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JAWS-UG中国・四国勉強会レポート 第2回

四国クラウドお遍路の基調講演はど直球の地方創生話

徳島で勝負するサイファー・テック吉田さんが語る地方活性化

2016年11月07日 07時00分更新

文● 青木由佳(JAWS-UG広報)

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東京では満たされなかった何かを、地方で見つけることができた

 吉田さんは東京では何かが満たされなかった、と語る。人もモノも街も大きくてたくさんあるのだが、満たされないそれが何なのか、答えが吉田さんの中で見えてきた。それは、「地域の方は社会の中で無償の”役割"を果たしながら生きている」というものだった。地域社会の中で必要とされ、良い意味で忙しい毎日。社会の中で役割がある人生を生きることができて、充足感に満たされている。「地方の力・地域の力をもっと活用すべき」と熱弁する。

 でも地方にはチャンスないのでは?という声に対しては、少子高齢化や課題最先端の場所だからこそのチャンスがあるはずだと声を強くする。その言葉を証明するように、「あわえ」を設立。あわえは路地という意味で、オフィスは明治式の銭湯をリノベーションして作り上げた。「地域活性化の処方薬を作り、ジェネリック薬にして全国・世界に届けること」を事業としている。

 徳島でさまざまな取り組みに奔走する吉田さんだが、実際美波町の企業誘致の現状はどうなのだろうか。2012年から14社が進出しており、順調に誘致ができているようだ。そこで、仕事はあれど若者がいないという現状に対して、被雇用者の誘致、育成に今も取り組んでいる。地方で活躍できる未来の戦力を育成すべく、ハッカソンやインターンの企画を美波で実施するなど、実践的な試みだ。

 そんな日々の中で、地方に来たい若者は意外といるのではないか、という吉田さんの考察は確信へと変わっていく。なんと2014年、美波町の社会動態人口が増加したのである。転入と転出の差分データを見てみると、東京以外は転出の方が多いか横ばいの地域がほとんどなのが現状である。そんな中、社会動態人口が増えたという実績は吉田さんの自信になった。

地方活性化の処方箋はこれからも生まれ続ける

 より一層の盛り上げをと、歴史・文化を共有するフォトストレージサービス「goen」をリリースした。四季折々の魅力をタブレットに掲載し、動画・画像で伝える。手話の動画など、いろんな人に観光案内できる。まさにデジタルの出番だ。過疎地の魅力をビジネスの場にしていきたい、と意気込む。最近はIoTに着目しており、人の救出や搜索にドローンを利用するトライアルにも取り組んでいる。

フォトストレージサービス「goen」 http://goen.photo/

 また、地域そのものにこだわらない取り組みにも積極的だ。「デュアルスクールの実証」として、2地域居住の促進をおこなっている。一家で地方に移住した場合、当然住まいが変わるので子どもは転校せざるを得ない。東京の学校に行きたいと思っても、平日に行くことは当然難しい。しかし、両方の学校が受け入れてくれれば解決する、と考え、徳島県で取り組みを行なっている。

「地方と都市を結ぶデュアルスクール」モデル化事業(徳島県ホームページ)

 そのシーンごとに必要となるテクノロジーを小さな会社でも提供できることを実証していく吉田さん。これは東京ではなかなか難しいことでもある。企業の数や本社数も多く、人も多い東京でチャンスは当然ながら多くある。しかし、そのチャンスに触れることができる確率はどのくらいだろうか。競争も激しい。「日本の最先端が過疎地にある」と断言する吉田さんの言葉には力がみなぎっていた。

 AWSのユーザー会主催の勉強会で、ここまで地方での取り組みが細かくまた熱く語られるとは、正直筆者自身思ってもみなかった。また筆者は広島県出身で鳥取県在住歴が長く、現在は東京に住んでいることから地方ならではの課題や取り組みについては着目していた。クラウドの普及の仕方や雇用問題についても、それぞれの地域で課題はそれぞれ異なるだろう。それに真正面から取り組み、また成果を出している吉田さんには尊敬の念を抱く。

 東京に仕事を求めて地方から出てくる方を多く見てきた。東京に来たくて来ているのであればよいが、仕事を理由に仕方なく、という人もいることだろう。その人が在りたい場所で輝くことがITで実現できるなら、クラウドがその一端を担うのであれば、今後も徳島県から、そして四国からたくさんの「地域活性化の処方薬」が出てきそうだ。

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