東北大学は9月23日、「頭を動かしている最中は音が動いたことに気づきにくくなる-音空間知覚の仕組みの解明につながる研究成果-」という研究成果を発表した。これは、山梨英和大学人間文化学部 本多明生准教授、東北大学大学院情報科学研究科修了生 大場景翔氏、東北学院大学工学部 岩谷幸雄教授、東北大学電気通信研究所 鈴木陽一教授の研究グループが発見した研究成果だ。
この研究では、頭を自ら動かしている最中は音空間の変化に気づきにくくなることを世界に先駆けて明らかにした。これにより、より少ない情報量で高い臨場感を持つ音場情報を実現する技術の開発につながる成果をあげたという。
この研究では、音の動きを厳密に制御するために、頭部運動感応型3次元聴覚ディスプレー(virtualauditory display)というバーチャルリアリティ装置を使用した。実験では、聴取者の正面を0度としたときに、左もしくは右60度にバーチャル音を提示した。聴取者は、秒速60度で聴取音の提示方向に動かす条件、頭を動かさない条件、2つの条件で実験に取り組んだ。
聴取者に求められた課題は、聴取音が移動する条件と音が移動しない条件を聞きくらべて音が移動した条件を回答する実験を行なった「実験1」。
実験の結果、頭を動かさない静止条件では、聴取音が3.6度移動すれば音が動いたことに気づいた。一方、頭を秒速60度で動かした場合は、聴取音が17.7度移動しなければ、聴取者は音が動いたことに気づかなかったという。
また、頭を動かす速度によって結果が異なるのかについても検討を行なった「実験2」。
その結果、より遅い速度(秒速30度)で聴取者が頭を動かした場合「実験1」と同様に聴取者が頭を動かしている最中は、音が動いたことに気づきにくくなることが分かった。
研究成果では、頭を動かしている最中はたとえ動的な音を聴取しても、頭の動きの速度にはあまり依存せずに、頭を動かしたことによって音空間知覚の働きが抑制されることを示唆している。これは、音空間知覚の仕組みの解明につながるという。
この研究は、HMD(ヘッドマウントディスプレー)を用いたバーチャルリアリティー装置やソフトウェアの設計において、より少ない情報量で同等の臨場感を持つ音場情報を実現するための情報圧縮や制御、提示技術などに応用できる可能性があるという。