ニュースを書いている途中に懐かしい名前と遭遇
デジオンというと、最近はDiXiMブランドのDLNA関連のアプリで名を馳せているソフトメーカーだが、その発端は社名にもなっている「DigiOn」シリーズのサウンド編集をはじめとした音声処理技術。僕はWindows XP時代の愛機だったソニー「VAIO MXS」シリーズにプリインストールされていた「DigiOnSound 2」で、波形編集の世界と共にその名を知った。タイル化されたエフェクトや編集ツールが右も左もわからない当時の自分にはとてもわかりやすく、以来10年以上にわたって波形編集は「Sound it!」でも「Sound Forge」でもなくDigiOnSoundを使い続けた。
そんなデジオンの名に音楽ツールとして再会したのは、桜真っ盛りの4月上旬のこと。初心者向けのPCオーディオ用ハイレゾプレイヤーソフト「CurioSound」のリリースを発見したときに、僕の目はある一点に釘付けになった。
いわく「CD音質の音源や圧縮音源をリアルタイムにハイレゾ相当の高音質で再生することを可能にしました」。単なるアップコンバートならば、ソニーの「DSEE」やJVCの「K2HD」をはじめとしたいくつかの技術が思いつくが、このソフトが素晴らしいのはアップコンバートをファイルに出力できるという点。
つまり、昔せっせとリッピングして、ハイレゾ音源とともにめっきり再生機会が減ってしまった音源が、簡単操作でハイレゾになるということを意味する。「これはかなり可能性を感じるぞ」そんなことを思いながら、編集部から帰ってきたその日の夜にソフトをポチっていた。
聴きたい音源が必ずハイレゾ化されるとは限らない
ワクワクしながら音楽再生ソフトをインストールする春の夜ふけ、なんとも乙なものだ(倒錯)。別段特殊な設定もなく、あっさりとセットアップを終了し、早速ソフトを立ち上げてみる。
“初心者向け”と言うだけあって、細かな設定はあまりない。オーディオチックな部分といえば、再生デバイス/WASAPIの指定、エフェクトやイコライザーの調整くらいだろうか。なにせ基本は画面左のライブラリーツリーから音源をダブルクリックして再生するだけ。PC用ハイレゾプレイヤーではもはや当たり前とも言うべきASIOさえ、この文章を執筆している時点では対応しない。
OS標準搭載のWindows Media Player並のシンプルさからは、基本的な対象ユーザーが「パソコンで簡単にいい音を聞きたい」というビギナー層であり、DigiOnシリーズの初心者に対する優しさを感じた。
しかし、僕が感じたこのソフトの真価は簡単操作ではない。僕のライブラリーには最近めっきり聴かなくなった数千の非ハイレゾ音源があり、その多くに音楽との思い出が詰まっている。かつて聴いたCDを今もう一度聴き直したいという願いは、ハイレゾバーションの音源を買ってしまえばそれでいいが、残念ながらすべてを買い直せるわけではない。特に1990年代のJ-Popや少々マイナーなCDなどは、様々な事情でハイレゾ販売できない。
それでもハイレゾで聴きたいという願いを叶えてくれるのが「ハイレゾサウンドで聴く」というトグルスイッチだ。基礎技術は最新のDigiOnSound Xにも搭載されているもので、デジオンはコレをさらに進化させ「CQe」という技術にまとめ上げてCurioSoundに採用した。
音を聴く前に、まずハイレゾ書き出しを試してみる。使い方は事前に環境設定画面で保存場所を指定しておき、ライブラリーから目的の曲を選択してプレイリスト上部にある「ハイレゾで保存する」を押すだけ。細かいパラメーターの調整などは必要ない。
ソフトのコンセプトどおり実に簡単だが、変換時間は少々余裕を見ていた方がいい。Core i5と16GBのメモリーを搭載した僕のVAIO Zでは、CD1枚分の音源を変換するのにざっと25分かかった。加えてファイルはフォルダでまとめられたりはしないため、音源をまとめるのは手作業となり、夜中に走らせておいて全ライブラリーをまとめて一気にハイレゾ化といったことは現実的ではない。このあたりはソフトのアップデートで便利になってもらいたいところだ。