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最強最薄の腕時計 シチズンの“意地” バーゼルワールド2016

2016年03月22日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 針の薄さ、100ミクロン(0.1mm)。

 スイス・バーゼルで開催中の腕時計見本市「バーゼルワールド2016」。シチズンが発表したのは、薄さ2.98mmの腕時計「エコ・ドライブ ワン」。薄さ1mmのムーブメント・キャリバー8826を使った世界最薄のアナログ光発電腕時計だ。

 限定モデル「AR5014-04E」は素材も最強だ。

 ケースは硬度1500HV、セラミックと金属の複合材料「サーメット」。ベゼルと裏蓋には炭化タングステンを使った硬度2100HVの複合材料「バインダレス超硬合金」。薄くしたことでケースがたわんではムーブメントにふれてしまう。薄さ、丈夫さ、金属的な光沢を兼ねるため、2種類の素材を選び出した。

AR5014-04E 800本限定 今秋発売予定 予価税別70万円

薄さなんと2.98mm。横から見ると冗談のよう

 文字盤は厚み0.15mmしかないサファイアガラス。裏面から黒を印刷し、コイン縁のような放射線を印字した。

 ケース径38.25mm、ストラップはワニ革。800本限定、今秋発売予定、予価税別70万円。奇しくもカシオの「MR-G」限定版と同価格だ。なおあちらはG-SHOCKに雪平鍋のような槌起(ついき)加工を施した好対照の1本。

 通常版は、ケースとストラップがデュラテクト加工のステンレススチールになり、ケース径が39.8mmに大きくなる。ベゼルと裏蓋はサーメットで予価30万円。なお文字盤の色味によって「AR5000-50E」(ブラック)「AR5000-68A」(シルバー)「AR5004-59H」(チャコールグレー)の3種類がある。

通常版AR5000-50E(ブラック) 30万円

ケースとストラップはデュラテクト加工のステンレススチール。ベゼルと裏蓋はサーメット

 光発電腕時計エコ・ドライブは今年で発売40周年。記念モデルとして開発したのがエコ・ドライブ ワンだ。展示会場では何かがきらきらと光り、星のようにまたたいていた。近づいてみるとムーブメントの部品だった。40周年の意味で4000本のワイヤーを使い、金銀の部品およそ6万個をつり下げたのだという。

 金色と銀色の境界線はホリゾンタル・タイム(時間の水平線)。過去と現在、2つの時間が拮抗する水平線、そして超薄型時計の側面をあらわしたそうだ。

シチズンのバーゼルブース。きらきらと輝いている

ムーブメントの部品だ。6万個をつりさげたという

 エコ・ドライブ ワンの開発期間はおよそ3年。記念モデルで最薄にチャレンジすると決めると、当時の最薄モデルが4.4mmだったが、3mmを目標にした。

 こだわったのは、腕時計に求める本質の価値。腕につけたときの心地よさと、時間の見やすさだ。ただ薄いという技術力による訴求ではなく、腕時計として本当に求められる品質を追求しなければならないと考えた。

 「Apple Watch」をはじめスマートウォッチがあらわれた今、ムーブメントをつくっているメーカーにしかできないことを追い求めなければならない。エコ・ドライブ ゼロは「ウォッチメーカーの意地」(シチズン)の結晶だったという。

薄さ1.00mmのムーブメント、キャリバー8826

1円玉(約1.5mm)と比べても薄さが際立つ

 エコ・ドライブ ワンをこわごわ腕に巻き、針をのぞきこんでみた。

 針は真鍮製だ。半分を鏡面加工、半分をつや消しにすることで、白っぽくして視認性を確保しているそうだ。針というより文字盤に描かれた絵のようで、驚きのため息しか出ない。シチズンは腕時計を身につけることを「まとう」と呼んでいる。黒い文字盤を見つめていると、まるで極小の宇宙をまとった気分になった。




盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、記者自由型。好きなものは新しいもの、美しい人。腕時計「Knot」ヒットの火つけ役。一緒にいいことしましょう。Facebookでおたより募集中

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