Gear VRの強力なライバルが出現!
グーグルの新VRプラットフォーム「Daydream」とは何?
2016年05月22日 10時00分更新
VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!
どもども! VRおじさんことPANORAの広田です。今週、VR業界で存在感を示したのはモバイルの分野。前回取り上げたGear VRに取り付けるスマートフォン「Galaxy S7 edge」が発売され、さらにGaer VRを使ったVRアトラクションも楽しめる「Galaxy Studio」が東京駅前の商業施設にオープンする(PANORAの記事)など、国内ではGear VRが大躍進でした。
一方、アメリカでは5月19日からグーグルが開発者向けカンファレンス「Google I/O 2016」を開催し、その基調講演でモバイルVRプラットフォーム「DayDream」を今秋にリリースすることを明らかにしました。このDayDreamをピックアップしてきます。
Google Cardboardの上位版
グーグルは、ご存知、モバイルOSのAndroidをリリースしている企業です。そして今まではスマホを利用する、段ボール製VRヘッドマウントディスプレー「Google Cardboard」を発表していました。Cardboardでは、本体は設計図を公開してさまざまなメーカーにつくってもらったものを使い、アプリはそれぞれGoogle PlayやiTunes App Storeからダウンロードする形態でした。側面に磁石付きのスイッチを用意し、視界のポインターで対象をみつめて、このスイッチを下に引くことでアイテムを選択するという操作も可能です。
Cardboardがいいのは、とにかく安いということ。手持ちのスマホに千円ちょっとからの金額で売られているHMDを足すだけで、視界いっぱいが映像に覆われて、360度全周が見渡せるというVR体験を実現してくれます。Cardboardで初めて「映像の中に入るってこういうことなのか」と、VRの楽しさの一端に気づいた人も多いはずです。日本で言えば、同じ段ボール製HMDの「ハコスコ」の貢献も大きいですね。
ただ、残念ながら段ボールの隙間から光が入ってきて完全に視界が遮られないので、どうしても「あちらの世界」にいる感覚は削がれてしまいますし、アプリを切り替えるたびにいちいちスマホを外さなければいけないのも面倒です。
というわけで生み出されたのが、普及帯の上位に位置するDaydreamでした。
頭の動きから表示までの遅延が20ミリ秒以下
Daydreamは、まず表示の遅延が大幅に改善されています。前回もちょっと触れましたが、Gear VRでは首を振ったときの映像表示が「ヌルヌル」というのが大きなメリットでした。Oculusでもこの人間の動きから実際に表示されるまでの「Motion to Photon」の時間を20m秒以下にしようと、さまざまな仕組みをRiftやGear VRに組み込んでいます。
Daydreamでは、まずGoogle I/Oで発表された次期OS「Android N」において、VRモードをサポート。OSレベルでのセンサー検知と描画をサポートしたうえで、対応する「Daydream-Ready」なスマートフォンを、サムスン電子、HTC、LG、シャオミ、ファーウェイ、ZTE、ASUS、アルカテル──という8社からリリースします。そうしたソフトとハードの両面から攻めることで、20m秒以下の「Motion to Photon」を実現したそうです。
モーションコントローラーが付いているのも大きいですね。単に再生/一時停止や音量の調節などだけでなく、コントローラー自体を動かして操作することが可能。グーグルはデモとして、コントローラーで釣りをする様子を披露しています。Gear VRはBluetoothのゲームコントローラーを使うので、動きで操作できるDaydreamのリモコンはよりVR向きですね。
Daydreamのヘッドマウントディスプレーを外すことなく、アプリを切り替えたり、購入できたりするホーム画面の新設も大きなトピックでしょう。コンテンツプロバイダーも北米向けですが、CNNやNBA、IMAX、MBL、ゲーム系ではEA、UBISOFTなど、名だたるところが参加を表明していて、アプリの増加を感じさせます。
というわけで、グーグルは「プレミアムモバイルVR」ともよばれているGear VRの領域に、ガチンコでDaydreamをぶつけてきたわけです。
一方で、惜しむらくは位置トラッキングがサポートされていないことでしょう。グーグルは「Tango」という空間認識&ARのプロジェクトを進めており、専用センサーを含むスマートフォンをすでにリリースしています。例えば、周囲をスキャンして、床を認識させ、そこに猫を出現させて遊んでる様を楽しむといったことが可能です。
空間を三次元で認識できるので、このTango対応スマートフォンをVRヘッドマウントディスプレーに使えば、要するにユーザーの頭がどこにあるか外部にセンサーを置くことなく位置トラッキングが可能になります。いきなり機材を取り出して、パッと目につけて位置トラッキングが可能になるのは、モバイルVRの手軽さをさらに推し進めてくれます。
今回はコストがかかるのか、特に発表してきませんでしたが、今後は何か動きがあるかも? ともあれ今回のイベントで、グーグルというIT業界における巨人の存在感をVRでも示したことになります。実際の製品がどのくらいのクオリティーを実現できるのか。今秋のリリースに注目です。
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