119のしかけをめくってわかる『なるほどわかったコンピューターとプログラミング』レビュー
子ども向けプログラミング本で苦手意識をなくす! 本の指示に従ってScratchでプログラムを作ってみた!
2017年03月03日 09時00分更新
勉強しなさい!と言われて勉強する子どもはほとんどいない。強制されるより、どうせなら楽しく勉強したい。プログラミングもそうだ。一度苦手意識を持ってしまうと、好きになるのはなかなか難しい。
2020年の小学校でのプログラミング必修化に向けて、今、子ども向けプログラミング教材が注目されている。先日ソニー・グローバルエデュケーションから発売された「KOOV(クーブ)」をはじめとしたロボットや、組み立てブロックなどの教材は、子どもにとってもハードルが低いことで人気がある。
そして、子ども向けのプログラミング本も、数多く刊行されるようになった。どの本も、プログラミングを分かりやすく学んでもらうためにいろいろな工夫をしているが、今回紹介する『なるほどわかったコンピューターとプログラミング』は、そのなかでも特に楽しい本だ。
仕込まれたしかけはなんと119!
本書は、コンピューターの仕組みからプログラミングの基本までの充実した内容を、なんとたったの16ページに凝縮している。けれども、たったの16ページしかないのに、図鑑のようなずっしりとした厚みがある。
なぜ16ページしかないのにこんなに分厚い(17mm)のかというと、本書にはあらゆるページに、めくって読むしかけが仕込まれているからだ。たとえば、パソコンのイラストの一部がめくれるようになっていて、めくるとパソコンの中身をのぞけるようになっている。いわゆる「しかけ絵本」の一種だ。飛び出す絵本のような大胆なしかけではないが、ち密に作り込んであって、著者の情熱が伝わってくる。
そういった工夫によって、わずか16ページの中にたくさんの内容が盛り込まれている。本書は説明のための文字が多いが、このめくるしかけによって、子どもでも飽きないようになっている。しかけをめくっていると、読むこと自体が楽しくなってくる。
また、子ども向けの本にも関わらず、実際に使われるような単語や名前を解説しているところも、こだわりを感じる部分だ。たとえば、二進数の説明にまるまる1ページ割いているのもおもしろい。コンピューターを学ぶのにコンピューターを避けるようなプログラミング本とは異なり、とても具体的で実践的な内容だ。子ども向けの本だが、大人でも十分勉強になる内容となっている。
さらに、この本でのプログラミングの勉強は、本の中で終わるのではない。プログラムについてひととおり説明したあと、実際のプログラミングは「Scratch(スクラッチ)」で始めるように勧めている。具体的なScratchでのプログラムの組み方も説明されている。後半にはリストや変数などを説明した「いいプログラムを作るには」というページがあり、Scratchでプログラミングを勉強してから本書を読むと、さらに理解が深まるだろう。
実際に本に従ってプログラムを書いてみた!
はたして本当に子どもがこの本に従ってプログラムを書けるのだろうか。本に書かれている通りに、プログラミングに挑戦してみよう。
Scratchは、ウェブサイトにアクセスすれば、登録しなくてもブラウザで簡単にはじめられる。指示が書かれたブロック状のスクリプトを並べて、プログラムを作っていく。Scratchにはネコ(「スクラッチキャット」という名前がつけられている)の絵があらかじめ用意されていて、本で1つめのプログラムとして紹介されているのは、ネコの絵を動かすプログラム。Scratchでは少しずつ変化をつけた絵を使うことができ、それをコスチュームと呼ぶ。ここでのコスチュームは、右足を伸ばした絵と右足を曲げた絵の2つ。
まずは、指示通りに組んでみる。といっても、ブロックを並べるだけなので簡単。
旗の絵をクリックして実行すると、右足を伸ばしたネコの絵がマウスのポインターにずっとくっついてくるプログラムになった。「ずっと」という項目があるのでいつまでもネコがついてくる。ちょっとシュールだ。1つめのプログラムはこれで完成。
続いて「次のコスチュームにする」というブロックを間に入れてみよう、という指示。従ってみる。
すると、ネコの2つのコスチュームが何度も切り替わり、まるで歩いてついてきているようになった。かなり足の回転が早い。
ブロックを1つ変えるだけで変化が見えておもしろい。しかも、初心者にありがちな小さなミスも起こりにくいのでストレスもない。プログラミングをやったことのない子どもでも、これならできそうだ。
初心者なら年齢を問わずおすすめ!
この本を読んで、すぐにプログラミングができるようになる! というわけではないが、プログラミングを始めるいいきっかけになってくれるだろう。
『なるほどわかったコンピューターとプログラミング』は、コンピューターの基本から実際のコンピューターでのプログラミングまで、工夫を凝らして楽しく学べる本になっている。じつは、最近の子ども向けプログラミング本といえば、いきなりプログラムを書き始めるものも多い。そんな中できちんと基礎の解説をして、しかもくどくなっていない。
この本で楽しく学べば、苦手意識を持たずにプログラミングを学び始めることができそうだ。昔プログラミングを勉強して、一度苦手意識を持ってしまった人も、この子ども向けプログラミング本でもう一度勉強し直してみるのもいいかもしれない。
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なるほどわかった コンピューターとプログラミングロージー・ディキンズ(著)ひさかたチャイルド
作ることで学ぶ ―Makerを育てる新しい教育のメソッド (Make:Japan Books)Sylvia Libow Martinez、Gary Stager(著)オライリージャパン
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