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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第410回

業界に痕跡を残して消えたメーカー ウェブブラウザーの普及を加速させたNetscape

2017年06月05日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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ブラウザーからサーバーに軸足を移す

 話をNetscapeに戻すと、ブラウザーを有償で売る商売は次第に厳しくなってきた。これもあってNetscapeもまたNetscape Composerを無償化する方向を決める(ただし実現したのはAOLの時代)。

 そうなるとNetscapeはなにで食べていけばいいのか? という話に当然なるわけだが、その答えはサーバーである。ブラウザーはあくまでクライアント側のソフトであるが、サーバー側はまだブラウザーほど標準化が進んでいなかった。

 その一方で自社のウェブサーバーを建てたい、という企業ユーザーはどんどん増えてきており、こうした企業ユーザー向けの製品を提供する方針を固める。主要なところで以下の製品を次々にリリースしていく。

Netscapeの企業向けサーバー製品
FastTrack and Enterprise
web servers
ウェブサーバー
Collabra Server NNTPニュースサーバー
(Collabra Software, Inc.を買収して提供)
Directory Server LDAPサーバー
Messaging Server メールサーバー。IMAPとPOPをサポート
Certificate Server SSL暗号化に対応した暗号化サーバー
Calendar Server グループウェア機能を提供するサーバー
Compass Server 検索エンジンサーバー
Application Server ウェブアプリケーションを動かすためのサーバー
Publishing System 今で言うニュースサイトのような商用サイトを構築するサーバー

 このあたりで、インターネットの最初のバブルがそろそろ弾けそう、という見通しをClark氏は得たのだろう。1998年11月、AOLは株式交換でNetscapeを買収することを発表する(買収完了は1999年までかかった)。

 交換比率はNetscapeの株1株あたりAOLの株0.45株で、当時のAOLの株価(89.25ドル)で換算すると買収金額はおよそ42億ドルに相当する。Andreessen氏は一旦はAOLにCTOとして移籍したが、1999年中に離脱し、Loudcloudというベンチャー企業を興す。一方Clark氏はAOL買収のタイミングで保有株をすべて売却、まったく違う別のビジネスを開始する。

 そしてAOL傘下に入ったNetscapeは、ブラウザーのソースコードを(もともとはNetscape Communicationが出資して立ち上げた)Mozilla Foundationに委託。しばらくの間はAOLのNetscape部門とMozilla Foundationが独自にブラウザーを開発するややこしい状態になっていたが、2003年にAOLはNetscape部門を閉鎖し、旧Netscapeの開発陣を全員解雇している。

 その後は開発を外注してNetscape 8/9をリリースしたものの、ここで開発は完全に打ちきられ、Netscapeの名前も途絶えることになった。

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