まつもとあつし氏が選ぶ、押さえておきたいネット時代の重大キーワード
『角川インターネット講座』完結記念~日本のネットを変えた9つ
2015年10月17日 12時00分更新
日本のインターネットの歴史から
押さえておきたい重要トピックを抜き出すと……
昨年以来刊行を重ねてきた『角川インターネット講座』が、第15巻「ネットで進化する人類」の発売をもってついに完結する。
『角川インターネット講座』とは、全貌をつかみにくくなった巨大なネット社会を、設計と思想、文化、ビジネス、セキュリティー、著作権といった“15のテーマ”に分け、バランスよく解説したシリーズ書籍。
日本におけるインターネットの父・村井純氏をはじめ、楽天創業者・三木谷浩史氏、Ruby開発者・まつもとゆきひろ氏など、これまでインターネットとその社会をリードしてきた各界のトップランナーたちが各巻を監修している。
今回は完結を記念して、ほぼ四半世紀になろうとする日本のインターネットの歴史から、“押さえておきたい重要トピック”を、第3巻監修者・長尾真氏が講師を務めたリアル講座「THE SALON」に登壇したITジャーナリストのまつもとあつし氏につれづれに挙げていただいた。各トピックについて深く知りたい方はぜひ『インターネット講座』各巻を手にとってみてほしい。
インターネットマガジン創刊:1994年
まつもとあつし 商用インターネットが人口に膾炙し始めたのが1995年ごろでしょう。パソコンをグッとインターネットに近づけたのが、同年に発売された「Windows 95」ですが、その前年に「インターネットマガジン」(インプレス刊)が創刊されています。インターネットを一般に普及させるという大きな役割を担った雑誌として記憶に残っています。
インターネットマガジンには当時、インターネットの地図とでも言うべき「インターネットサービスプロバイダー相互接続マップ」が折り込みで収録されていました。1次プロバイダー、2次プロバイダーの相関図がまとめられていたのですが、村井純先生のJUNETを起源とする国内インターネットがどんどん複雑、広大になっていって、だんだんページに収まりきらない規模になっていくところにインターネットの発展を実感したものです。
当時私は大学生で、某2次プロバイダーでアルバイトをしていました。そこでLinuxやHTMLの勉強をしていました。懐かしい(笑)。
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角川インターネット講座 (1) インターネットの基礎情報革命を支えるインフラストラクチャー村井 純、砂原 秀樹、ヴィントン・グレイ・サーフ(著)KADOKAWA/角川学芸出版
Windows 95とNetscape Navigator:1995年
まつもと パソコンとユーザーをグッとインターネットに近づけた「Windows 95」ですが、当初のバージョンはWebブラウザーが標準搭載されていなかったんですよね。「Plus! for Windows 95」が別途必要でした。その上、Internet Explorerはまだあまり性能が……表組みを再現できなかったりとか。
そこでほとんどのユーザーは「ネスケ(Netscape Navigator)」を使っていましたよね。パッケージ販売のほか、インターネットマガジンのような雑誌の付録に付いていたり。ネスケを使って、初めてネットに触れたという人は少なくないと思います。
孫正義氏:1997年
まつもと Yahoo!が日本で頭角を現わしてきたのが1997年ぐらいでしょうか? 孫さん(孫正義氏)がインターネットとビジネス、特にベンチャービジネスとを結びつけて、日本人にわかりやすい形で提示した最初の世代の起業家といえると思います。孫さんのあとに三木谷さんなどが続き、その起業家意識は脈々と受け継がれていくことになりました。
そして孫さんといえば、「*ビットバレー」を牽引した1人でもありましたよね。ビットバレーのイベントを渋谷で開催したとき、渋谷の会場に孫さんがチャーター機でかけつけた、なんて伝説もありました。
そんな話も思い出されるほど、1995年から2000年にかけては“インターネット黎明期”でビジネス的に面白いことが多かったですね。そして2000年から2005年ぐらいが“成熟期”というような気がします。2005年からは雲行きがやや怪しくなってくるんですけど。
*渋=渋い=Bitter、谷=Valleyによる造語。東京・渋谷のインターネット関連のベンチャー企業が集中する地域をこう呼んだ。シリコンバレーに続け、という意味合いもあり1999年ごろに最高潮の盛り上がりを見せた。
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角川インターネット講座 (9) ヒューマン・コマースグローバル化するビジネスと消費者三木谷浩史(著)KADOKAWA/角川学芸出版
iモードの登場:1999年
まつもと 1999年に「iモード(i-mode)」が登場しました。PCからのWebブラウジングがまだ一部の人に限られていた時代に、ケータイでのネットアクセスを可能にしたことは大きな衝撃でした。
当時つとめていた会社の社長が見せてくれたiモードの画面が、まだ白黒のケータイでしたね。すでにPCからのWebブラウジングに親しんでいた自分にとっては「これ、ホントに便利なの?」と思ったものです。
しかしiモードは「CHTML」や「公式メニュー」といった、本来はオープンな存在だったインターネットを、あえて限定的な仕様に仕上げることによって、一般に普及させたのです。
そして、世界的に見れば「ケータイ端末でインターネットにアクセスする」ということを技術的にもビジネス的にも世界に先駆けて実現できていたということになります。日本のインターネットにとって、iモードの存在は非常に大きいですよね。
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