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JAWS-UG中部・北陸勉強会レポート 第5回

クラウドは働き方にも変化をもたらす

磐田の勉強会で改めて聞いた「クラウドのメリットってなに?」

2016年07月25日 07時00分更新

文● 重森大

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クラウドが適したシステムを見分け、クラウド脳で設計することでメリットを最大化できる

 ここまでの話を聞いていると良いことづくしで、全てクラウド化してしまえばいいのではないかと思えてしまうが、「クラウドはあくまでも選択肢のひとつ。何でもかんでもクラウドにすればいい訳ではない」と多田さんは語る。

 「実現したい目的によってクラウドが適している場合とそうでない場合があります。スモールスタートのシステム、24/365で稼動させる必要のないシステム、全世界に展開する予定があるシステムなどは、クラウドが適しているものの代表例と言えるでしょう」(多田さん)

 さらに、クラウドを選択してそのメリットを活かすには、「クラウド脳で考える」ことが必要だと多田氏は指摘。オンプレミスのシステムと同じ発想、手法で開発していたのでは、クラウドのうまみが出ない。

「クラウドの特性を理解し、提供されるサービスを駆使し、最適なアーキテクチャを設計する必要があります」(多田さん)

 クラウドの特性を理解するために、AWSを例にしてクラウドインフラを3層に分けて考えてみましょうと多田氏が示したのが、次の図だ。

クラウドインフラの3層

 一番上がロードバランサーやNATなどのフロントエンド層で、この部分はAWSが管理、サービスとして提供してくれる。一番下のデータベース層も、AWSが管理してくれる部分だ。いずれも障害時には自動でフェイルオーバーしてくれるので、自分が使いたいように設定さえしておけば普段はきにすることはない。エンジニアは中間にあるアプリケーション層に注力することになるが、こちらも適切に設定しておけば負荷に応じて自動的にスケールイン/アウトしてくれるため、オンプレミスで求められるような厳密な負荷予測やサイジングは必要ない。

 こうした特性を理解し、サービスとして提供されている機能をうまく活用したアーキテクチャを生み出すことが、多田氏の言う「クラウド脳で考える」ということなのだろう。

クラウド脳で考えられるようになるためには、手を動かし、コミュニティに参加しよう

 理屈はわかっても、クラウド脳で考え、クラウドに適したアーキテクチャを考え出すのは簡単ではない。ここはやはり、頭で考えるだけではなく経験を積んでいくしかないようだ。

「クラウドサービスの多くはトライアル期間を設けています。AWSなら1年間の無料トライアルがあり、物理的な機器も不要なので、気になったらとりあえずさわってみてください。それから、コミュニティやイベントに参加してみてください。AWSの楽しさがどんどん大きくなるはずです」(多田さん)

 AWSは全世界12リージョンが稼動しており、東京リージョンだけでも50サービスが使えること、世界中に豊富な実績があることなどを紹介。さらに頻繁にアップデートがあり、次々に新サービスが展開されるため学び続ける楽しみがあるとも言う。

「最近はサーバレスアーキテクチャ、IoT、機械学習などがホットワードになっています。そのときどきに潮流があり、新しくリリースされる機能により新たに実現可能になるアーキテクチャもあります」(多田さん)

 そうした最新の情報に触れられる場として多田さんは、開催されたばかりのAWS Summitや国内7都市をめぐるAWS Cloud Roadshow、世界最大規模のAWSカンファレンスであるAWS re:Inventなどを紹介。

多田さんが紹介したAWS summitの様子

「ひとりで学ぶのは、モチベーション維持に限界があると感じています。それよりも皆で一緒に学ぶ方が楽しいので、JAWS-UGなどのコミュニティに積極的に参加してみてください」(多田氏)

 東海地区では「JAWS-UG東海道2016」が秋に予定されていることにも触れ、「こうしたイベントや勉強会に参加し、お高いに研鑽し合うことで楽しみながら高みを目指せる」と参加者に語りかけた。

クラウドは働き方に変化をもたらすが、やはり最後はフェイスツーフェイス

 多田氏のセッションを受けて、ディスカッションの話題はクラウドを使う意義に的が絞られた。中心となったのは多田さんと、ヤマハモーターソリューションの伊藤 秀樹さん。クラウドでの開発や運用に携わっている多田さんは自社での自身の働き方を紹介した。

「都心では電車の遅延は珍しくなく、人身事故などで出社が数時間遅れることもあります。そんなときでもクラウド環境なら、近くのカフェからリモートワークで仕事ができるので、焦って出社する必要がありません。楽なだけではなく、顧客の要望にもオンタイムで対応できるのが強みですね」(多田さん)

ヤマハモーターソリューション ITサービス事業部 ITサービス企画部 企画・設計グループ 伊藤 秀樹さん

 伊藤さんの職場でもメールがクラウド化されており、スマートフォンからWeb経由でメールの送受信ができるようになっており、働き方にいい影響をもたらしているという。

「会社を出た後でも、緊急の用事があればメールを見て対応できます。翌日まで気づかない、対応できないということがなくなったのは助かりますね」(伊藤さん)

 参加者もディスカッションに加わり、クラウド活用が働き方にどのような変化をもたらすのかと質問が飛んだ。クラウドを使うことでいつでもどこでも好きな場所で仕事ができるようになる。それによって従業員同士がバラバラになってしまうのではないかと危惧していたようだ。これに対して実際にリモートワークで業務に当たることもある多田さんは次のように答えた。

「ITがどれだけ進化しても、最終的にはフェイスツーフェイスに勝る交流はないと思います。離れて仕事をしていればどうしてもずれが生じますが、それを埋めるためには距離を縮めるしかありません。技術的に特別な工夫はなく、同僚と一緒に過ごす時間も作り、それを大切にすることでずれを埋めていくのがいいのではないでしょうか」(多田さん)

 ITがどれだけ進み、自由にオンラインでつながれるようになっても、やはり実際に会うことに勝る交流はない。この答えは、コミュニティに参加し、会場に足を運んだ方が多くのことを学べるという話にも通じることだと筆者は感じた。

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