Instagramの企業活用をテーマに、アカウントの解説方法から運用のコツ、キャンペーンや広告出稿の方法を解説する「今日からできる!実践Instagramマーケティング入門」。最終回は、国内外の先進企業が取り組む、Instagramのユニークな活用法を6つ紹介します。より本格的なマーケティング活用のヒントにしてください。
1.投稿をコンバージョンへつなげる
ため息が出るような美しい観光地の写真を見て、「一度は行ってみたい」と思ったことは誰しもあるでしょう。とはいえ、思い立ってから旅へ出るための手間を考えると、どうしても尻込みしてしまいますよね。
そこでコンラッドホテルが始めたのが、ホテルのInstagramアカウントからホテルの専用ページにリンクし、宿泊予約ができるというサービス。
コンラッドホテルのInstagramアカウントでは、世界各国に展開するホテルとその周辺観光地の写真を投稿しており、気に入った写真があればユーザーは専用ページへ移動して、予約ができるしくみを提供しています。専用ページにもInstagramアカウントと同じ写真が掲載されていて、その写真をクリックするとすぐにホテルを予約できる手軽さが売りになっています。
2015年2月のサービス開始時点で、日本のほかバリや中国、イギリス、アメリカなど世界24カ国のホテルでサービスを提供。Instagramの写真を予約に直接結び付けるプロモーションであると同時に、顧客の利便性アップにもつながる、ユニークな取り組みです。
2.店舗を訪れた人へファンの投稿を見せる
ニューヨークにある人気レストラン「Comodo」のお店にあるメニューには、「#COMODOMENU ON INSTAGRAM」との記載があります。これはハッシュタグを活用して、ファンが投稿した料理の写真をInstagram上でお店のメニューに仕立て上げるプロモーション。お店を訪れた人がメニューに書かれた「#COMODOMENU」の文字をハッシュタグ検索すると、過去に訪れた人が投稿した写真を見られるしくみです。初めて店を訪れた人でも、料理の写真をその場で調べて、気になった料理を注文できるのがうれしいですね。
この取り組みはメディアでも話題となり、多くのユーザーがInstagramでレストランの写真を見ることにもつながりました。「いまにも食べたくなる」「手にとってみたくなる」「いますぐ行ってみたくなる」ようなクオリティの高い写真が人気を集めるInstagramの特徴を上手に利用し、ロイヤルティ育成とブランディングを両立させた取り組みです。
3. ユーザーボイスとしてWebサイトに掲載する
ユーザーの声は商品の購入において大きな心理的影響をもたらします。家族や友人がすすめてきたり、他に比べて高いレビューが付いていたりすると、その商品を選ぶことが多いでしょう。一般的にレビューの付いた商品は、付いていない商品よりも信頼される傾向にあります。
アパレルブランドの「BlackMilk」のECサイトは、消費者のこうした行動特性を利用し、ユーザーの評価をInstagramで集めてWebサイトに掲載しています。
自社商品に関する投稿を「#blackmilkclothing」のハッシュタグで集め、自社Webサイトに表示して顧客が見られるようにします。顧客は自分がほしいと思った商品がどれくらい人気があるのか、どのような評価がなされているのかを写真とコメントで購入前に把握できるわけです。
例えば、同社のレギンスの商品ページではこのように表示がされています。
顧客が実際に商品を使用している姿や評価を見せることで、企業や商品への信頼を高め、消費者の購買欲をかき立てることができます。
4. O2Oイベントを企画し来店促進につなげる
InstagramはO2Oの手段としても注目されています。O2Oとは、Online to Offlineの略で、ネットとリアルをつなぐマーケティング概念です。Instagramは写真の投稿によってファンとのコミュニケーションが図れること、ハッシュタグによって拡散する文化が根付いていることから、O2Oにも活用できます。
「American Eagle Outfitters」は、2015年、O2O施策として「AEOラッピングトレインキャンペーン on Instagram」を実施しました。街中を走行中の「AEOラッピングトレイン」をファンが撮影し、ハッシュタグ「#AEOTRAIN」を付けてInstagramに投稿。店舗のスタッフに電車の写真を投稿した画面を見せると、先着順で洋服をプレゼントするというキャンペーンです。
その場で写真を撮ってハッシュタグを付けて投稿するだけの「参加ハードルの低さ」が特徴のこのキャンペーン、ユーザーが撮影したくなるような素材を用意したこと、店頭ですぐにインセンティブを入手できるようにしたことで、多くのユーザーの参加を促しました。
以下は、同社のFacebookでの宣伝投稿です。
このように、他のSNSも利用してイベントを告知することでさらにキャンペーンを盛り上げ、多くの参加者を獲得した成功事例です。
5. 1つのアカウントで複数のファン層を獲得する
Instagramは仲のよい友人やあこがれの対象となる人とだけ繋がるコミュニティなので、企業アカウントでは対象とするファンを想定し、確実に反応が得られる写真を投稿していくのが基本です。
しかし、実際には企業やブランドにはさまざまなファンがいます。そこで、投稿のときに、自社の特徴から複数のジャンルでファン獲得を狙う施策を講じることができるでしょう。例えば、「全日空(ANA)」のInstagramアカウントは「恋人」をテーマに据え、女性が好む、かわらしい写真でアカウントの世界観を演出しています。あえてコメントは付けず、ハッシュタグのみ記載しているのも特徴です。
一方で、航空機の機体を写した写真や、飛行中の窓外の風景を写した写真など、旅好きのユーザーや飛行機ファンに刺さるような投稿もしています。
このように、異なるファン層に対して1つのアカウントで対応する場合は、投稿内容にバリエーションを持たせながらも、あくまで統一された世界観を維持することが大切です。色調を揃える、同じフィルターで加工する、コメントに対するポリシーを守るなど、統一感を持たせるように工夫しましょう。
また、アカウントを通じて「企業アカウントだからできる写真」を意識することも大切です。スタッフの普段の表情や、お客さまの利用シーンといった写真から、企業やブランドの空気感を伝えられるはずです。
6.海外向け投稿で情報発信
言葉よりも写真がメインとなるInstagramマーケティングでは、言語の壁を超えてグローバルに展開できます。風景や文化など、日本らしいコンテンツを配信することで、海外のユーザーに訴求し、ファンの獲得につなげます。
グローバル展開で参考になるのが、海外の航空会社や鉄道会社です。例えば、航空会社の「タイガーエア」は、就航先のグルメや街並など観光に役立つ情報を発信しています。旅行に行きたくなるような、世界各国の写真を中心に投稿されていることから、旅行好きなユーザーや観光ファンを中心に人気を博しています。
「ロサンゼルス地下鉄」では、ライフスタイル提案の形で情報を発信しています。鉄道を中心に、街のストーリーを感じさせるような写真が多く、クオリティも高いアカウントとなっています。
「エールフランス」はフランス語圏の企業ですが、情報の発信は英語。Instagramは言葉がなくても楽しめるSNSですが、世界共通言語の英語を使うことでより多くのユーザーにリーチするよう仕掛けています。また、ファンの投稿をリポストして紹介したり、航空機の写真のみならず航空中の窓外の風景を紹介したりと、幅広い投稿でファンの心を捉えています。
国内企業では、本田技研工業の取り組みが挙げられます。世界中でホンダ車が走っているスタイリッシュな写真を世界に向けて発信。圧倒的なフォロワー数を誇っています。
無印良品は商品紹介の写真を中心としながらも、季節や日本らしさが感じられる写真をときどき混ぜて投稿しています。シンプルかつオシャレなブランドの世界観を海外に発信し、人気アカウントとなっています。
このほか、第1回で紹介した清水寺のように、日本の文化を海外に向けて発信するアカウントにも人気があります。風景や食べ物など、「おいしそう」「きれい」「行ってみたい」と思うような写真を投稿することで、日本の文化や企業に対して親しみや好感を与えられるはずです。
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以上、全7回に渡ってお伝えしてきた「実践Instagramマーケティング入門」いかかでしたでしょうか。Instagramをより身近に感じていただき、日々のマーケティング活動で実践していただければ幸いです。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。