同研究により、人が発症する生活習慣病の克服などに結びつく可能性も
東京大学、カブトムシやクワガタなど「武器」の大きさが変化する仕組みを解明
2016年12月13日 17時44分更新
東京大学大学院総合文化研究科の小澤高嶺氏、岡田泰和氏、太田邦史氏らは12月13日、「カブトムシなどの昆虫の武器の大きさが環境に応じて変化するしくみ」を発表した。
カブトムシやクワガタなどの昆虫の武器は、生育時の栄養によって大きさが顕著に変わることが知られている。今回の発表でその個体差が生まれるしくみを明らかにした。
昆虫などの動物では、同じDNAでも幼虫期の栄養で女王蜂か働き蜂に変化するミツバチなどのように、環境に応じてさまざまな形に変化する。このような個体の差を生み出すしくみの一つとして、同一ゲノム情報を持つ細胞に「エピゲノム」という機構がさまざまな個性を与えるという。
同研究では武器をもつ甲虫「オオツノコクヌストモドキ」をモデルとして、幼虫時の栄養によって大きく影響を受ける大アゴのサイズが、エピゲノムに関わる因子によってどのように制御されているかを調べた。
オオツノコクヌストモドキのエピゲノム関連遺伝子を解析することで、どの因子が重要な働きをしているかを明らかにした。その結果、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の働きにより、武器サイズが幼虫期の栄養状態に応じて変化しやすくなることと、HDACの働きに影響を与えると大アゴとハネの大きさが逆方向に変化することも明らかになった。
同研究により生物がエピゲノムを介して環境に適応し多様な姿をとる仕組みを明らかにすることで、カブトムシなどと同様の機構で人が発症する生活習慣病の克服などに結びつく可能性があるという。