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アマゾンの実店舗拡大戦略は、ネットの方法の焼き直しだ

2017年03月29日 05時55分更新

文●Jamie Condliffe

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アマゾンは実店舗を拡大する方針を明確にしている。しかし、どうすれば実店舗を拡大できるのか、明確な戦略があるわけではない。ネットと同様、試行錯誤を繰り返し、正解を見つけようとしているのだ。

アマゾンが実店舗の展開にあたって採用した戦術は、オンラインでうまくいった戦術の焼き直しだ。つまり、数多くの戦術を試せば、少なくともどれかはうまくいく、という方法だ。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、ネット小売り大手のアマゾンは、実店舗で続けている試行錯誤を拡大する計画だ。タイムズ紙の情報源によれば、アマゾンが開設を検討中の店舗では、客は拡張現実や実質現実で、家具や電化製品を自宅に置いたときにどう見えるかを確認できるという。

タイムズ紙によると、アマゾンはプライベート・ブランドの家庭用電化製品を販売するアップル式の小売り店も検討中だ。恐らくこの計画の背景には、アマゾンが開発したアレクサを搭載したスマート・スピーカー機器の大成功があるだろう。

アマゾンが検討中の実店舗によって、アマゾンの実店舗(現在扱っているのは食料雑貨品や書籍のみ)の存在感は大きく増すだろう。購入を考えている製品をWebブラウザーで単に眺めるよりも、見て感じる方が好きな人のほうがはるかに多く、実店舗を増やせばアマゾンは実世界の市場も手中に収められる。

アマゾンは既にアマゾン・ゴー(レジで支払わずに済むシアトルにある食料品店)を実証実験中だ。また、今後数週間以内には、自動車に乗ったまま商品を受け取れる食料雑貨品店「アマゾン・フレッシュ・ピックアップ」2店をオープンする計画だ。タイムズ紙によると、アマゾン・ゴーとアマゾン・フレッシュ・ピックアップの新店舗は、近い将来さらに開店する予定だ。

アマゾン・ゴーは、大西洋を超え、英国やインドにまで展開される可能性があるとタイムズ紙は指摘している。インドでの展開はにわかに信じがたいが、アマゾンは中国市場で成功できなかったため、インドでの成功に賭けているのだ。

計画が進む一方で、アマゾンの書籍を扱う実店舗数も増えており、最近はシカゴに5店舗目がオープンしたばかりだ。また、年内に5店以上のオープンが計画されているMIT Technology Reviewがアマゾンの実店舗を初めて訪れた時の経験から見て、アマゾンの実店舗がうまく保証はない。しかしアマゾンが実店舗構想の成功を追求しているのは明らかだ。

ただし、アマゾンが進める実店舗プロジェクトの多くは今後数カ月でつまずいたり終了したりする可能性がある。アマゾンは大々的にプロジェクトを発表し、その後消費者の財布のひもを緩ませられず、頓挫してしまう数々の実績がある。たとえば、ファイアフォンを覚えているだろうか。

しかし、アマゾンが進める計画の意図はどう見ても明らかだ。アマゾンは実店舗がより多くの収益を生む助けになると考えている。そのため、アマゾンは正解を見つけるまで、繰り返しさまざまなことを試し続けるだろう。

(関連記事:New York Times, “日本の小売り関係者がシアトルに行くべきたったひとつの理由,” “シアトルに新規開店したアマゾンの実店舗に潜入してきた,” “アマゾン、レジなしスーパーをシアトルで開店”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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