドルほどに抑えることができるという。
既存のスマートガジェットは高価で、ガジェット同士や家中にあるまざまなものを接続する無線スマートタグとの相互運用が常にうまくいくとは限らない。そのため、コンパクトで高性能な代替品に着目したという。さらに、カメラを使わずにどこまで感知できるか実験したいと考えた。人々はカメラの存在をプライバシー侵害と捉えている、という調査結果があるからだ。
研究チームは、動きや音、圧力、湿度、温度、光度、電磁干渉、その他諸々の物理的変化が追跡できるセンサーをボードに搭載した。
「さまざまなセンサーによって、モノの状態を幅広く柔軟に探知します」とラプトは説明する。
研究チームは、これらのセンサーを搭載したボードを建物に5つ取り付け(キッチン、オフィス、共有スペース、教室に各1つずつ)2週間作動させた。キッチンではシンクでの水の使用やペーパータオル・ディスペンサーの使用を探知し、オフィスではドアのノックを追跡できた。共有スペースでは、いつコーヒーが入れられたか、電子レンジが使われたか、ドアが開け閉めされたかを探知できた。
研究チームが制作した映像では、室内における人間のさまざまな行動から得られたセンシング情報が、概念実証ソフトウェア(POC)によってどのようなイベントに分類されていくかが分かる。
プロジェクトの正確性は非常に高かったが、市販するにはおそらく改良を加える必要があるだろう。1週間のトレーニングとテストにおいて、5カ所に設置した38基のセンサーの正確性は平均して96%であったが、次の1週間でわずかに上がり98%となった。しかし、たとえ2%であったとしても、ユーザーは誤検知によって興味を失いかねないのだ。