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若返りのたんぱく質をついに発見か?

2017年03月29日 02時53分更新

文●Michael Reilly

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血液を若返らせる可能性があるタンパク質として「オステオポンチン(OPN)」が単離された。アンチエイジング研究には決定的な手法がなかったが、期待を持たせる研究結果だ。

細胞を若返らせる可能性がある新たなタンパク質が単離された。この物質が、ある種の老化作用をついに確実に防げるのか、今後の検証の始まりでもある。

ニュー・サイエンティスト誌によると、老齢のマウスは「オステオポンチン(OPN)」というタンパク質の濃度が低く、このマウスに幹細胞を注入してもすぐに老化した、と研究者の実験で発見された。逆に老化した幹細胞をオステオポンチンの入ったシャーレに浸したところ、幹細胞は若返ったように見えたという。この研究を手がけた研究チームは現在「老化した血液を再び若返らせる(make old blood young again=トランプ大統領の「Make America Great Again」のもじり)」を掲げて、高齢者の免疫システムを高められる医薬品を開発している。

問題は、簡便な一時調査の結果と臨床的に有効な医薬品の効果は大きく異なり、特に老化対策の分野では違いが顕著なことだ。数年前、科学者や社会全体を騒がせた実験では、年老いたマウスと若いマウスに外科手術を施し、循環系システムを共有できるよう体を結合させたところ、年老いたマウスには、若返りの兆候が数多く見られたというのだ。寿命を伸ばすカギは、若い血液にあるように思われた。

その後も複数の実験が実施されたが、なんと説明すればいいやら、結果はまちまちだ。ある実験では、老化した血液は若いマウスにとって悪影響があると判明した一方、若い血液は年老いたマウスに特に効果がなかったこともわかった。こういう結果があるにせよ、当初の実験結果をもとに生まれたのがシリコンバレー式の治療法だ。スタートアップ企業のアンブロシアに8000ドルを支払えば、2リットル分の若者の血漿がもらえる。アンブロシアの創業者は臨床試験として宣伝しているが、詐欺まがいのビジネスともいわれている。

結局のところ、若返り作用のある若い血液がどんなものかは不明で、若返りの難題の一番重要なカギが血液なのかもわかっていない。ソーク研究所の研究者チームは昨年、マウスの遺伝子を操作して、成熟細胞が若返えると判明している遺伝子のコピーを複数作り、成熟細胞に形質転換を起こし、胚細胞に似たような物質にした。こうした遺伝子の発現を操作することで、研究者はマウスの寿命を通常より30%伸ばすことに成功した。

若返り作用の研究には諸説あるが、だからといってオステオポンチンの効果を発見した研究者が研究を続けるのは間違っていない。我々が信じるように老化が防げることを示す、非常に面白いなんらかの現象が起きているのは明らかだ。オステオポンチンの研究を進める研究者や他の多くの研究者が突き止めようとしている問題は、この何らかの現象とは何かということだ。

(関連記事:New Scientist, The New York Times, “若い血液に若返り効果? 料金は1回8000ドル,” “マウス実験で若い血液にアンチ・エイジング効果?”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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