モバイルレイヤーとのハイブリッドを意識する
必ずしも、モバイルレイヤーは万能ではありません。
日本での大地震時には、基地局の故障やトラフィックの集中と、固定系と同じようにさまざまな理由でネットワークが通じにくくなる状況を体験してきました。実際、バークレーでも、モバイルネットワークは通じにくい状況になりつつあります。
普段スマートフォンやタブレットをWi-Fi経由で利用していた人たちが、一斉にセルラー経由でのアクセスに切り替えるため、普段は平気で下り50Mbps以上の速度を叩き出すT-Mobileも、数Mbps程度でつながれば良い方、という状況です。でも、つながるだけマシ、というべきでしょう。Wi-Fiは使えなくなってますから。
仕事の面で言えば、筆者の仕事については、すでに取材済み、リサーチ済みであれば、基本的には素材はすべてEvernoteに入っているので、もうネットにアクセスすることなく仕上げることができます。
また、コラムであれば、ちょっとした事実確認をスマホからできれば、やはり原稿を書き進めることができます。自分が思っていた以上に、原稿を書いている時には、インターネット接続が必要ないのだ、ということに気づかされます。
ただ、原稿を送る段になったら、話は変わります。今時、プリンターは持っていませんから、印刷してファクスで、という手段は使えませんし、そもそもファクスを使うにも電気が必要です。メールやクラウドを介して原稿を送らなければなりませんが、スマホのネットが生きていれば、テザリングでなんとかなります。
さらに言えば、仕事をするためのデバイスがモバイル通信につながれば、より良いわけです。Windows PCやSurface ProにもSIMカードがささるモデルがありますし、筆者が最近主たる仕事用のデバイスにしたiPad Proも、セルラーモデルを選んでいたため、タブレットだけでネット接続が可能でした。
もちろん、通信量も無制限ではありませんし、安定して速度が出るWi-Fiのほうが落ち着きます。無線通信の一種であるWi-Fiを「固定インフラ」というのも変ですが、固定系と移動系の双方をハイブリッドで利用できるようにしておいた方がよいですね。
筆者はまだWi-Fiやモバイル通信がない頃からインターネットに接続していたこともあり、前述の通り固定系インフラの方が「落ち着く」という感覚を持っています。しかし、よりモバイル側に寄った感覚を持っている世代も増えてきているのではないでしょうか。
料金や通信への負荷など、あらゆる面での「最適化」を行なう必要があり、災害や事故にも対処しなければならない。同時に、そのインフラが使えない時にどのように振る舞うか、ということも考えておかなければならない。想定と備えと実践は常に大切ですし、いくつも対応可能なシナリオを準備しておく必要があります。
体験と次への備えをどのように結びつけ、学び取るのか。もちろん通信に限ったことではありませんが、未曾有の出来事から受ける影響をいかに小さくするか、というアイディアは、世界中の人々が必要としているように感じました。
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