見届けたいものだね、デバイスの進化を
四本 タブレット用のペンはいっぱい出てるじゃない。そもそもApple Pencilのなにがそんなにいいんですか。
寺田 いままでいっぱい試したんだけど、どれもスタイラスレベルなんだよ。これで初めてワコムの板タブに近づいた。現状、ProcreateとiPad ProとApple Pencilの組み合わせの良さは、オレにもうデスクトップを捨てさせる勢いですよ。
四本 家、いらないね。
寺田 いらないね。
(ごそごそとカバンの中から大量のタブレットを取り出し、テーブルの上に並べ始める)
四本 えーと、何枚出てくるんですか。
寺田 ってよく言われるんだけど、海外に行くときも、こんな感じ。iPad Proは必ず持っていって、メールチェック用にiPad miniを持って行く。それでも、まだ不安はあるのでMacBook Airの11インチと板タブも一緒に持って行くんだけど、そっちは開かないで済むくらいにはなりつつあるね。
四本 そういや最近、なんだかんだでライブペインティング多いよね。
寺田 いつの間にかね、この芸風に。自分のイベントで客寄せじゃないですか。オレのよって立つところは、エンターテインメントだから、見て喜んでもらってるんだなって実感できたらね、楽なんですよ、あとは描いてりゃいいんだから。
四本 いま喋っている間もずっと描いてるけど、見られるのやじゃないの?
寺田 全然平気、喋んなくていいから。即興で楽器を弾いている感じ。たぶん全裸で描いていても恥ずかしくない。これで、すごい可愛い女の子が横で見ていたら全裸は恥ずかしいけど。
四本 その前に警察も来るけど。
寺田 しかしねえ、こんな未来が来るとはねえ。
四本 あとどれくらい生きますか。
寺田 もうちょっと見届けたいものだね、デバイスの進化を。とりあえず、まずApple Pencilは複数接続に対応してほしいなって。オレのために。
四本 あなたのために。わかりました。
寺田 話はもう終わりました。
四本 ではみなさんよろしく。
寺田さんは終始「オレのために」とおっしゃられていましたが、これは絵を描くみなさんにとっても大切なことでしょう。紙と同じようにストレスなく見開きで描ける環境として、技術的にかなりいいところまで来ている。でも漫画という文化を取りこぼしなくデジタルへ移行させるステップは、まだまだいくつもあるということのようです。
では最後にお知らせです。ただいま東京・大阪・名古屋で開催中(2017年4~5月から福岡でも開催予定)の「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」に、寺田克也さんも日本の漫画家として参加されています。漫画についてフランスでは、建築、彫刻、絵画、音楽、文学(詩)、演劇、映画、メディア芸術に次ぐ第9の芸術と言われているそうです。こちらもお見逃しなく!
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
