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GPSナビの使用中、人間の脳は方向感覚をオフにすると判明

2017年03月23日 08時00分更新

文●Jamie Condliffe

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単独で読むと何の意味があるのかわからない研究だが、たとえば自動運転から手動運転に切り替えても、人間は自動車がどこを走っているのか、まったくわからないことになる。

London's streets can be tough to navigate, day or night.
ロンドンの道路は、朝晩に関係なく、どこを通ればいいのかわからなくなる

スマホや車載GPSシステムのおかげで、世界中どこでも迷子にならなくなった。しかし、私たちがGPSシステムに頼るとき、自分自身で道を探すときに使われる脳の部位は活動していないようなのだ。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究者は、英国の首都ロンドンのソーホー地区を歩くときの脳の活動をfMRIで記録する実験をした。被験者は、ある時は自分で道順を見つけ、またある時は車載GPSシステムやスマホ同様の実験用画面で、曲がり角ごとの経路が指示された。

実験結果によると、自分自身で道を探しながら歩いている最中に新しい道に入ると、海馬(方向感覚に関係があるとされる脳の部位)と前頭前野(計画を立てる時に活性化する脳の部位)の神経活動が急増するとわかった。また、岐路の選択肢が多いほど神経活動量は顕著だった。一方、この種の脳の活動は、曲がり角ごとに経路を指示される場合にはなかった。

この研究を率いたUCLのヒューゴ・スピアーズ研究員は「自分で道を探す時に使う脳の部位は、テクノロジーで進路を指示される時、道路の状況に反応しなくなるのです。つまり、私たちの脳は、周りの道路に関する関心のスイッチをを切ってしまうのです」とガーディアン紙で述べた。

興味深いことに、海馬の活動が活発な最中、どこをどう歩いてきたのかを覚えようとしていることも研究でわかった。自動車やスマホのナビゲーション・システムが誤作動した時(もう滅多に起きない問題だが)、私たちが状況にうまく対処できないのは当然なのだ。

では、人間の方向感覚は、普段道順を探す能力にどんな影響があるのだろうか? もちろん、ひとつの研究で絶対的な結論は出せない。しかしスピアーズ研究員はサイエンティフィック・アメリカン誌に対して、次のように注意を促している。「もし脳を筋肉のようなものだと考えると、ロンドンの市街地図を勉強するのは体を鍛えるのと一緒です。今回の研究結果からいえるのは、曲がり角ごとに指示されているとき、本来なら活動しているはずの脳の部分を鍛えていないのです」

(関連記事:Nature Communications, Guardian, Scientific American, “You Are the Real Winner Of the Mobile Maps Wars”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

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