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古くて新しい「サポセン代行」のスタートアップ・Influxが世界的に成功できた理由

2017年02月14日 23時00分更新

文●Aleczander Gamboa

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24時間365日体制の手厚いカスタマーサポートを従量課金で代行するスタートアップ企業「Influx」。一見すると地味な事業でありながら、世界的な成功を収めつつある同社の秘密とは?

カスタマーサポートの世界で生き残っていくためには、ずぶとさが求められます。カスタマーは、電話、Eメール、SNSの投稿、チャットなどいろいろなツールを使ってサポートを求めてきます。

これだけのツールからのサポート要求にすべて対応するのは大変ですが、技術はさらに進歩し続けているため、カスタマーサポートのマネージャーはタイムリーかつ効率的に問い合わせに回答していくプレッシャーを受け続けることになります。

問い合わせは数がとても多く、すぐに対応者は疲れてしまいます。また、対応者も人間ですから、1日24時間休まず、1週間通して働き、可能な限り問い合わせに答えることは不可能です。

今回紹介するスタートアップ企業のInfluxは、クライアント企業の規模、業種を問わず1カ月に数万件の問い合わせに対応するためのサービスを提供しています。

成長が見込めるカスタマーサポート業界

Influx Co-Founders: Leni Mayo (Left) and Michael de Wildt (Right). Credit: Influx

Influx共同創始者の Leni Mayo (左)、Michael de Wildt (右)(出典: Influx)

InfluxはLeni MayoとMichael de Wildtが共同で創業しました。2人はサイドビジネスをしていましたが、そこでカスタマーから受ける質問へのサポートを処理するにあたって、同じような問題を抱えていました。もともとはサイドプロジェクトとして始めた友人向けのカスタマーチケット対応サービスが、多くのスタートアップ企業や起業家が共感できるシナリオによって本格的なビジネスへと発展しました。

最高マーケティング責任者(CMO)のAlex Holmesは「提供するビジネスの価値として、臨機応変とオンデマンドという2点があります。クライアントは、私たちのアウトプットに対して支払うのみです。つまり、私たちがカスタマーサポートをした場合のみ支払うわけです」と語ります。

Influxは、企業がカスタマーと長い関係を築くための支援として、昼夜関係なく世界中のカスタマーに対してサポートを提供することでカスタマーサポートのビジネスを変えているのです。3年前に2人のチームで開始し、いまではオーストラリアをベースとし世界中に80人以上のスタッフを抱えるまで成長しました。

Alex Holmesは今年のはじめにInfluxのチームに入りましが、その前に勤めていたデジタルマーケットプレイスのEnvatoでカスタマーサポート業界へ興味を持つようになりました。

「サポートというのは、技術系のビジネスでは軽く見られることが多いのです。つまり、まだカスタマーサポートの世界にはやるべきことがたくさん残っているということなのです。サポートマネージャーとして積極的にいくか、消極的にいくかということですが、企業が急激に成長する場合、サポートチームはそのペースに追いつけなくなります」とAlex Holmesは言います。

「定期的に追いつくためにスピードアップする必要があり、チケットに対応するだけでいっぱいいっぱいになります。そのため、将来的にもっと効率的にチケットに対応するための新しいシステムを構築したり、カスタマー対応を改善したり、カスタマーの満足度をあげるということがおざなりになるのです。この問題を、Influxは解決しようとしているのです」

Influx's Chief Marketing Officer, Alex Holmes. Credit: Influx

最高マーケティング責任者(CMO)のAlex Holmes(出典:Influx)

まさに、多くの企業はカスタマーサポートを後回しにしてきたと言えます。Deloitteの研究によると、約54%の企業が、カスタマーサポートを第三者サービスに委託していることが明らかになりました。新しいビジネスを開拓しながらでは、同時にカスタマーから寄せられるすべての問い合わせに対応する時間が十分に取れないことが理由です。

Influxは重要な2つの分野をカバーすることで、カスタマーチケットの取り込みを軽減しています。1つ目のサポートとして、クライアントのCRMシステムと統合してシームレスに動作するInflux Assistantツールを開発しました。このツールはカスタマーチケットを自動でダッシュボードに取り込むことで一直線のワークフローを実現し、結果的にスタッフの効率を向上させるものです。さらにInfluxはインドネシア、ケニヤ、ジャマイカなど世界中にベースを持ち、24時間365日体制のサポートを可能にしています。

さらに、品質保証監査を無料提供していることも特筆すべき点です。これにより、チームはカスタマーフィードバックを生かせ、カスタマーへの返信を毎回改善していくことが可能となるのです。

人が対応してこそのサポート

企業によってはカスタマーからの問い合わせをすべてロボットを使って対応しようと試みてきました。Influxはカスタマー対応する際にサポートマネージャーを支援するための追加の対策としてテクノロジーを使用する方法を採用し、テクノロジーにカスタマー対応をさせる(これは、カスタマーが不満に思う)ことよりも、直接のやり取りを取り戻すことを追求しています。

「人間というのはそもそも、人間と話したいのです。技術サポートの種類によっては早急な回答が必要な場合もありますが、基本的にトラブルシューティングは人にして欲しいと思っていて、会話で解決することを望んでいるのです。そうすることで、その会社は自分のことを大切に扱ってくれているとカスタマーは感じるのです」とHolmes氏は続けます。

handles customer conversations and actions, responding to tens of thousands of customer queries every month. Credit: Influx

Influxはカスタマーとのやり取りや対応について、1カ月に数万件の問い合わせに対応している(出典:Influx)

ブランド企業によるボット・カスタマーサポート導入はそれほど広がらないと思います。少なくとも私たちのクライアントになるような会社ではあり得ません。テクノロジーが役立つのは、リアルタイムで情報を提供する手助けをし、サポートする人の効率を上げる場面です。テクノロジーにより情報を迅速に収集できるようになると、カスタマーサポートがチケットに回答する効率は2~3倍になると考えています」

コアとなるミッションとして、Influxはカスタマーサポート業務に関わるすべての人が最高の品質でチケットを処理するという大きなゴールを掲げています。ゴールを達成することで、カスタマーからの問い合わせを常に心配することなく、カスタマーサポートのメンバーが人間らしい生活を送れるようになるのです。

「私たちが抱えるスタートアップのクライアント企業は、時間に余裕ができるため、事業拡大に向けてリソースを集中できます。私たちが溝を埋めることで、柔軟な対応が可能になります」

「品質第一」のアプローチが徹底されていることが実感できます。このアプローチにより、Influxは技術業界のニューフェイスであるにも関わらず、すでに100社あまりの企業(過去および現在合わせて)をクライアントにしているのです。

起業家としてInfluxを成功に導き、成長を続けているHormes氏は自らの経験から、自分自身をすばらしいチームの中に置き、問題は起きるものだと想定すること、そして1番大切なのはとにかくやることだと信じています。

「知識は仕事の中で学ぶものが一番なのですが、結局のところ、自分の考えに対して情熱を持つことなんです。理想としては、成功する企業は2年ほどかかるもので、その2年間は試練の連続となります」と言います。

「問題は、いろいろな角度から発生します。質の悪いクライアント、クライアントではないが質の悪い人たち、質の悪いスタッフ、質の悪い投資家などです。そして、それらの問題を乗り超えていくためには、自分が成功したいという強い情熱が大切です。それらすべてを乗り越えられたら、すばらしいことをしている、という場所にたどり着けます」

Alexから新しく独立する起業家たちへのアドバイス

「新しいことに全力で取り組み、同じ気持ちで挑んでいける人たちと一緒に働くことです」

Influxの詳細については、ここを参照してください。

Influxチーム(出典: Influx)

Startup Spotlightでは、Web業界に旋風を巻き起こし成功を収めた起業家およびスタートアップ企業を取り上げます。

(原文:Elastic and On Demand – Why Influx Is the Solution for Customer Support

[翻訳:岩男基/編集:Livit

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