このページの本文へ

二酸化炭素排出量の削減と経済成長は両立すると米中が証明

2017年03月20日 05時45分更新

文●Jamie Condliffe

  • この記事をはてなブックマークに追加
本文印刷

「二酸化炭素排出量の抑制は、経済成長を妨げる」とは、産業界の長年の言い分だった。しかし、3年連続で二酸化炭素排出量が増加せず、米中で経済が成長したことは、クリーンエネルギーへの転換は経済成長を妨げないことの証明といえそうだ。

「化石燃料の使用量を削減しても、経済成長は可能だ」 さあ、繰り返し声に出してみよう。

国際エネルギー機関(IEA)が発表した新しい統計資料によれば、二酸化炭素排出量は3年連続で増加しなかった。エネルギー産業による2016年の排出量の合計は全世界で321億トンであり、2014年、2015年と同じだった。一方、世界経済は3.1%成長し、化石燃料への依存を減らしながら社会は繁栄できることを示す「分離」の傾向が続いている。

化石燃料と二酸化炭素排出量の削減がどちらもうまくいった最大の国はアメリカだ。二酸化炭素排出量を3%減らした一方、経済は1.6%成長した。再生可能エネルギー(特に太陽光)が米国で2016年ブームだったのが一因だ。他の国でも、中国の二酸化炭素排出量は1%減少し、一方で経済は6.7%拡大した。こちらも、太陽光の利用の増加が大きな要因を占めている

米中両国が二酸化炭素排出量を削減したこと、ヨーロッパの二酸化炭素排出量に変動がなかったことで、世界の他の国による排出量増加を相殺するのに十分な余裕が生まれ、世界の二酸化炭素排出量は全体で増加せずに済んだ。したがって、本当に心配しなければならないのは、インドのような発展途上国の経済が急成長し、入手しやすい化石燃料を使い始めた場合のほうだ。

人類にとって、二酸化炭素排出量がピークに達したのは希望だが、化石燃料への依存から脱却する適切な投資と誘導がない限り、新興経済国が速やかにクリーン・エネルギーを採用することはないだろう。国連による緑の気候基金等の構想(貧しい国が気候変動に備えられるように、豊かな国が支援するために設立された)は問題解決に役立つかもしれない。だが、トランプ政権が緑の気候基金へのアメリの拠出を停止しようとしていることを考えると、国際的枠組みでどこまで新興国の排出量を抑えられるかはわからない。

とはいえ今回の統計資料は、世界の二大エネルギー消費国と二酸化炭素排出国で、経済成長と排出量削減が両立できることを示している。つまり、世界中の他の国にとって、少なくとも希望の光ではあるのだ。

(関連記事:“Solar Installations Soared in the U.S. in 2016,” “トランプ政権、初の予算提案で気候変動対策をぶち壊し,” “Have Global CO2 Emissions Peaked?”)


転載元(MIT Technology Review)の記事へ

Web Professionalトップへ

WebProfessional 新着記事