ThinkPad 開発哲学の木とWOW+
今回の大和TechTalkでは、「ThinkPad 開発哲学の木」と「WOW+」という開発現場で行われている2つの取り組みについても説明した。
レノボ・ジャパン 大和研究所ソリューション開発部システムデザイン戦略エンジニアの山崎誠仁氏は、「ThinkPad 開発哲学の木とは、これまで大和研究所に受け継がれてきた開発哲学をもとに、開発におけるグローバル化に伴って求められるリーダーシップとゴールの共有、様々なデバイスとインターネットの普及による生活スタイルの変化を捉えながら、ゆるぎない哲学として再確認し、視覚化したものである。顧客ニーズや技術の種などを外から取り込むための『土』、開発哲学の根幹を成す『幹』、ゴールとなる『実』の3つの部分に分けて視覚化したものになる」とする。
とくに重要なのがThinkPadの開発哲学だ。ここでは、堅牢性、安定性、セキュリティなどによって構成される「信頼される品質」、直感的操作、継承性、親和性、ストレスフリーで構成される「親しみやすさ」、業界最先端、たたずまい、ThinkPadらしさ、パフォーマンスや応答性などの「先進性」の3つのデザインフィロソフィーを示し、「機構設計、電気設計、デザイナーなど、あらゆる分野のエンジニアの一人ひとりが、自分の専門分野において、デザインフィロソフィーを具体的な意味に置き換えるとともに、新製品の提案やデザインに迷ったときに、どうすべきかを考える原点にしていくことになる。そして、常に顧客視点で生活スタイルや技術に目を向けることも徹底していく」と位置づけた。
大和研究所のエンジニアは、「開発哲学の木」が描かれたカードを所持。この意識を徹底させているほか、裏面にはメジャーが刻まれており、「いつでもエンジニアが利用できるツールに仕上げている」と冗談混じりに説明した。
一方、WOW+とは、新たなユーザー体験を提案し、ユーザーに買って良かったと言ってもらえるための取り組みだと位置づける。
レノボ・ジャパン 大和研究所STIC(Strategic Technology & Innovation Center)先進技術開発 アドバイザリーエンジニアリングの川北幸司氏は、「エンジニアも1人のユーザーであることを再認識して、顧客が感じるペインポイントを考える機会を増やし、さらに、進んで新たな技術や世界のトレンドを勉強し、体験することが、次世代のThinkPadの提案につながるという文化を根づかせたい。新たなThinkPadによって、WOWな体験を提供していく」と、WOW+の基本的な考え方を示す。
従来のPCのペインポイントは、PCの性能を高めれば解決することが多かった。だが、スマートフォンやウェアラブルデバイス、IoTデバイス、クラウドサービスなどが身近になったことで、いままでのPCを超えた洗練されたユーザー体験が求められ、ペインポイントの解決には、新たな発想が必要とされている。
「今後は、常にネットワークにつながり、様々なデバイスやサービスと連携し、自然言語でアプローチできるようなインテリジェントな製品が普及していく。デバイス自身が、空気を読んで、ユーザーに寄っていくという使い方も求められるだろう。そうした顧客を中心に見据えた製品を開発する必要がある。オープンマインドで、新たなユーザー体験の可能性を考えていくことになる」とする。
WOW+から生まれた、インテリジェントセンシング
すでに、WOW+の実績として出てきたものもある。
ひとつは、インテリジェントセンシングエンジンである。
デバイスに搭載された様々なセンサーを組み合わせて、電源管理を自動的に行う機能だ。たとえば、持ち運び中や、画面を下にして設置した際に自動的にディスプレイをオフにしたり、表示されたドキュメントを利用者が見ていることを認識し、ディスプレイをオフにしない機能、暗くなった場合にはキーボードのバックライトを自動的にオンにする機能などが含まれる。
もうひとつは、画面に表示されたすべてのアプリに、ペンやタッチ操作で書き込みおよびメモができる「WRITEit」。書き込んだアイデアを簡単にシェアできる機能も持っているという。
さらに、製品化につながらなくても、特許を取得し、知的財産に貢献するといったものもある。タブレットの額縁部分や背面などに、指をスライドするだけで様々な操作ができる機能を配置したり、自動的に自立するタブレットスタンドなどが、WOW+の成果としてあがっている。
WOW+では、数年先を見据えた新たなテーマを議論したり、技術展示会を開催するほか、この仕組みを新入社員研修のなかにも組み込み、大和研究所全体で取り組む体制としている。新たなユーザー体験の提案を行うWOW+キャンペーンも年3回開催されているという。
「今後も大和研究所の文化として、WOW+の活動を定着させ、さらに進化させていきたい」としている。