3時間でハイブリッドクラウド、MSと共同構築の「Hybrid Cloud System for Microsoft」
デルが“オンプレミス版Azure”アプライアンスを国内発売
2016年04月06日 07時00分更新
デルは4月5日、ハイブリッドクラウド環境構築のためのアプライアンス製品「Dell Hybrid Cloud System for Microsoft」の国内提供を開始した。デル製ハードウェアとマイクロソフトのOS/ソフトウェアとを統合済みで出荷するため、短時間で本番稼働ができ、パブリッククラウドのAzureと同じインタフェースで運用できる点が特徴。
Dell Hybrid Cloud System for Microsoft(DHCS)は、昨年11月のDell Worldで発表された製品。マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Cloud Platform System(CPS) Standard」を採用した、国内で初めての製品となる。
具体的には、デル製のハードウェア(PowerEdgeサーバー、PowerVaultストレージ、ToRスイッチ)とマイクロソフト製のソフトウェア(Windows Server 2012 R2、System Center 2012 R2、Microsoft Storage Spaces、Windows Azure Pack)を組み合わせた構成で、42Uラックに据え付け、ソフトウェアインストール済みの状態で工場出荷される。
構築済みで出荷されるため、DHCSは「設置からわずか3時間でハイブリッドクラウド環境構築を実現できる」(デル)。顧客ニーズの高いクラウドバックアップやクラウドDRの設定を含めても、構築は半日ほどで完了するという。
顧客のシステム規模に応じて、Sサイズ(仮想マシン100台)、Mサイズ(同 200台)、Lサイズ(400台)の3モデルが用意されており、スモールスタートしたのちに段階的なスケールアウトも可能。ストレージへのSSD搭載本数の変更など、3モデルをベースとしたカスタマイズもできる。デルエンジニアによる顧客システムの現状アセスメントや設計支援などのサービスも提供する。
DHCSの特徴の一つが、Windows Azure Packの採用だ。これはAzureクラウドで使われているテクノロジーをオンプレミス導入可能にするソフトウェアで、Azureと同じ管理ポータル/セルフサービスポータル/定義済みイメージなどが利用できる。そのため、管理者やユーザーがAzureのスキルセットやワークフローをそのままオンプレミスでも活用することができ、ハイブリッドクラウド導入における運用コストや技術障壁が低くなる。
また、デルとマイクロソフトの共同エンジニアリングにより「統合アップデート」が提供される。ソフトウェア/ハードウェアのアップデートは1つのパッケージとして四半期に一度提供され、サービスを停止することなく、スクリプトによってすべてのアップデートが完全自動実行される。
DHCSの最小構成価格(税別)は3200万円から。デルでは顧客のビジネス状況に合わせたファイナンスオプション「プロビジョン&ペイ」「ペイ・アズ・ユー・グロウ」を提供しており、たとえばDHCSを活用して提供するサービスの開始時点から支払を始めたり、サービス成長とシステム規模に合わせた額での割賦払いにしたりすることができる。
ハイブリッドクラウドを必要とする企業の導入障壁を解消
発表会に出席したデル エンタープライズ・ソリューションズ統括本部長の町田氏は、現在の企業の多くがハイブリッドクラウド環境を必要と考える一方で、複雑さやコストの障壁があるという認識を持っていると指摘。マイクロソフトとの共同エンジニアリングにより完成したDHCSを利用することで、短時間で稼働しシンプルに利用でき、投資リスクも抑え、最適なリソース配置のできるハイブリッドクラウド環境が実現すると説明した。
また日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 本部長の佐藤氏は、DHCSの発売は「マイクロソフトのクラウド戦略にとって、非常に大事な発表だ」と述べた。マイクロソフトでは、Azureと顧客のオンプレミスクラウド、さらに他社クラウドを単一のリソースプールとして扱い、各クラウド間でワークロードを自由に動かせる“Intelligent Cloud Platform”のビジョンを提唱している。佐藤氏は、今回、国内初のMicrosoft CPS採用製品となるDHCSが発売されたことにより「このビジョンをいよいよリアルな形で顧客に見せられる」とコメントした。
デル パートナー事業本部長の松本氏は、今回の発売に合わせ新たなパートナープログラムを開始したことを紹介。DHCSの販売や導入サポートだけでなく、既存Azureユーザーへのコンサルティング、さらに閉域網接続(ExpressRoute)のネットワーク構築などを、パートナーと共に展開していくと語った。
パートナーを代表して出席した日本ビジネスシステムズ 代表取締役社長の牧田氏は、同社が昨年手がけたハイブリッドクラウド案件では、DHCSと同様の環境を構築するために「数人のエンジニアで、3カ月かかった」と紹介。それを数時間に短縮するDHCSは「画期的な製品」だと述べ、これまで構築に費やされていたコストとマンパワーをより本質的な業務に生かせるのではないかと語った。