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地方コミュニティの悲喜こもごも満載の座談会を完全レポート

秋田の東北IT物産展で聞いた北東北コミュニティの生の声

2016年09月30日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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9月10日に開催された「東北IT物産展 2016 in 秋田」の最終セッションでは、青森、秋田、岩手などの6つのコミュニティメンバーがコミュニティの現状と課題を語る座談会を行なった。モデレーターを務めたアスキーのオオタニが座談会の模様をお伝えする。(以下、敬称略)

テーマなしが北東北の勉強会の流儀?

オオタニ:みなさんこんにちは! コミュニティ取材をライフワークにしているアスキーのオオタニです。まずは登壇者の自己紹介とコミュニティを立ち上げた経緯をお聞かせください。まずは那須さんから。

名無し勉強会 那須悟(以下、那須):はい。那須と申します。私はAzureの勉強会のJAZUGを主催しているほか、名無し勉強会に参加しています。名無し勉強会は名前の通り、テーマがない勉強会で、単に技術が好きだとか、知らないことを知ろうというモチベーションでできました。名前を決めないで勉強会を始めたのですが、もう十数回くらいやっています。

オオタニ:テーマがない勉強会で、どんなことをやっているんですか?

那須:マイクロソフトのMVPをいただいている私は、やっぱりマイクロソフトの話ばかりなのですが、勉強会ではAWSの話とか、Swiftの開発の話、あるいは普段できないようなテーマをやってます。たとえば、原発はどのように熱を生んでいるか、統計の話ですね。誰もネタがかぶらないので、参加すると知識が得られるというのが特徴です。

JAGAの佐々木 大三さん、名無し勉強会、JAZUGの那須 悟さん、WordBench Akita 阿部 文人さん

オオタニ:なるほど。参加すると斜め上のテーマがやってきて、いろんな知識を得られるんですね。

那須:はい。でも単に広く浅くではなく、特定のテーマを深掘りすることもできます。多業種の方々が、それぞれの悩みを語り、それを解決するにはどうしたらよいかなどを語ることもあります。

オオタニ:では、次に虎の穴の関さん行ってみましょうか。

虎の穴 関翼(以下、関):秋田のトラパンツに努めている関翼です。虎の穴という異色のコミュニティを始めたきっかけは、エンジニアとつながりたいというものです。私もトラパンツに入ったのは、スタバでThinkPadでドヤってたところ、隣の人がトラパンツ社員に「ドヤってるね」と話しかけられたのがきっかけでした(笑)。でも、東北は人口が少ないので、エンジニアとはなかなかつながれない。だから、虎の穴というちょい悪の勉強会を立ち上げて、闇の技術を学ぶといったテーマでエンジニアを引きずりだそうと思いました。

オオタニ:お二人とも勉強会の名前にそれなりにこだわりがあるんですね。続いて、JAGAの佐々木大三さん、行ってみましょうか。

JAGA 佐々木大三(以下、大三):私は情報処理技術研究会 秋田支部、日本Androidの会 秋田支部の2つの頭をとってJAGAというコミュニティを立ち上げています。もともと、JAGAは県の組み込み機器研究会の呑み会で、メンバーがゆるい感じの勉強会を作りたいねという話からスタートし、2011年に立ち上がりました。実は2009年に秋田エムという同様のコミュニティがあったのですが、あとからその存在を知ったので、現在ではクロスコミュニティでいろんな勉強会をやっています。

オオタニ:こちらも内容について教えてください。

大三:中身としてはAndroidの会ではあるのですが、Androidの話はほとんどでてきません。私もiPhoneユーザーですし(笑)。なので、名前にとらわれず、いろんなことを勉強してみようという会です。そこから別の勉強会が派生してくれたらいいなと思っていたのですが、実際に横山さんのもくもく会が立ち上がりました。

秋田もくもく会 横山 悠貴(以下、横山):はい。秋田もくもく会の横山です。もくもく会はもともとJAGAの中にあったのですが、そこでプログラミングを教えている森下さんという方がもくもく会だけを独立させて、コミュニティとして動きやすくさせようということで、発足しました。

いわてxITx若手の佐々木 雄大さん、虎の穴の関翼さん、秋田もくもく会の横山悠貴さん

オオタニ:続いて、岩手の佐々木さんと、WordBench Akitaの阿部さんお願いします。

いわてxITx若手 佐々木 雄大(以下、佐々木):いわて×IT×若手を主催している佐々木です。立ち上がったきっかけは、あるイベントの交流会で東京から来た人に「岩手のITでは、どうやって飯食ってるんですか?」と聞かれた時に、横のつながりがなかったのに気がついたこと。そこから懇親メインのコミュニティを立ち上げました。

WordBench Akita 阿部 文人(以下、阿部):WordPressの勉強会であるWordBenchを秋田で展開している阿部です。WordPressのみならず、HTML5やCSS、デザイン、画像など題材も幅広く手がけています。

オオタニ:WordPressの勉強会は、都内でも盛んに行なわれていますよね。

阿部:東京では「WordCamp」という大きなイベントがあり、私も4~5回くらい参加してきたのですが、地元の秋田でもいろんなエンジニアやデザイナーが集える場所を作れないかなあと思っていました。私自身も秋田エムでコミュニティに初めて参加し、横のつながりも増えてきたので、これなら人を集められると思って、発足しました。

オオタニ:お聞きしていると、北東北のITコミュニティってテーマも決まってないし、発足のきっかけも含めて、わりとフリーダムですね(笑)。

阿部:やはり東北はテーマをしぼっちゃうと人が集まらないので、そういう傾向はあるかもしれませんね。

人集め、会場探し、継続のモチベーションなどの悩み

オオタニ:私が普段取材している東京は、毎日のようにいろんなテーマの勉強会が開催されています。以前、九州のエンジニアに「渋谷だとその日の夜に勉強会やろうといっても、それなりに人数集まるでしょう。でも、福岡だとそんなことないんですよ」と言われたことがあるのですが、やはり人集めは苦労するんでしょうか。

阿部:はい。人集めは相当苦労しました。もちろん地元で知っている人はいたのですが、それだけだと身内だけのコミュニティになってしまう。だから、会社の人に依頼して、県の主催しているメルマガに配信したもらったり、自分の会社が他社への取材をやっていたりするので、そこでWordBench秋田を取り上げてもらったりして、集めました。それで、なんとか30人くらいです。

オオタニ:SNSで拡散しようと思っても、意外とみんなSNS使ってなかったり、女性の場合はそもそもFacebook使ってないとかありますよね。意外と地方だとメルマガが集客に効くという話は、私も聞いたことがあります。ほかに会場の問題とかありますか?

関:たとえば、JAGAさんとかは毎回リコーITソリューションズさんのご厚意があって、会場が決まっています。私のやっている虎の穴は、駅前のジョイナスや今回使っているセンターズでやっているのですが、人気がある場所は争いです。会場確保は毎回苦労しますね。

那須:みなさん、勉強会の位置とか、距離とか問題ありません? JAZ-UGは青森なので、弘前の自宅から1時間で着くのですが、名無し勉強会は青森の三沢市でやるので、車で2~3時間くらいかかるし、八戸はもっとかかります。もちろん、そこには価値があるから行くんですけど、仕事が終わった後に車で爆走するのは、まあ大変ですよね。東京だって、高尾で勉強するとか、大変じゃないですか(笑)。

オオタニ:JAWS-UG中央線は高尾山で勉強会やりますが、まあ滅多にないですね。東北の地理感覚がないオオタニとしては、そこらへんぜひ知りたいです。

横山:もくもく会は秋田市内でやること多いですが、次は郊外でやります。これなら郊外の方々はそのまま参加できるし、会場を変えると気分が変わると思って。

オオタニ:遠くの会場でやるのをむしろポジティブに捉えるわけですね。

佐々木:いわて×IT×若手の場合は、勉強会ではなく、交流会ととらえてもらっています。大土や陸前高田から来てもらうと、正直泊まりがけになってしまうのですが、今までのなかったつながりを作るということにメリットを感じてもらっているので、今のところは遠くから来てもらっています。

オオタニ:次に継続性という話をしようと思うのですが、先ほど那須さんは十何回という話だったのですが、続けるコツがあるんですか?

那須:名無しの勉強会はやや特殊で、大きな告知はしてません。だから、人づてで来る場合がほとんど。そもそも1人10分必ずLTをするので、敷居は高い。裏を返せば、そこにバリューを感じている人たちはだまって集まってくれるので、継続しやすいというのが私の分析です。

オオタニ:「来る人=登壇する人」なので、そもそも来るモチベーションが高いわけですね。

阿部:継続は確かに難しいですね。実際、6月に以降勉強会が止まっていて、次を早くやりたいと考えています。そもそも参加者がエンジニアやデザイナーなど忙しい職種。自分の仕事をしながら、LTの資料を作らなければならないので、そこがハードルですね。

忙しい職種相手なので、参加者集めや継続に悩みを抱えるという阿部さん

大三:JAGAはだいたい20人くらいでけっこう継続できてます。とはいえ、参加者4人というときもありました。こういうときはプレゼン形式にしないで、アイデア出しとか、ブレストとか、イベントの内容を変えてしまいます。

オオタニ:横山さんのもくもく会とかはどうですか?

横山:うちはコアメンバーを決めずに、誰でも開催していいということですかね。秋田はコミュニティに参加するメンバーが少ないので、そうやって自分事にしてもらって継続してますね。

関:秋田のコミュニティは横のつながりがあるので、スケジュールがかぶらないようになっています。大三さんのところも、今月の予定とか出してくれているので、少ない参加者を奪い合わないこういう取り組みは重要な気がしますね。

オオタニ:都内だと、大きなイベントが普通にバッティングしますからね。

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