あなたはあの看板を覚えているでしょうか。下高井戸に立っていた「KORG」の大きな看板を。
ネオンで夜も鮮やか。首都高4号線からバッチリ見える、都心と郊外を分けるランドマーク。東京競馬場やサントリー府中工場を歌うくらいなら、ユーミンはなぜあの看板を歌わなかったのか※。
かつて、あの看板の下にはコルグ本社があり、その右隣と下高井戸寄りのビル3つで営業していました。数々の論争や意思決定、おそらくは雑談や煙草の吸殻のような無駄も積み重ねながら、様々な製品を産み出してきたはず。言ってみれば、下高井戸は聖地のようなものです。
現在の稲城に本社機能が移転したのは2004年8月のこと。看板の立っていたビルは「旧館」と呼ばれており、カスタマーサポートなどのサービス拠点に。その旧館右隣のビルは、音を出す場所としてユーザーに還元しようということで音楽用のスタジオに改装され、運営企業として株式会社ジーロックスが設立されています。
ただ、いまはもうあのKORGの看板はありません。旧館は老朽化のため防災上危険ということから、昨年末に看板ごと取り壊されてしまいました。でも、消えるものもあれば、新しく生まれるものもある。その取り壊し工事と同時に、右隣りのスタジオでは改修工事が始まり、今年の春にリニューアルオープンしています。
今回は、聖地・下高井戸に君臨するスタジオ「G-Roks」のお話です。
アマチュアもウェルカムなプロスタジオ
G-Roksのスタジオは全部で5部屋。
STUDIO 1(70帖)は、天井も高く照明施設もあり、規模の大きなステージのリハーサルやゲネプロに対応。それよりちょっと小ぶりなSTUDIO 2(30帖)も、小ホールのリハーサルやゲネプロ向き。料金設定は1日12時間単位で、STUDIO 1が12万3500円、STUDIO 2が6万4500円という、料金設定から言っても、それなりのバジェットで動けるみなさん、つまりプロ向けのスタジオです。
ところがSTUDIO 4、STUDIO 5(17帖)となると、1時間2500円からという敷居の低い料金設定に。NOAHやBASS ON TOPやゲートウェイなんかと変わりません。個人練習にも対応する、我々でもお小遣いで使えそうな、ちょっと広いスタジオです。
個人的にバンドで何度か使わせてもらったことがありますが、このスタジオが実に素晴らしい。まず一般のリハスタと違うのは、プロユースのスタジオとリソースを共有していることから、アメニティとスタッフのレベルが高いこと。そして楽器メーカー直営ということで、状態の良い機材が常設で揃っていること。
アメニティについては、ロビーも含めた内装が素晴らしい。観葉植物とともにでっかいソファーがゴロゴロ転がっており、我々もついでにゴロゴロくつろぎがち。音楽関係の雑誌や書籍も置かれていて、時間にだらしのない人間としてダメなメンバーを待つのも苦になりません。
ロビーに展示されているギターやベースは100円で借りられます。リハスタで貸してくれる楽器というと、大抵は安いストラトやレスポールモデルが定番で、あんまり選択肢もなかったりするんですが、ここの場合は、PRSやWarwickなどコルグが取り扱っているお高いブランドが揃っています。
発売直後の新製品も、ごく当たり前に置いてあります。楽器店での試奏は様々な意味で気が引けるものですが、ここなら大音量で気兼ねなく試せる。そういう楽しみもあるでしょう。