自分たちのため、そして支えてくれた友人たちのためのブラウザー
テッちゃんは、インターネットの黎明期である1992年からウェブに関わっており、1994年にゲイル・イヴァルセイ氏と共同でOperaを開発。2010年まで17年間、オペラ・ソフトウェアのCEOを担ってきた。2011年に会社を辞めたときは、次はブラウザー開発ではなく新しいことをしようと思っていたという。
しかし2年後、実際に自分が使いたいと思うブラウザーがないということに気がついたそうだ。普及しているブラウザーは万人に向けたシンプルな方向に向かっており、ブラウザーベンダー間の競争は、機能性ではなくプラットフォームにいかに大量に配布していくかということになっている。
マイクロソフトはWindows、アップルはSafari、グーグルはAndroidやGoogleソリューションなどを向いていると、テッちゃんはいう。そこで、長い経験を通じて、ウェブの上で何かを作ることを学んで来たので、また新しいモノを作ることができるだろうと、冨田氏と共に会社を立ち上げたのだ。
技術面では、Vivaldiのすべてはウェブテクノロジーで作られていることが、大きな特徴。社内のデザイナーが自由にユーザーインターフェースを変えて、簡単に実装できるという利点があるそうだ。さらに、数百人のボランティアがテストやローカライズに参加しているという。
Vivaldiの機能面での特徴としてはまず見た目。他のブラウザーはグレー一色だが、Vivaldiは色を自由に選べるのが目をひく。また、ヘビーユーザー向けと言うだけあり、タブ機能にもこだわっている。複数のタブをまとめたり、新しいタブを開いたときに表示をどうするのかといったカスタマイズ機能が充実。
近年、ディスプレーのサイズは大きく、解像度も高くなってきているので、1つのVivaldiウィンドウの中にタブスタックで、複数のウェブページを並べて表示するような機能も搭載する。パネル機能は、ブックマークやダウンロードといったパネルに加え、ウェブページを常時表示するウェブパネルが便利。
メイン画面でウェブページを閲覧しながら、パネルの中でSNSなどをリアルタイムに確認できるのだ。このあたりは、公開済みの記事を参照して欲しい。
トークセッションや質疑応答では、いろいろな質問がテッちゃんに飛んだ。もちろん最初はスマホアプリの件。非常に多数のユーザーから要望があるそうで、平行して開発を進めているとのこと。ちょっと安心した。最初からクロスプラットフォームで展開しようと考えていたという。
また、プラットフォームに依存しないなら、ビジネスというかマネタイズはどうなっているのかと疑問に感じる。テッちゃん曰く
「Operaを立ち上げた時、6年間は自分の資金で運用したので心配はしていない。将来は検索エンジンや他のメーカーとレベニューシェアしたりして、1ユーザーあたり年間1ドルを売り上げ、200〜300万ユーザーで黒字になるという予測で動いているので」
とのこと。ファンディングはテッちゃん一人で行っているそうだ。
なんでアイスランドにオフィスを構えているのにアメリカに住んでいるの?という質問には
「Operaを辞めた後に新しいことを始めようと考え、6ヵ月リサーチして、ボストンの北のマグノリアに家族で移住した。2年後に新しいブラウザー立ち上げることになったが、家族のことを考えるとノルウェーやアイスランドにすぐ引っ越すのは無理なのでアメリカに住んでいる」と回答。
オフィスが遠隔地に散らばっているとコミュニケーションが不足しがちだが、1年に数回、スタッフ全員でアイスランドやボストンに集まって、共同生活をしながら開発を行っているという。泊まるのは、テッちゃんが運営しているイノベーションハウス。スタートアップ向けのコワーキングスペースで、宿泊施設も隣接しているのだ。楽しそうな合宿でうらやましい。