最高効率のACアダプターの開発し、年間最も多くハッカソンを開催
テクノロジーとしては、ディープラーニング専用プロセッサー「DLU」、世界初のグラフデータ学習技術「Deep Tensor」を開発しているほか、大きさを10分の1にし、スマートフォンの充電時間を3分の1にした世界最小、最高効率を実現するACアダプターの開発、ブロックチェーン技術を活用した国境を超えた証券クロスボーダー取引をみずほ銀行と実証実験している事例を紹介した。
さらにプラットフォームでは、デジタルビジネスプラットフォーム「MetaArc」の強化に取り組み、2017年度第1四半期だけで17種類の新サービスを追加するといった進化を続けている。
グローバルでのサービスデリバリー体制の構築や、米オラクルをはじめとするグローバルベンダーとの提携、金融FinplexやものづくりCOLMINAといった業界向けプラットフャームも提供。AIサービスである「Zinrai」を強化し、様々な業種・業務ソリューションへの組み込みも示した。「今回の富士通フォーラムでは、Zinraiを組み込んだソリューションを30種類紹介している」という。
一方で、共創パートナーとしての取り組みでは、Digital Transformation Centerにおいて、開設1年間で380件のワークショップを開催し、207件が具体的なプロジェクトに進んでいると紹介。2017年8月には関西にもオープンすることを明らかにした。
また、PLYやTechShopといった共創の場提供や、富士通独自のフューマンセントリック・エクスペリエンスデザインを策定し、ヤマハとの共創でもこれを活用していること、2017年1月にデジタル革新の専門部隊として、デジタルフロントビジネスグループを新設したことなどを示した。
さらに「富士通は、日本で最もハッカソンを開催している企業であり、年間1500人以上が参加。2017年7月からは富士通デジタルビシネスカレッジを開講し、共創のための人材を育成する」という。
とくに時間を割いて説明したのが、オープンイノベシーョンに対する取り組みだ。
シリコンバレーやハーバードで取り組むオープンイノベーション
ここでは、2015年にシリコンバレーに開設したOpen Innovation Gateway (OIG)を紹介。顧客やバートナーと、シリコンバレーのスタートアップ企業、大学、研究機関などを結びつけているという。
富士通 Open Innovation Gatewayのモヒ・アメッドシニアディレクターは、「OIGでは、顧客と先進的スタートアップとの共創、富士通の商品ポートフォリオの強化、富士通の先端技術のビジネス化に取り組んでいる。これまでに1700人以上が訪れ、スタンフォード大学のd.Schoolのインダストリーパートナーとして富士通が選定されたほか、みずほ銀行と北米におけるFintechを活用した新たなビジネスの立ち上げ成果があり、フォードとはイノベーション文化の強化に向けた取り組みを開始している」とした。
ハーバードビジネススクールにおいても、OIGの取り組みをケーススタディとして取り上げており、全世界に紹介されているという。「富士通はOIGを通じて、シリコンバレーのスピード感を持った新たな価値をCo-creationで進めたい」と述べた。
また富士通の技術や製品と、ベンチャー企業を組み合わせた「MetaArcベンチャープログラム」を実施していることにも触れ、これまでに4回のコンテストを経て、20社との協業を進めていることを明かした。富士通フォーラムの展示会場でも、6つの協業成果を展示したという。その1社であるグリッドの曽我部 完代表取締役が登壇。
「独自の機械学習、深層学習のフレームワークであるReNomを活用し、AIの開発を加速させることができる。製造、医療、電力、プラント、金融、交通などの分野で開発プロジェクトに参画。製造業では生産ラインからあがってくる膨大なデータをもとに、AIに分析させ、製品品質、故障、歩留まり改善などに貢献している。Zinraiとの組み合わせにより、新たなAIサービスを開発。Zinraiプラットフォームの上で、多くの人がAIを構築することが現実になる」などとした。
最後に、再び登壇した富士通の田中社長は「富士通は社内外のノウハウを結集し、最適化した体制を整備している。しかし、最終的に重要なのは人の力である。大きな変革の時代に、期待に応えられる人材の育成に積極的に取り組み、これをグローバルレベルに進めていく。また、富士通はすばらしいグローバルパートナーに恵まれている。一体となって、顧客の競争力強化に貢献したい。富士通は、テクノロジーで人を幸せにするという信念を持っている。いま以上に便利になり、人が幸せになる。そして、今日よりも、明日の方がいい世の中になる、というのが根底にある考え方。みなさまとともに、豊かな未来を築きたい。富士通をCo-creationのかけがえのないパートナーとして選んでいただくようにお願いしたい」と述べて、基調講演を締めくくった。