渡米のきっかけもiPhoneだった
筆者は2011年から米国にカリフォルニア州バークレーに移ってきましたが、そのきっかけもiPhoneやAndroidについて考えていたことが関係あります。
日本はモバイル先進国だという自信を持っているべきだし、現在もなお、シリコンバレーの企業は日本で発展を遂げたモバイルに関する技術やビジネスモデルについてよく学んでいて、当時活躍していた人材の雇用なども当たり前のように進めています。
ただ2010年、iPhone 4登場の近辺から、米国市場に投入される機能が日本では使えないということが少なくない状況になりました。AppleのiOSだけでなく、開発者が作るアプリについても日本で利用できないものが出てきたのです。
今現在で言えば、Apple Payがその最たるものでしょう。また、今でこそUberは東京にもありますが、米国のような便利さを体験するには至らず、何がそんなには快適なイノベーションなのか、体験できずにいる人も多いはずです。
日本での対応以上に中国が重要市場化しており、Apple Payにしてもライドシェアアプリにしても、中国の方が、米国と同じような体験を楽しむことができるようになっています。
このことへの反論として、日本ではApple Payもライドシェアアプリも、必要ないぐらいに、電子マネーや公共交通機関と既存のタクシーが充実しているじゃないかという意見があります。筆者もこれは事実だと感じています。
しかし、不要だと言って無視していると、世界で何が起きているのか、モバイルの世界ですら把握できなくなってしまう、という恐れを感じたこともまた事実でした。
そのため、生活は不便でも、よりiPhoneやアプリが便利に輝く米国に身をおこう、という考えに至ったのです。
日本とアメリカの違いと共通点と安心感
日本で利用するiPhoneと米国で利用するiPhoneは、“別物”とまでは言いませんが、通信や金融といったインフラと法制度の違い、街に存在している解決すべき問題の違いから、その価値は異なるものです。現実世界の違いはデバイスの価値にも差をつけてしまうのです。
一方でオンラインの世界においては、大きな違いを見出すことはできませんでした。
筆者は2011年に米国に移り住んで真っ先に、iPhone 4Sを購入しました。回線が開通した瞬間、TwitterやFacebookの通知が流れ込んできて、地図もこれまで通りすぐに参照できるようになり、日本にいるときとさほど変わらないのだ、という感覚を覚えました。
このように、同じiPhoneでも、別物と感じて米国でのiPhone体験を求めていた部分と、他方全く同じ体験が待っていて、そこに安心感を覚える部分が共存していることに気づくことができた点は、今でも印象深く感じています。
来年はiPhone 10周年となりますが、果たしてあと1年半でどのようなことが起きるのでしょうか。その前に、9年目のiPhoneのリリースも待っていますね。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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