JAWS-UG九州勉強会レポート 第4回
災害にクラウドとコミュニティはどう役に立つのか?勉強会で明らかに
熊本地震で漏水・給水情報を伝えたmizuderu.info開発の舞台裏
2016年10月19日 07時00分更新
震災の中でコードを書き、コミットし続けたメンバー
山ノ内さんの全体概要説明に引き続いては、各メンバーがコメントした。初期バージョンを開発した菊川稀玲さんは、風呂に入っている時にまさかの大揺れ。その後、和泉助教の求めに応じてスマホのGPSで位置と水の出る、出ないを投稿し、Google Mapに表示するというもっともベースとなる機能を実装した。とはいえ、グループ開発に移行した段階で、「もう出番がないなと思い、休みを満喫していました(笑)」という。
菊川さんは、「途中からはすごいすごいと言いながらただ見ていた。なかなかできない体験で面白かった」と感想を語る。さらにmizuderu.infoをフォークし、避難所までの行き方を検索できる「suguderu」というアプリを作ってみたという。まさに学生さんらしい好奇心だ。
続いて登壇したのは、開発と運用を手がけた熊本のフリーエンジニアである村上卓さん。本震時に棚が倒れて、命の危険を感じて、家族と外に出たという村上さんが和泉教授から召還されたのは17日。電気が回復したため開発に参加したが、「そのときはまさかひたすらマージしてデプロイという生活になるとは思わなかった」(村上さん)という。
当初、村上さんが骨を折ったのが複数存在していたリポジトリやシステムの統合。開発当初、mizuderu.infoの前身となるサービスは、テスト用、公開用などGitHubリポジトリが複数あったほか、Elastic Beanstalkの環境も別れていた。それらを名前から判断し、統合するのが大変だったという。
JAWS-UGやPHPユーザー会などが参戦した中盤以降は、スプレッドシート等に書かれた機能を実装した大量のGitHubのプルリクエストをひたすらマージするという作業だった。4月17~20日がコミットがピークで、開発が終了した4月24日までには277のコミットが行なわれたという。ちなみにmizuderu.infoはアクセスのなくなった7月7日に正式にクローズされている。
mizuderu.infoリリースまでをつないだ「とある漏水サービス」
菊川さんの後に登壇した福岡のエンジニアである星野雅治さんは前震の段階で、給水・漏水を投稿するアプリを開発し、4月19日の段階でmizuderu.infoにデータを統合したといういきさつから参加。「個人のエンジニアが復興支援で感じたこと」と題して講演した。
4月14日の前震の際は、福岡で熊本のエンジニアと呑んでいたという。翌日、熊本のエンジニアとミーティングし、SNSなどの投稿を見て、給水・漏水箇所の特定が重要と感じた星野さんは、16日に給水状況を投稿できるサービスを構築・リリース。「東日本大震災の時のサービスが使えるかと思ったけど、意外と残っていなかった。とてももったいない。でも、動いてないのであれば、作るべきだなと思った」(星野さん)。その後、本震後を受けた18日に漏水状況を投稿できるサービスを構築・リリースし、19日にはmizuderu.infoのチームから連絡を受け、漏水データを提供し、自身のサービスをクローズした。
星野さんは自身のサービスを振り返り、「個人の作ったサービスなんて、当初は誰も見なかった。Facebookで拡散をお願いしたのですが、なかなか情報が集まらなかった」と語る。その後、5000人くらいのフォロワーを持つFacebookページに掲出してもらったところ、PVは一気に1000/1日に跳ね上がった。ちなみにサービス終了後、星野さんは周知方法を探したところ、Google Ad GrantsやTwitter for GoodなどのNPOや復興支援向けの広告支援サービスがあったという。今後はこうしたサービスを活用し、認知させていくことも検討したいところだ。
名前すらなかった星野さんのサービスだが、mizuderu.infoが漏水機能をリリースするまでの約28時間で50件の情報を取得できた。「サービスの公開を速くするのは、有事の際には求められていることだと思う」と語る星野さん。一方で、災害時の情報ニーズの一部ではあることも理解している。「水というのは人間にとっては命に関わる情報だし、そこをサポートできたのはよかった。でも、サービスとしてはまだまだやることはあると感じている」とまとめた。
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