シャープがロボット型のスマートフォン「RoBoHoN」を発表した。「は?」と口に出して言ってしまった。シャープ公式アカウントでも「ロボホンに半笑いの方も」と冗談めかしてつぶやいていたが、私の場合、半笑いというかポカーンだった。
RoBoHoNはポケットに入るロボット型携帯電話。身ぶり手ぶりをまじえながら電話をしたり、メールができる。背中の液晶ディスプレイに加えプロジェクターもついていて、写真や動画を再生できる。動画の解像度は720pまで対応する。
2016年前半発売予定で、価格・販路は未定。iOSでもAndroid OSでもない独自OSを採用し、プラットホームも特製だ。Wi-Fi、3G、LTEに対応し、SIMカードを入れて携帯電話として使える。SIMロックフリーにするかどうかは検討中。
音声認識はクラウド、アプリはローカルで処理をする。いまはまだ基本機能だけ搭載した状態だが、将来的にはアプリベースで機能を増やしていく予定。しりとりや言葉遊びができたら、子供の遊び相手になってくれてうれしい。
意味はいまだによくわからない。でも、かわいい。かわいいし、すごい。実際に動かしてみると買ってしまいそうになるのもおそろしい。
ともかく、このごろ暗めの話題も多いシャープが、いきなりネジが飛んだような新製品を出してきた。どうしてしまったのかと心配になり、編集部は「CEATEC JAPAN 2015」で開発担当の景井美帆さんにお会いしたのであった。
シャープの「顔」を見せたかった
──いきなり失礼ですが、よく企画通りましたね。
開発スタート当時の事業本部長が現在、代表取締役の長谷川(祥典氏)なのですが、本人が「面白いからやってみたら」ということで。
──トップが寛大だったと。正直ぶっとんだ製品です。現在シャープで、こんなに攻めたプロダクトを出すのはどんな意味があると考えていますか。
「目のつけどころがシャープだね」と昔は言われてきました。しかし、最近シャープの「顔」が見えなくなってきたと思われている部分があります。製品自身、売り上げが未知数ではありますが、シャープブランドの向上には貢献できるんじゃないか。インターネットでは「斜め上」なんて言われますが、元気なシャープが帰ってきた、という見え方になったら嬉しいです。
──シャープを元気にしなければ、というわけですね。あらためて、なぜロボット携帯なのかを教えてください。
ケータイやスマホは進化してもなかなか差異が見えづらくなってきました。シャープでは『エモパー』という、スマホから話しかけてくるコンセプトをつくってきたんです。機械と人間の関係性を変えたい、インターフェースをタッチパネルから違うものにするにはどうすればいいか。そう考えた結果、音声での会話をメインにしようと。今までも音声認識機能はありましたが、四角い箱に話しかけるというところで楽しさとしては欠けていました。なら、お話するにはどういう形状がいいかを考えていったら、こうなりました。
──そこからロボットって飛躍ありません?
動きと顔、形があるだけで、話しかけやすさがかなりちがいます。動きはじめると、なんだか話しかけるのが楽しくなる。会話に失敗したときも、逆にこっちがフォローしなきゃいけないと思いはじめる。ユーザーにとっての、ケータイの存在自体を変えていければという思いがあります。
独自開発のサーボを積んでいる
──販路はまだ検討中とのことですが、誰に使ってもらうイメージですか?
年代や性別は関係なくジェネラルに売っていきたいと考えています。その層ごとに使い方がちがうだろうと。高齢者なら1人でいるときの寂しさを癒したり、20~30代ならモバイルガジェットとして使ったり。
──ちなみにRoBoHoNくんはデアゴスティーニの「ロビ」にそっくりです。これはロボットクリエイター高橋智隆さんのデザインですね。
はい、高橋さんとの共同開発です。「スマホではない別のものをつくりたい」と高橋さんにお伺いしている中で「ロボット電話にしたらいいんじゃない」という話が出てきまして、結果こういうものができちゃいました。
──世界初の「ロボット携帯」です。開発は大変じゃないですか。
ポケットサイズにするのがとにかく難しかったですね。二足歩行ができてポケットに入るようにするため、小型のサーボモーターを新規開発してるんです。
──RoBoHoNくん独自サーボ!
あとは携帯の機能とロボットを融合させないといけないのですが、はじめての試みなので苦労しています。聞き取れないことも音声認識としてある。そういうときにどういうリアクションをすればいいか。
──まだ発売までは時間がありますが、どこを洗練させていきますか。
会話ですね。いまはまだ決められたことしか言えませんが、いろんな言葉に反応するようにしたい。会話をするのがいかに自然で楽しくできるかは、実際にやってみないとわからない。そこが苦労すると思います。
──最後にロボット市場についてです。ドローンやロボット掃除機ではアメリカが先行しています。ロボットは日本のお家芸、さみしい思いもありました。
コミュニケーションに関しては日本が先行できると思うんです。アニメであったり、キャラクターであったり、日本文化はそうしたものを許容する文化があり、繊細にいろいろとつくりこむ能力は優れているはず。会話するときのちょっとしたデザイン、返し方は日本人がいちばん得意にしているものなんじゃないか。たしかに軍事、産業用はアメリカが先行していますが、コミュニケーションロボットは先行していける。少なくとも、そうありたいと思っています。