このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

業務を変えるkintoneユーザー事例 第4回

現場に寄りそう薬剤師間の「知見」連携を支えるクラウド、新人教育や院外連携にも

日々更新される医薬品情報をkintoneで共有、高知医療センター

2016年11月30日 08時00分更新

文● 重森大 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
edge

 新しい治療法に新しい医療機器、そして新しい医薬品――。医療の世界では、従来より効果的なものが次々に生み出される。そのため、医師や看護師、薬剤師は、現場に立ちながら最新情報を学び続けている。

 その中でも薬剤師は裏方的な存在だが、医師や看護師が医薬品を適切に使用できるよう支える重要な役割を担う。では、彼ら薬剤師を支えるのは誰なのか。そこで活用されるITはどうあるべきなのか。今回は、高知県・高知市病院企業団立高知医療センター(以下、高知医療センター)薬剤局 医薬品情報科の段松 雅弘氏に話をうかがった。

高知県・高知市企業団立高知医療センター 薬剤局 医薬品情報科 段松 雅弘氏

医薬品を正しく効果的に活用するため、薬剤師間の情報共有が課題に

 次から次へと生まれる新薬について、医師や看護師がその効用、正しい使用法を身につけている時間はない。それが医療の現場だ。しかし医薬品の使用なしに医療は成り立たない。そこで医師や看護師が頼りにしているのが、薬剤師の持つ知見だ。薬剤の適正な使い方だけではなく、医薬品につきものの副作用にも精通している。

 高知医療センターでは、薬剤師が持つ情報を身近に活用し、医師や看護師が適切な投薬をできるよう、病棟の各フロアに薬剤師を配置している。同じフロアにいることで薬剤師からも患者の状態がわかりやすくなり、よりよい処方の提案や、考えられる副作用について医師や看護師にアドバイスしやすくなる。チームとしての一体感も生まれ、患者に対して質の高い医療サービスを提供することに役立つ配置だ。

高知医療センターでは「医療の主人公は患者さん」という理念を掲げている(画面はWebサイト)

 しかし問題がないわけではなかった。各フロアのスタッフがチームとして一体感をもって治療に当たれるようになった反面、薬剤師同士のつながりや一体感が薄れ、新しい情報の共有も難しくなっていた。DI(Drug Information、医薬情報)室には医薬品に関する資料が網羅されているが、その膨大な資料を全フロアに同じように配置するのは、コスト面でも手間の面でも現実的ではない。しかも資料は日々アップデートされるのだ。

次々に更新される医薬品関連情報を院内LANで共有、しかし課題も

 DI室で医薬品情報の管理に当たる段松氏は、従来の取り組みを次のように説明する。

 「当初は、Excelを使って一覧表を作ったりしていました。DI室のPCで作成した資料を院内LANで共有したり、鮮度が求められる情報については薬剤師以外もチェックしているイントラネットにリンクを貼って紹介したりもしていました。こうすることで重篤度、緊急度の高い情報を院内にスピーディに広められるようになりました」(段松氏)

段松氏は、当初は手作業で医薬品情報を発信していたと振り返る

 緊急度の高い情報がある場合には、電子カルテ情報と照らし合わせて、関連する患者のリストを手作業で作って配布した。DI室から積極的に情報を発信することで、各フロアに散った薬剤師たちが最新の情報に触れられる状況を作り上げたのだ。

 「院内に新しい情報を届けることには成功しましたが、課題も多く残っていました。検索性の悪さもそのひとつでした」(段松氏)

 医薬品の情報は、一カ所にまとまっているわけではなかった。基礎的な情報は、開発した医薬品会社のWebサイトに、これまでに確認されている副作用やその症例については医薬品情報のポータルサイトに、緊急度の高い情報は国が発信していたりした。これらをとりまとめてDI室から発信できるようにはなったが、各フロアの薬剤師からは「求める情報にたどり着くのが難しい」という声が上がった。どこで、どのようなキーワードで検索すれば自分が求める情報にたどり着けるのか、わかりにくかったのだ。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事