四国クラウドお遍路の基調講演はど直球の地方創生話
徳島で勝負するサイファー・テック吉田さんが語る地方活性化
2016年11月07日 07時00分更新
こんにちは、JAWS-UG広報の青木です。一昨年、昨年に続き、2016年も開催された「クラウドお遍路」。今回は2トラックの構成で、セッション選びに迷ってしまうほどでした。ということはそれだけ充実した内容であったということです。今回は基調講演の様子をレポートします。
JAWS-UG四国のメンバーが選んだTシャツの色は「緑」
10月1日、雨上がりの香川に、AWS愛を持つエンジニアが集まった。会場は、e-とぴあ・かがわ。「子どもから大人まですべての方に情報通信技術(ICT)をご活用いただける参加体験型施設」というコンセプトで設立されたこの場所で、JAWS-UG四国の集いが行なわれた。
四国クラウドお遍路の企画・運営は、JAWS-UG四国の4人のメンバーが担当した。着用しているTシャツは運営メンバーに配られた。Tシャツのロゴを見ると、香川らしくうどん、そしてまわりにはオリーブの葉が描かれている。日本でオリーブ栽培発祥の地と言われているのは香川県小豆島。緑色は実行委員の野口さんが決めたそう。明るい緑はあいにくの雨模様だったこの日を鮮やかに彩った。
運営メンバーはそれぞれ別の県に住んでいるため、リモートでやりとりをしながら企画を練っていった。チャットやオンラインでの通話が普及した今、リモートで勉強会やイベントの企画を行っていくことも珍しくない。まさにクラウドの出番、と言えるだろう。
クラウドお遍路の基調講演は四国つながり!徳島で今起きていること
基調講演は、サイファー・テック代表取締役の吉田基晴さん。サイファー・テックはセキュリティベンダーで、2013年に本店を東京から徳島に移転した。また、吉田さんは「株式会社あわえ」の代表でもあり、あわえでは地域活性化に関する各種事業を手がけている。
徳島県から本イベントに駆けつけた吉田さんは、「徳島の日本一」を早速PRした。すだち出荷量、ハモ出荷額、女性経営者率日本一、LED生産、仕送り金額、限界集落率、そして、光ファイバー網普及率を挙げた。光ファイバー網の普及で、東京の10倍通信速度が速いとも言われる徳島で、吉田さんは「半東京、半地方」ライフを実践している。自身の会社で取り組み、またその経験を活かして地域に貢献している。
サイファー・テックは2003年2月、東京で設立された。経営者として、東京で採用に苦戦したと語る吉田さんは「東京には若者が多いはずなのに、人材紹介や募集広告、ヘッドハンティングなどいろいろと使ってもだめだった」と嘆く。
2016年のデータでも有効求人倍率は上昇傾向、まして技術職であるITエンジニア職は倍率もより高くなる。そんな中で東京と地方で若者を奪い合っている日本の現状に、吉田さんは警鐘を鳴らす。「そもそも(人口が)減ってる中で奪い合っても仕方ない。複数の場所で生産消費する人をどう増やしていくか、そのモデルになりたい」と語る。UターンやIターンという言葉が出てきて久しいが、確かに人材不足を地方から東京へ、東京から地方へ、という形で奪い合い構造が存在していることは確かだろう。
そこで、発想の転換である。「日本一の都会でダメなら”過疎地"で勝負しよう!」と吉田さんは一念発起。都会志向の若者ではなく、地方志向の若者にアプローチすることに決め、開発オフィスを構えていた徳島の良さをPRしていくことにした。東京には「機会さえあれば故郷に戻りたい」という人や、東京に長く住んでいて「別のところで暮らしてみたい」という人も存在している。そういった意味で東京は「人種のるつぼ」とも言えるだろう。吉田さんが目をつけたのは、まさにここである。
故郷に帰ることができる、または故郷ではなくても都会ではない、地方で暮らすことができる。ただ地方に住むだけではなく、「半分は好きなことをして、もう半分はIT」。そんな生活をイメージしてPRを継続していくと、多くの応募者が集まるようになった。まさに働き方の観念の改革であり、その効果が如実に表れたのである。東京から徳島に移住したとある社員の例として、「好きなサーフィンをしてから出勤」「通勤時間とられないのは大きい」「生活費も下がる」と笑顔で語るビデオが会場に流れた。仕事も趣味も充実させたいという思いは、地方で実現できる!という吉田さんの言葉には強い説得力があった。
こうした働き方への取り組みが話題となり、雑誌などのメディアにも取り上げられ、PR効果は増大、応募者は急増したという。尖った良さを出していく戦略は成功し、増収増益という結果を出した。
2012年には徳島県海部郡美波町にクリエイティブオフィス「美波Lab」を設立。その翌年には本店所在地を東京から徳島県海部郡美波町に移転した。地域でオンリーワンに近いIT企業ということもあり、学校でIT授業を実施するなど地方貢献にも積極的に取り組んでいる。阿波踊りのチームもつくり、地域の人からも「助かる」「活気が出てきた」と言われるようになった。おもしろいからやっていただけ、と語る吉田さんだが、確実に会社と地域のWin-Winが実現できているのである。
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