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ポタフェス 2016 第7回

最先端の試作機と新製品から垣間見る2017年の音

2016年末のポタフェスで感じた、ポータブルオーディオの現在位置

2016年12月29日 10時00分更新

文● ゴン川野 編集●ASCII

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個性的な音で勝負する国産勢の参考展示ヘッドフォン

 オンキヨー&パイオニアが製品化を目指しているのが“セルロースナノファイバー”を振動板に使ったヘッドフォンである。

オンキヨーの桐ヘッドフォンは革製のヘッドバンドを装着

 この素材は従来の繊維より細くて分子が整って配列しているため、軽量で高強度、熱による変形に強い、広い面積が作りやすいなどの特徴がある。ONKYOはCNF(ピュアセルロースナノファイバー)と名付けた素材を使ってスピーカーの振動板を作ることに成功。鉄の1/5の質量で5倍の強度を実現したという。これをヘッドフォンの振動板にも使おうという試みだ。

 直径40mmの振動板はワイドレンジで50kHzまでほぼフラットな特性を持つ。これを桐製のハウジング収めたのが、今回参考展示された桐ヘッドフォンである。

 今まで何度か登場したことのある試作機で、その音は毎回変化している。今回はデザインも変更され、最終に近いものになったそうだ。女性ボーカルを魅力的に聴かせてくれるヘッドフォンで、その響きが美しい。軽い振動板が繊細なニュアンスを再現、桐のハウジングが密閉式にもかかわらず、開放的な鳴りを実現している。今回はかなり鳴りを抑えた感じに聞こえたが、これが音楽愛好家向けのチューニングで、オーディオファイル向きのチューニングモデルは、さらに響きを抑えたフラットな音だった。価格は20万円前後を予定しているという。

パイオニアの試作機はマグネシウム合金ハウジングを採用

 一方、パイオニアブランドとしては同社のフラッグシップモデル「SE-MASTER1」の約半額(おそらく10万円台)での販売を目指す試作機を展示。

 ドライバーは直径50mmのセルロースナノファイバーを採用。デザインはシルバーとブラックを基調にしたクールなもの。リケーブル対応で2.5mm4極のバランス接続ケーブルを付属させる予定。ハウジングはマグネシウム合金で密閉式である。その音は解像度を重視した爽やかなもので、高域から低域までハイスピードで音場感に優れるタイプ。まさにハイレゾ全盛期の日本市場にふさわしい音とも言える。発売時期は未定だが、2017年の早い時期に登場するかもしれない。どちらのモデルも個性的な音で、優等生で面白みに欠けると思われてきた日本メーカーのイメージを変える製品になるに違いない。

音決めに時間を惜しまないDAP、audio-oups『opus#2』

 オーディオ評論家を含め、多くのオーディオファイル(愛好家)がハイエンドモデルとして一目置いているDAP(デジタルオーディオプレーヤー)がAstell&Kernの「AK380」である。実勢価格約35万円という価格もさることながら、圧倒的な高性能、高機能、こだわりのデザイン、直径2.5mmのバランス接続端子などでハイレゾプレーヤーを牽引してきた。

audio-oups『opus#2』と付属革製ケース

 数多くのメーカーがAKシリーズを目指してDAPを製品化してきている。audio-oups「opus#2」もその中の1台である。まず、そのデザインからして影響を受けていることが分かる。本体右側にあるダイヤル式の音量調整機能、左側のボタン配置、付属ケースまでAKの影が感じられる。

 DACには定番とも言えるESS Sabre32 ES9018K2Mを2基搭載。PCMでは384kHz/32bit、DSDも専用デコーダを使いDSD5.6MHz(DSD128)までネイティブ再生に対応する。2.5mm4極のバランス出力対応で、ラインアウトと光デジタル出力を兼ねた3.5mmのアンバランス端子も搭載する。

 航空機グレードのアルミ合金採用、Wi-FiとBluetooth対応、充電時間約4時間、連続再生約9.5時間。内蔵メモリー128GB、200GBに対応するmicroSDカードスロットなど搭載する。OSはAndroid 5.1.1。サイズは幅76×奥行き18.3×高さ114mm、252gだ。

 高域は解像度重視で中低域に厚みがあってピラミッドバランスの音だ。『AK380』が広大な音場空間を描き出すのに対して、実在感のあるボーカルや楽器の音を聴かせてくれる。レコーディングスタジオやマスタリングスタジオ、モニターユーザーの評価などを踏まえ、音決めに数ヵ月を費やしたというだけあって、完成度の高い音だ。税込みで19万8000円という価格も、その内容からハイコスパに思われる。

王者、Astell&Kern「AK380SS」はズシリと重いステンレス製

 Astell&Kernは時々、ボディの素材だけが異なる限定モデルを発売する。今回はフラッグシップモデル「AK380」をステンレス合金化して、専用アンプとケースをセットにした「AK380SS」を参考展示した。

アルミより比重が増すステンレス製の「AK380SS」

 発売時期・価格ともに未定だが、私の予測ではセット価格75万円ぐらいではなかろうか。会場では外観展示のみだったが、特別に試聴できるモデルを聴かせてもらうと確かに音が違う。S/N感が向上して、沈み込んでいた音が浮かび上がって来るかのように情報量が増えているではないか。その音はAK380のはしゃぎようが子供っぽく思えるほど、物静かでフラットだ。よりHi-Fi指向を目指すなら、ステンレス合金ケースもいいかなと思えるが、実際に持ってみるとかなり重さが増している。さらにアンプを合体させるとポータブルとは言えないぐらい重い。

 これが価格に見合った重さなのだろうか。金属係数の高いLEICAのカメラを持ったような気分になった。

専用アンプ『AMP SS』とバンナイズ製ソフトケースのセット

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