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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第161回

Facebookが使い分ける拡張現実と仮想現実

2017年04月23日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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VRが先か、ARが先か

 Oculusを買収したFacebook、DaydreamでデバイスとアプリのVR環境を整えるGoogle、そしてゲームに特化して製品を販売するソニー。これらの企業が民生用のVRの主要なプラットフォーマーと言えます。

 しかしモバイルデバイスの重要なプレイヤーであるAppleは、拡張現実、ARへの注目を明らかにしてきました。VRよりもARの方が、我々の生活に対する関与や変化が大きいという考えです。

 今回FacebookはVRプラットホームを公開しましたが、ARについてもその取り組みを披露しています。ただ、それは限定的な入口、つまり「カメラ」を用いたARプラットホームでした。

 Facebookアプリのカメラでは、写真、ビデオ、ライブ放送を行なうことができます。それぞれに対して、背景やフレームを加えたり、人の顔に動物のマスクなどの装飾ができます。ライブ放送でも同様のエフェクトがかけられるのです。

Facebookは、コンピュータビジョンとスマートフォンの技術向上で、カメラの画像をリアルタイムで分析し続けることができるようになったとしている。テーブル面と置かれている物体を認識することで、リアルタイムにエフェクトをかけることができる

 そうしたエフェクトのデザインを、開発者に開放した点がポイントです。Frame Studioというウェブ上のツールで簡単にフレームをデザインできるのです。また、Mac用アプリ「AR Studio」で、人の顔を認識してエフェクトをデザインしたり、ゲームの中で、あるいは店舗などでのARの表現を作ることができるのです。

AR Studioは、カメラから取り込んだ画像に対してエフェクトをかけるデザインツール。FacebookにおけるARのプラットホーム化の武器になるだろう

 ARといわれても、一般の人にとっては、どこから手をつけて良いのかわからなかった、というのが実際のところだったのではないでしょうか。そこでFacebookは、カメラというツールを通じて、ARへの理解と、非エンジニアによるARコンテンツの開発への道筋をつけたというのが、今回のF8におけるARの位置づけです。

 Facebookは、ARの活用について、「情報表示」「デジタルオブジェクト」「修飾・装飾」の3つがあると説明します。

 特に情報表示やデジタルオブジェクトでは、GPSやセンサーのような絶対的な位置情報やローカルな相対的位置情報(位置関係)が重要となります。

 位置関係で言えば、テーブルの上にコーヒーカップを置くと、それを防衛するタワーディフェンスゲームが現れるといったゲームの例を挙げていたように、多くの人が自宅を含む様々な場所で実現することができる、より身近なAR体験になるでしょう。

 VRではゴーグルを通して別の世界を見るという体験ですが、ARはスマホを通してデジタルが付加された世界を見る体験です。デバイスの違いから考えても、後者の方が先に訪れる未来であることは明らかですね。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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