Web制作会社H2O spaceを率いる谷口允(たにぐちまこと)氏がkintoneに関わるようになったのは、大きな変革期を迎えつつあるWeb制作業界に対する危機感がある。社内システムとWebサイトの架け橋をkintoneで作り始めた谷口氏に、Web界隈とkintoneという観点で話を聞いた。(インタビュアー TECH.ASCII.jp 大谷イビサ)
Webサイト制作を通じて中小企業の悩みにたどり着く
現在、kintoneのエバンジェリストとしてWeb界隈でのkintone活用を拡げている谷口氏。学生時代はゲームのクリエイターを志したが、ゲーム開発会社への就職はうまくいかず、システム開発会社に入社。その後、So-netに入社し、インターネット事業に携わった後、24歳で独立する。
「もともと独立志向があったので、会社員を続けるつもりはなかったですね。親から3年くらいは会社員やっておけと言われ、修行のつもりで4年やりました(笑)。So-netの上司も独立に理解があったし、同僚でも独立している人が数人いました」(谷口氏)。
学生時代・会社員時代はC++やPerl、ASPのスキルを蓄えてきたが、独立後はPHPを中心に受託開発を手がける。そして、起業して3年目以降は、Webサイトの仕事が増え、WordPressを使ったWeb制作会社として、おもに大学や中小企業のWebサイトなどで実績を積んできた。クリエイターの教育にも力を入れており、講演や著作なども手がけてきた。しかし、この数年はWebサイト構築の仕事がライトになってきたこともあり、もう1つの事業軸としてシステム開発を模索していたという。
「Webサイト制作を通じて中小企業とおつきあいしていると、社内システムがボロボロですとか、情報管理ができてませんとか、Excelファイルが氾濫していますとか、そういった悩みがけっこう出てくるんです。でもイチからシステムを作ると、イニシャルで300~500万円になるし、ヒアリングから構築まで半年かかるので、なかなかお客様に手が出ない。これはどうしたもんだろうと悩んでいました」(谷口氏)
kintoneに期待するのは「CMSの次のステージ」
こうして模索を続けてきた2015年頃、目にとまったのがサイボウズのkintoneだ。業務システムを自ら作れ、カスタマイズもできるというkintoneをまずは自社で契約して触り、その後は実案件で導入してみたという。
「たとえば、GOBLINというレンタルスペースを展開しているお客様なんですが、導入前は電話で受けた予約をExcelでまとめ、Googleカレンダーで予定を管理し、紙の使用履歴を集計していました。『それは大変ですね』ということで、それらをkintoneにまとめたのが昨年の春くらいです。お客様からの評価もかなり高くて、その後は従業員の勤怠管理から、会計まで全部やりたいという話になって、kintoneのよさを実感したんです」(谷口氏)
すっかりkintoneファンになった谷口氏は、JavaScriptによるkintoneのカスタマイズネタをFacebookに投稿し続け、自身が登壇するWordPressのイベントにもkintoneとWordPressの連携ネタを盛り込んだという。こうした活動がサイボウズ社員の目にとまり、Web界隈では珍しいkintoneエバンジェリストとしてイベントでも登壇するようになったというのが、今に至る経緯だ。
Web界隈の人である谷口氏がkintoneに期待するのは「CMSの次のステージ」だという。今まで社内システムとWebサイトは独立して存在していたため、両者はそれぞれ手作業で連携する必要があった。たとえば、社内にある商品マスターのデータは、CSVにエキスポートし、Webサイトを構築・運営するWordPressなどのCMSにインポートしなければならない。または基幹システムなどとつなぎ合わせて連携させるプログラムを組むしかない。しかし、kintoneとCMSを連携すれば、必要なデータをリアルタイムにWebサイトに反映させることが可能になる。
「WordPressでフォームを作ると、お問い合わせの履歴をデータベースに格納したいという話に必ずなるのですが、弊社としてはWordPressのデータベースには個人情報を入れたくない。だから、今までそういうお話はお断りしていたんです。でも、WordPressを経由して、kintoneに格納するのであればセキュリティ面でも安心できます」(谷口氏)。
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