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顧客の感情まで読み取る、超精巧なチャットボット

2017年03月23日 06時05分更新

文●Tom Simonite

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人間は、共感を示す相手には思わず本心を打ち明けてしまう。カスタマーサービス用のチャットボットは、ヒトのこの性質を利用して、サービス向上につなげようとしている。

銀行のATMで口座残高を確認すると、口座引き落とし時の残高不足で自動貸し付けされ、高額の手数料を請求されているのに気付いた。顔を引きつらせる様子をカスタマー・サービス担当のチャットボットがじっと見ていれば、銀行のサービスをもっとよくできると、起業家でオークランド大学(ニュージーランド)のマーク・サーガル准教授は考えている。

サーガル准教授は映画『アバター』や『キングコング』等でキャラクターの表情を作り上げるデジタル・アニメーションの手法を高く評価され、アカデミー科学工学賞を2度受賞した。サーガル准教授は現在、オークランド大学でアニメーション・テクノロジーを教えながら、スタートアップ企業ソウル・マシンズ(Soul Machines)の最高経営責任者(CEO)として、カスタマー・サービス担当のチャットボットの表情を豊かにするテクノロジーを開発中だ。

サーガルCEOによると、チャットボットの表情を豊かにすれば利便性と性能が増す。メールで会話するよりも、人と直接会ったほうがコミュニケーションが豊になるのと同じことだ。「複雑なシステムを操作する場合、フェイス・トゥ・フェイスで会話するほうが、ずっと簡単になります」とサーガルCEOはいう。

ソウル・マシンズはすでに、オーストラリア政府向けにアシスタント・アバター「ナディア」を開発した。ナディアの声を担当しているのはオーストラリア出身の女優ケイト・ブランシェットで、人工知能にはIBMのワトソンを使った。ナディアを使うと、障がい者向けの行政サービスについて検索できる。IBMは銀行向けにレイチェルという別のアバターの試作品も開発中だ。

ソウル・マシンズのチャットボットの表情は、人体の解剖モデルや筋肉の付き方、人間の顔の他の組織をモデルに作られている。アバターは、顔の正面にある内蔵カメラで自分に話し掛ける相手の表情を読み取れる。サーガルCEOは、人は、人型のモノに話し掛けるとき、自分の考えを率直に表現したり、表情が豊かになったりする傾向が強いという。ソウル・マシンズのチャットボットはこの性質を利用して、相手がどんなことで怒ったり混乱したりするのかの情報を集める。

話し相手に共感していることを顔の表情で示すために、ソウル・マシンズのアバターは、話し相手の表情と似たような顔の動きで反応するようにもプログラムできる。

声や言葉遣い、顔の表情から人間の感情を検出しようとするテクノロジーを研究中の企業はほかにもある。アマゾンは、音声アシスタント「アレクサ」を改善するために、同様のアイデアを研究中だ。


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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