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ベロダイン、自動運転車の基幹部品ライダー新製品を低価格化

2017年04月20日 22時57分更新

文●Jamie Condliffe

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自律自動車向けのライダー・センサー生産最大手のベロダインは、従来の機械式から半導体制御で照射する向きを制御できる低価格な新方式の製品を発表した。ただし、価格以外にも重要な要素がある。

今まさに誕生しつつある自律自動車産業は、ややパニック状態にある。レーザー・センサーはほとんどの自動運転車が周囲を把握するのに欠かせない部品だが、現在、供給量が足りない状態なのだ。もちろん、需要が多く供給が足りない状態は、センサー・メーカーには好都合だ。そしてつい先日、レーザー・センサーメーカー最大手のベロダインが、従来に比べてはるかに安価なセンサーを発表した。

自動運転車の多くは、ライダー(レーザー光線を照射し、反射によって周囲をスキャンするセンサー)で、物理的な空間をマッピングしている。だがMIT Technology Reviewが最近記事にしたとおり、自律自動車の開発ブームによって、以前はニッチ分野にいたライダーを手掛ける部品メーカーは、急増する需要への対応に苦労している。ウーバーとウェイモ(Waymo)は自社で代替品を開発してきたが、自社開発のハードウェア関連の知的財産権で訴訟に巻き込まれており、トラブルの最中にある。

円筒型のライダーは、特に自動運転車ぽい外見上の特徴であり、注目される部分だ。かなり大きめのコーヒー豆の保管缶のような見た目で、車の屋根に取り付けられ、レーザー・パルスをまき散らしながら、クルクル回っている。中でもシェアが多いのはベロダイン製で、最高級モデルの価格は何万ドルもする。

そのベロダインが、新型の半導体ライダー・センサーを発表した。現行の機械式ライダー・センサーより小型で、価格もずっと安くするという。新型センサーは回転せず、電子的に光線の向きを制御し、レーザー光線を照射する。そのためセンサーひとつがカバーできる視野は120度しかなく、1台の車に3つ取りつけないと、回転型センサーのカバー範囲と同じにならない。だが新型センサーは200m先の空間まで把握できる(従来製品は100m程度)という。

さらに半導体を採用したことで、いくつかの長所がある。まず装置を小型化できた。新製品の幅は約13cm、高さと奥行きは約5㎝ほどなので、フェンダーやミラーに内蔵できる。また、機械を使わないので、従来方式よりも壊れにくい。さらに、おそらくもっとも重要なのは、新製品はずっと低価格だ。比較対象にもよるが、数百ドルも安くなる。

新製品の発表により、ベロダインは同種の半導体ライダー・センサーを開発する他の企業との競争に直接さらされる。スタートアップ企業クアナジーはすでに同様のセンサーを開発済みで、 今年9月から1個250ドルで出荷開始予定だ。さらにイスラエル企業イノビズは、1台100ドルのセンサーを2018年までに発売すると約束した。対するベロダインは、試作品を年末までに顧客に提供し、2018年末までには本格生産を開始する予定だ。

明らかに、レーザー・センサー不足は解消されつつある。特にルミナー等の新興企業が新方式のライダー・センサーでライダー市場に参入しようとしており低価格化の流れは止まらなさそうだ。

ライダー・センサー市場に名乗りをあげた企業のうち、どこが勝利するのかはまだわからない。実際、現状で勝者を予想するのはどうでもいいことだ。最終的には、大量生産ラインに乗った車にライダー・システムを供給する契約を取りつけた企業が、最大の勝者になる。人気車種の部品に採用されるには、供給可能量や価格以外に、寿命も重要な要素だ。特に部品の寿命は、自律自動車業界全体的に、まだ本格的には検証されていない。

(関連記事:IEEE Spectrum, “自律自動車の重要部品「ライダー」に盗用と在庫・性能不足問題,” “ハッキリ言って 自律自動車は醜くて高い,” “大学を中退してまで開発した自律自動車の基幹部品、年内製造へ”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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