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東京から1時間の人口流出都市、横須賀の憂鬱と希望 第2回

横須賀再生に賭けるタイムカプセル相澤さんと谷戸を歩く

2016年05月17日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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横須賀にオフィスを立ち上げたタイムカプセルが狙うモノ

 そんな相澤さんだが、2013年、地元の横須賀が日本一の人口流出都市として報道されたことに大きなショックを受ける。「大きな工場が跡形もなくなっていた。これは本当にまずいと思った」ということで、相澤さんは2014年に横須賀に戻り、タイムカプセルの横須賀オフィスを立ち上げる。「岐阜で3年間培ってきた、地元の若者を教え、彼らといっしょに働くというスタイルを横須賀でもやりたいなと思った」という経緯だ。

仕事場の横には相澤さんの“仕事場”である台所

 横須賀においてタイムカプセルが目指すのは、東京と同じクオリティを地方でもきちんと出していくこと。相澤さんは、「地方って自治体の仕事が大きいので、サービスレベルが落ちる傾向がある。地方ががんばってると言っても、東京におよばないというのが正直だと思います。東京と同じクオリティを出していかないと、未来はないです」と語る。

 もう1つは地元からきちんとリスペクトを得られる会社を目指す。これは相澤さんが地元の先輩に受けたインパクトを、後輩や他のコミュニティに伝えていきたいというこだわりだ。「週末はバーベキューやってるし、7時くらいから中央酒場で呑んでいる気楽で楽しいやつらがいるぞと。横須賀のゆるゆるな雰囲気を残しながら、仕事のクオリティにはめちゃくちゃこだわっているという会社にしていきたいですね」と相澤さんは語る。

 相澤さんから見た横須賀は「たまたまラッキーだった町」。軍港として発展したことで、地方から多くの人が移住してきた歴史を持ち、大企業の工場や横須賀リサーチパーク(YRP)のような研究所があり、基地があるため、多くの税金が投入されてきた。「とにかく恵まれた環境で、特にアピールしなくても、きちんと成り立っていた。だから、正直成長戦略を描かなくても、ぼちぼちのラインでなんとなく食えてしまうんです」というのが過去の横須賀だという。

 しかし、大手の工場が次々となくなり、いよいよダメになってきた時に、横須賀市民が選んだのが無所属の吉田雄人現市長。「今までのやり方じゃだめだ。やり方を変えてほしいとみんな思ったんですよね」(相澤さん)とのことで、市長と一体でヨコスカバレーを立ち上げる。

横須賀発で世界を目指せる人材を育てたい

 現在、相澤さんはヨコスカバレーでプログラミング研修とハッカソンのユニットを率いている。そして、自身は市内の高校などでプログラミングを教えつつ、6月からは無料のプログラミングスクールを横須賀市内で始める。「3月にプレのスクールをやって、6人くらいの学生が来たんですけど、めちゃくちゃ面白いと言ってもらえた。市内のいろんなところから来ているので、彼らが地元に戻って、このプログラミングの輪を拡げてもらいたい」(相澤さん)。

 ハッカソンでも横須賀の地の利を活かす。現在、ハッカソンユニットではYRPに所属しているNTT系の会社や、横浜に横須賀に本社を移転した製造メーカーのニフコなどと打ち合わせを重ねている。「YRPがある関係で、NTT関連の方だけでも1000人以上いて、かなりの人が横須賀に住んでいます。彼らと地元の企業でハッカソンをやってみたい。今までNTT関連の技術を使っていたのは東京の会社でしたが、地元の会社が使ってもいいんです。NTTの人たちも地元の会社には使って欲しくないなんて、まったく思ってない。『オレも横須賀住んでいるし、いっしょにやろうよ』と言ってくれている」と相澤さんは語る。

 こうしてスキルを得た人材をタイムカプセルで雇用し、地元を盛り上げ、世界に羽ばたくエンジニアを育成していくのが相澤さんの野望。「自分の会社がでかくなってちやほやされるとか、役員になってキャバクラでもてたいとか思わなくなった(笑)」と語る相澤さんは、横須賀の再生に残りの人生を賭ける。

「東京やシリコンバレーの会社に負けないくらいのことをできたら、横須賀人としてめちゃくちゃ痛快だなと思ってます」(相澤さん)

 「横須賀から世界に羽ばたくエンジニア、デザイナー、クリエイターを育成する。東京やシリコンバレーの会社に負けないくらいのことをやって、収益や給与、福利厚生などもきちんと実現できたら、これは横須賀人としてめちゃくちゃ痛快だなと思ってます」(相澤さん)。

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