いよいよ国民一人一人に12桁の識別番号を割り振る社会保障・税番号制度「マイナンバー」がスタートする。さっそくこの10月から市町村を通じて各人に順次マイナンバーが通知され、2016年1月には本格的な運用が開始されるというスケジュールだ。
政府側は個人情報を一元管理することによる行政処理の効率性/利便性/公平性などを、手を変え品を変えアピールしているわけだが、当然のことながら、国民側からはまとまった個人情報の履歴が一気に漏えいすることへの不安が高まっている。
本稿ではここでマイナンバーの是非を問うことが使命ではないので、同制度に対する懸念や疑念をあげつらうことはあえてしないが、今回はちょっと異なる角度から「情報漏えい」という問題を考えてみたい。
端的に言ってしまえば、情報を秘匿しておくことは果たして可能なのか……ということである。もちろん「情報など漏えいしてもいい」という極論を披瀝したいわけではない。ただ、情報というものはそもそも“拡散”され“複製”され“引用”される本来的な性質を持っているはずなのである。
過去3年で国民の半数の個人情報が漏えいしている
2013年にエドワード・スノーデンが告発/暴露したアメリカ国家安全保障局(NSA)の個人情報収集活動問題は記憶に新しいが、これに誰もが知っており、毎日その製品やサービスを使っているであろう世界的なIT企業が複数、協力/関与していたという噂は根強い。しかし、これは決して対岸の火事ではない。ほかならぬ我が国においても、自治体や企業からの膨大な個人情報の漏えいはかなり頻繁に起こっている。
東京商工リサーチの調べによれば、2012年1月から今年6月15日までに起こった上場企業とその関連会社からの情報漏えいと紛失は実に179社/288件にのぼり、流出した可能性のある個人情報は総計7148万人分におよぶ。
同調査の対象外となる6月以降でも、某カタログ通販大手から13万件以上の個人情報が流出しており、私企業以外では6月1日に日本年金機構が100万人を上まわる数の年金情報が外部からの不正アクセスによって流出したと発表した。
(次ページでは、「情報漏えいから発展した出版文化」)
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