EVの純粋な凄さを堪能するための
ピュアスポーツという選択
バブル期に日産車などのコンプリートチューニングカーで一時代を築いた「トミーカイラ」。そのブランドを引き継ぎ、当時トミーカイラが独自に開発してイギリスで生産をしていたZZというピュアスポーツカーのコンセプトを活かして、京都大学発祥のベンチャー企業「GLM(旧・グリーンロードモータース)」が2012年10月に国土交通省の型式認定を取得した電気自動車が、今回試乗した「トミーカイラ ZZ」だ。
バスタブ型アルミフレームに前後ダブルウィッシュボーン式サスペンションを搭載というレイアウトは、レーシングカーそのもの。レイアウトコンセプトは初代のZZと同じだが、アルミフレームなどは新規で設計し直したもので、剛性感はさらにアップしているという。そのアルミフレームにFRP製のボディーカウルを被せるというのも初代ZZと同じコンセプトながらデザインは一新され、EVから連想するような未来っぽさと、ピュアスポーツのスパルタンなクラッシックさがマッチする雰囲気となっている。
EVとなったトミーカイラ ZZの大きな見所は、ミッドシップマウントされたインバーターとバッテリーだろう。重量物を重心位置の近くに置くというのはガソリンエンジンのスポーツカー、レーシングカーとまったく同じで、EVとなったトミーカイラ ZZの場合はその重量物はバッテリーとインバーターなのである。
そのインバーターの下にはモーターと、シングルギアのギアボックスが置かれる。電気モーターの場合、モーターを高回転で回すことができれば変速ギアが不要なこと、モーターの回転方向を変えれば後退もできるためにリバースギアもいらない。したがってモーターの回転を駆動輪に伝えるためのギアだけあればいいので、変速機構を持つ必要がない。つまり、ガソリンエンジン車のATのような変速時のトルクの谷がなく、延々と強烈な加速が続いていくのである。
そのモーターは出力225kw、馬力になおすとなんと305馬力! トルクは415Nm! EV化でリチウムイオンバッテリーの分だけ重量が増しているとはいえ、車両重量は850kgしかない。最高速こそリミッターで180km/hに抑えられているが、軽量ハイトルクのために加速力はすさまじく、0-100km/hの加速は3.9秒とポルシェ911 GT3(991型)と同タイムなのである。
また、電気自動車の最大トルクはモーターが動き始めるゼロ回転から発生するため、特に低速トルクの立ち上がりが凄まじく、強烈な加速になるのだ。
レーシングカーのようなアルミフレーム構造と強烈なモーターの動力性能を受け止めるドライバーは、ほぼレーシングカーのようなコクピットに収まることになる。定員2名のコクピットに置かれたシートはレカロのフルバケットシート。そしてブレーキは制動のコントロールがしやすいノンサーボタイプとなる。ノンサーボタイプのブレーキは倍力装置が外されたものなので、踏み始めはとてつもなく重いためとまどってしまう。しかし、慣れると踏み加減でブレーキの効き方がコントロールできるため、レーシングカーなどではノンサーボタイプが主流となっている。
トミーカイラ ZZのブレーキペダルは、ノンサーボタイプのブレーキ特性に合わせて強力な滑り止めが貼り付けてあるのが特徴だ。
メーターパネルはフル液晶。表示内容は速度、電池残量をメインにインバーターやモーター、バッテリーの温度、電圧、電流とかなりシンプル。トランスミッションはスイッチ式で前進、後退、ニュートラル、パーキングの4操作を切り替え式で行なう。
今回お話をうかがったのは製造元のGLMの国松 茂さん。セールスは好調で、33台ずつを3期に渡り、のべ99台を限定受注したところ、ほぼすべて完売したとのこと。昨年の9月に開催されたパリモーターショーでは次のプロジェクトであるEVのスーパーカー、GLM G4を発表した。ベンチャー企業ゆえの自由な発想でEVの未来を牽引していく存在になりそうだ。
トミーカイラ ZZの凄さは
街中でも安全に味わえる!
ピュアEVスポーツカーであるトミーカイラ ZZは、サーキットやワインディングロードでのドライブが最高に楽しいことは想像に難くないが、実は街中でもその楽しさは充分に味わえる。
試乗したのは越谷レイクタウンに新しく完成した、ガレージハウス「Garent越谷レイクタウン」を基点にした10kmほどの市街地コース。信号待ちからのシグナルスタートでは、このサイズのオープンスポーツカーとは思えない加速が充分に味わえた。
加速感を例えるなら、シートに押さえつけられるというなまやさしいものではない。体の前面が圧迫感を覚えるほどの加速力だ。旅客機の離陸でもこんな加速は味わえない。415Nmというトルクをゼロ発進から発生する、と言葉にすれば簡単だが、ゼロ発進からのこのトルクは1000馬力級の大排気量車で初めて可能な数字だ。ましてや850kgという軽量なクルマではありえない数字。これが電気モーターの本来の、いや剥き出しの魅力なのだ。
さすがに雨の日や滑りやすい路面でいきなりそんなトルクを出してしまうと危険なので、インバーターにはトラクションコントロール機能が搭載され、最低限の安全性は確保されている。
ノンサーボのブレーキも、慣れてしまえば普通の乗用車のブレーキよりもコントロールしやすく、微妙なペダルの踏み具合の変化もしっかりと伝えてくれる。さすがに市街地では試さなかったが、サーキットなどでは左足ブレーキもやりやすそうだ。
また、構造体としてのバスタブ型アルミフレームがかなり強固であるために、たわみや歪みを一切感じられず、ハンドルを切ればダイレクトに向きを変えてくれる。その操作感はクイックなどというものではなく、もっと早い。もしクルマが赤かったら間違いなく「3倍早い反応」と見出しをつけてしまいそうな操作感なのだ。
強固なフレームによる剛性感の高さにより、反応が早くてもクルマが暴れることは皆無で、コーナーリングは意外なほどの安定感だった。だからといってオーバースピードな領域でしか楽しめないということはなく、今回味わった感覚はすべて合法な速度内のことである。
大手自動車メーカーが作り出すEVも確かに素晴らしい。しかし、このトミーカイラ ZZは、ベンチャーだからこそ、少量生産だからこそ、純粋なEVの魅力を思う存分引き出したクルマとなった。
800万円という価格は、この魅力を味わう対価としては決して高い金額ではない。すでに新車を手に入れる機会は少なくなってはいるが、その魅力を啓蒙するために試乗会は頻繁に行なっていくとのこと。その機会に巡り会った時は躊躇せずに乗ってほしい。他では味わえない魅力に触れることができるだろう。
クルマと住まうというライフスタイルを提案する
賃貸ガレージハウス「Garent」
今回、トミーカイラ ZZの試乗場所としてご協力いただいたのは、賃貸ガレージハウス「Garent」(ガレント)が新しくオープンさせた「Garent越谷レイクタウン」。
建物は総2階建てで、1階部分がガレージ、2階が居室という構造。タイプは1階が2台用ガレージであれば居室は1DK、1台用であれば1Kとなっている。
ガレージの中には温水の出る流し台や換気扇も装備し、簡単なメンテや短時間でのエンジン始動にも対応。そしてトミーカイラ ZZのようなEVスポーツカーにも使える200Vの電気自動車用コンセントも装備し、次世代車への環境も整っている。
取材日の3月11日は試乗取材の後、このGarent越谷レイクタウンのグランドオープンイベントが行なわれ、来場者はトミーカイラ ZZが試乗できた。
試乗した方々は皆、初めてのEVスポーツカーに大いに感動したという。
また、元レーシングミクサポーターズで日本レースクイーン大賞 2011のグランプリを受賞した、女優・モデルの立花サキさんによるトークショーも開催され、多くの来場者がそのトークに耳を傾けた。
トミーカイラ ZZのような趣味としてのスポーツカーこそ、最適な利便性とセキュリティーを備えたガレージハウスは、これからのカーライフの選択肢として、期待される存在となっている。