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フォード、パトカー用途のハイブリッド車を発表

2017年04月11日 06時44分更新

文●Jamie Condliffe

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ガソリン車から電気自動車への移行が進んでいる。しかし、最後までガソリン車が残りそうなのがパトカーだ。バッテリー切れの心配がなく、加速性能が高いことから、フォードがパトカー用途ハイブリッド車を発表した。

カーチェイスの様子がちょっと変わるかもしれない。

ニューヨーク市やサンフランシスコの通りでは、ハリウッド特有のカーチェイス場面が数多く撮影される。不恰好なパトカーがまだら模様の日差しを浴びながら年季の入った年代物のスポーツカーを追いかける。サスペンションが動き、タイヤがキキーッと音を立てる。V8エンジンの低い唸り声も場面を盛り上げるのに重要だ。だが近いうちに、悪党が警察から逃れようとする場面の音は大きく変わる可能性がある。

フォード製最新型パトカーは無敵といっていい。新型車両は追跡用で、犯人を追跡し続けるのに絶対に欠かせないさまざまな厳しい性能要件を満たしている。時速約50kmで線路を横切り、高さ約20cmの縁石に乗り上げ、水深約25cmを時速約60kmで駆け抜け、Jターンしてもピッタリと止まる。こういった性能の秘密は、ボンネットの下にある。パトカー用の新型車両はハイブリッド車なのだ。

実際、フォードのポリス・レスポンダー・ハイブリッド・セダンは、追跡用パトカーの試験にすべて合格した史上初のハイブリッド車だ。つまり、レスポンダーがトヨタのプリウスを追いかけるような、ハイブリッド車対ハイブリッド車のカーチェイスが、今後本当に起こるのだ。

ポリス・レスポンダーは走行中でも静かなのが特徴だ。電気モードでは一定時間、最高時速約100kmで走行できるので、エンジン音を発せずにパトロールできる。スポーツカーまでは追跡できないが、半電動システムで電気モーターとエンジンを同時使用すれば瞬時に加速できるため、短距離であれば非ハイブリッド車の追跡で相当有利になる。ポリス・レスポンダーには、防弾式ドア、防刃式背もたれ、汚れにくい後部座席など、現在のパトカーによくある便利な機能も数多く搭載されている。

フォードのフュージョンを基に開発されたポリス・レスポンダーには、環境問題の専門家も満足するハイブリッド品質がある。AP通信が取りあげたとおり、アメリカで最も人気があるパトカー「トーラス・ポリス・インターセプター」には、3.7LのV6エンジンが搭載されており、約3.8Lのガソリンで約30kmしか走行できない。一方、ポリス・レスポンダーは1.4kWのリチウムイオン電池と2Lの4気筒エンジンが搭載されており、約3.8Lのガソリンで約60km走れる。フォードによると、警察がレスポンダーを導入すれば1台につき毎年3877ドルのコストを削減できる可能性があるという。

電気自動車を採用すれば、性能が大きく改善され、コストも削減されるとはいえ、警察がガソリン車を廃止するまでには一般消費者以上に時間がかかるだろう。走行中にバッテリーが切れたり、再充電に時間がかかったりしても、一般ドライバーには単にイライラの原因なだけだが、法執行を任務とする警察には死活問題だ。ハイブリッド車を導入すれば、将来的にはカーチェイス場面からスリルがなくなるかもしれない。だが警察がハイブリッド車を導入するのは非常に合理的といえるだろう。

(関連記事: Associated Press, “米国人はデカい車が大好きで オバマ政権の政策が台無し,” “Here’s Why You Might Be an Electric Car Owner a Decade from Now”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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