ネット端末がPCからスマートフォンへシフト
第2に、この5年でネット端末の主役がPCからスマートフォンにシフトし、新しいアプリが続々と登場し普及していったということが挙げられる。
当初バイドゥは音楽や映像検索で強みがあったが、動画アプリや音楽アプリや地図アプリなど、用途に応じたアプリが登場したおかげで、バイドゥの必要性が大きく低下した。
このユーザーが続々とスマホへと移行するタイミングで、テンセントは前述の微信をリリースし、当時は低速度なGSMでもボイスメッセージが送れるとアピールした。
また、テンセントはお膝元の深センを中心とした各リアルショップに対し、端末をかざすと店舗のサイトやアカウントページに飛ぶQRコードを貼りつけるよう働きかけ、微信とQRコードが同時に普及していった。
PCからスマホへの移行で、中国ではポータルサイトからの利用から、用途ごとのアプリ利用に変化した。
ネットユーザーのスマホシフトの例を挙げれば、2016年の11月11日(双十一)のオンラインショッピングデーで、アリババの天猫は571億元(約9296億円)を1日に売り上げ、そのうちの84%がスマホなどからの注文だった。
生活を変えるほどの電子マネーの普及
第3の理由として、アリババとテンセントが電子マネーをリリースし、それぞれシェアを獲ったことが挙げられる。
アリババ(配下のアントフィナンシャル)の「支付宝」(アリペイ)と、テンセントの微信の一機能である「微信支付」(WeChatpay)が電子マネー機能をリリース。大いに普及し、これなしの生活が不便になるほどに変化した。
リアルショップやECサイトでの支払いにとどまらず、最近ではシェア自転車サービスなど、新規サービスでもスマホアプリを起動し、どちらかの支払いアプリで支払えるようにするという提携が加速している。
当時はQRコードをかざして支払うというまったく新しいサービスだったので、アリババは対応店舗を増やすべく動き、またさまざまなお得なキャンペーンを実施して利用者増加に勤めた。
また、支付宝はあまった電子マネーを投資運用する「余額宝」をリリース。気軽にお金が増えるとあって、多くの人が利用に走った。その後、微信支付も追随し、余額宝については運用資金が世界最大となるまでになった。
これまでもSNS(テンセント)とEC(アリババ)は、アカウントがなければ利用ができないが、検索(バイドゥ)は必ずしもアカウント登録を必要としなかった。
この状態にさらに電子マネーが紐づいたので、いやがうえでもテンセントとアリババを利用しなくてはならなくなった。
今後はテンセントの一強時代に!?
ほかにも3社がそれぞれ中国国内外で台頭した企業を買収したり投資したりというのがあるが、3社の勢いを分けた点は上記3点に集約されると考える。
最終的に時代に合わせたデバイスに向けて電子マネーサービスを普及させたテンセントとアリババが中国で存在感を出した。
ほかのネット新興国でも似たような流れとなるのか気になるところ。他国といえば、スマートフォンによるインターネットユーザーが急増しているインドでは、ECサイトの「Flipkart」にテンセントが、FlipkartのライバルのECサイト「Snapdeal」にソフトバンクが、電子マネーの「Paytm」にアリババが出資している。インドも面白くなりそうだ。
今後3社はユーザーデータについて、ビッグデータでの分析力を増強し、またIoT普及時代に対応していくが、テンセントが頭1つ出そうだ。
ユーザーが多ければ多いほどいいのだが、微信とQQを中国のユーザーが外すことは考えづらく、テンセントが最も中国ネットユーザーの行動データを抱えることになる。
ECも今の時代必須ではあるが、アリババと競合する京東が台頭してきているし、越境ECでは「網易」(ネットイース)が強い。アリババ離れはないだろうが、すべてのEC利用でアリババのサービスを利用するわけではなくなるだろう。
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