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Amazonプライム会員の「即日配達の無駄遣い」で再配達急増?

2017年04月17日 02時22分更新

記事提供:通販通信

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「Amazonプライム会員」による即日配送が、再配達の増加を招いている可能性があることが、(株)ジャストシステムが12日に発表した「ECサイトの配送に関する意識調査」でわかった。

短納期サービスは、6割が一律で「最短納期」を選択

 同調査は、ジャストシステムのネットリサーチサービス「Fastask」を利用したネット調査で、月に1回以上ECサイトを利用する20~59歳の男女900人が対象。調査期間は4月6~7日。

 同調査によると、ECサイトの短納期の配送サービスを申し込む際は、「最短納期になるように設定している」が61.7%、「どちらかともいえない」が16.6%、「選択済みの内容を変更せずに注文している」が21.8%となった。このことから、短納期の配送サービス利用者の61.7%は、急いでいる事情があって「最短納期」を選択するのではなく、一律で「最短納期」を選択する傾向があることがわかった。

 また、「Amazonプライム」のように、年会費を支払うことで送料無料などの特典が受けられるサービスの利用方法については、57%が「早く届くものから個別に配送を依頼したい」、11.4%が「どちらともいえない」、31.6%が「まとめて配送を依頼する」と回答した。

 この項目の回答から、6割近くの「Amazonプライム会員」は、商品をまとめて購入するのではなく、その都度注文をしていることが予測される。また、短納期サービスの設定方法の質問では、商品購入時に61.7%が「最短納期」を選択しており、「Amazonプライム会員」も同等程度の人が、「最短納期」を選択している可能性もある。しかし、「最短納期」を選択している人は、どうしても早く届いてほしいから「最短納期」を選択しているのではなく、一律で「最短納期」を選択する傾向があり、「Amazonプライム会員」にも同等の傾向が見られる可能性もある。

 多くの配送業者は、「Amazonの荷物は再配達が多い」と口を合わせる。この理由として、配送料が無料である「Amazonプライム会員」が、急ぐ必要がなかったり、不在であることがわかっている場合でも、時間指定をせずに「即日配送」や「翌日配送」を選択している可能性が指摘されていた。今回の調査結果は、その指摘を裏付ける結果となった。

Amazonプライム会員に「即日配達の無駄遣い」の傾向?

 「Amazonプライム会員」は、年間費3900円(税込)の会員サービスで、通常は360円(税込)の「お急ぎ便」(注目確定日から3日以内の配送)や、通常514円(税込)の「当日お急ぎ便」(注文確定当日の配送)が何度利用しても無料となる。また、映画やテレビ番組が見放題の「プライム・ビデオ」、100万曲以上の音楽が聴き放題の「Prime Music」などのサービスも利用でき、配送以外のサービスも充実している。

 Amazonは、グローバルでプライム会員の拡大に注力しており、プライム会員のサービス内容は年々強化されている。宣伝にも力を入れ、昨年はプライム会員への入会を呼びかけるテレビCMも多かった。プライム会員の数は非公表だが、2015年は前年比50%増と、急拡大している。プライム会員の急増は、Amazonが急成長する要因の一つとされている。

 しかし、Amazonが成長した最も大きな要因は、販売商品数と早くて確実な「配送サービス」だろう。「商品の到着が遅い」「もっと早く商品がほしい」という通販利用者に悩みに応え、物流サービスを日々向上させたことがAmazonの今日の発展につながっている。朝注文した商品が夜に届くことに、感動した消費者も多いだろう。

 しかし、そのサービスレベルは向上しすぎて過剰気味になってしまったようだ。プライム会員は年間3900円の元を取るために、急ぐ必要がない場合でも「当日お急ぎ便」や「お急ぎ便」を指定し、そのことが再配達の増加につながっている。

 「Amazonプライム」の短納期サービスは、会員にとっては有益なものとなるが、再配達の増加や物流業界の労働力不足などが深刻化した今、社会全体から見ると負の側面も出てきた。ヤマト運輸が当日配送から撤退するという報道もあったが、プライム会員による「即日配送の無駄遣い」との関連性が深いと思われる。Amazon側も「日本の配送会社は世界でトップ」と認めており、即日配送は物流会社の協力なくして成り立たない。Amazonは今後、「即日配送の無駄遣い」を削減することも、検討すべき段階に来ているだろう。

(山本 剛資)

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