リムーバブルドライブにOneDriveを設定できなくなり、
Windowsタブレットなどで困ったことに
Windows 10の変更点のうち、ユーザーに影響があるものの1つに、OneDriveの仕様変更がある。具体的にな変更点としては2つあり、1つ目はOneDriveフォルダが、同期対象としたフォルダしか表示されなくなったこと。もう1つは同期先にリムーバブルドライブが利用できなくなったことがある。
Windows 8では、同期するしないに関わらず、OneDrive側のフォルダはすべて見えており、これを開くことで、ダウンロードが自動的に行なわれていた。またタブレットなど、ストレージ容量に余裕のないマシンでは、メモリカードを同期先とすることで、比較的大容量のファイルを同期させることが可能だった。
OneDriveを使いこなしていたユーザーにとってみると、かなりの“改悪”という感じがしないでもないが、同期されていないファイルを開く場合に、アプリケーションによっては、ダウンロードに時間がかかることでエラーが発生していたことがあり、問題がなかったわけではない。
また、リムーバブルドライブが利用できなくなったことは、メモリカードをうっかり外すなどして、致命的なエラーが出ていたからだと考えられる。ただし、今後OneDriveがまったく改良されないわけではないため、記事の掲載以後に動作が変わる可能性がある。ここで説明しているのは、Windows 10 Desktopの正式版(TH1)であるBuild 10240および、インサイダープレビュー Build 10532のOneDrive(ビルド17.3.5930.0814)で有効な方法だ。インターネット検索などでこのページに到達した場合、現在のOneDriveのバージョンを確認してから、実際に適用してほしい。
この連載では、以前にOneDriveの同期先をメモリカードにする方法を解説したが(ちなみに当時はまだSkyDriveだった、関連記事)、これはいまでもWindows 8では有効なものの、Windows 10ではまったくの無効な方法になってしまった。
仮想HDDの仕組みを用いることで
メモリカード上にOneDriveの同期フォルダを置く
そこで今回はWindows 10に対応した方法を解説することにする。ただし、Windows 8の場合に比べて少し敷居が高い。簡単にいうと「VHDXファイルをメモリカード上におき、これを起動時に自動マウントして、仮想HDDをOneDriveの同期先にする」ということだ。この文章の意味がわかるようなら、作業を困難と感じることはないと思われるが、何を言ってるのかさっぱりわからないという場合には、ちょっと難しいかもしれない。
というのも、本来用意されている方法ではないので、トラブルに自分で対処せねばならず、原理などを理解していないと、何をしていいのかわからなくなる可能性がある。また、最悪、OneDrive側のデータを失う可能性さえある。もちろん、どんな場合でも、筆者やASCII.jp編集部では責任を取ることはできないので、ユーザー自身のリスクで作業していただくことになる。
さて、さきほどの文章では2行ほどで済んだのだが、実際の作業は比較的大規模なので、いくつかに分けて解説する。仮想HDDは、なにもOneDriveの同期先の移動にだけしか使えないわけではなく、リムーバブルディスクにファイルを置くことができない他のアプリでも流用できる。
作業は、大きく以下のように分かれる。
1. OneDriveの同期フォルダをすべてオフにしておく
2. VHDXファイルを作成する
3. タスクスケジューラーに自動マウントスクリプトを登録する
4. マウントされた仮想HDDにOneDriveの同期先フォルダを移動する
OneDriveの同期先フォルダを移動する場合、同期をまったくしてないほうが便利だ。このため、現在OneDriveでフォルダを同期している場合には、OneDriveの設定で同期フォルダをすべてオフにしておく。
もっとも、Windows 8でメモリカードを同期先に指定していた場合、Windows 10にアップグレードしたら同期できない状態になっているはずだ。ただ、すでにCドライブなどに同期しているようならば、これをオフにする。
さて、今回は「2」のVHDXファイルの作成について解説する。
そもそも仮想HDDって何なの?
仮想HDDとは、ソフトウェアでHDDをエミュレーションする技術で、本来は仮想マシン用に開発されたが、最近ではさまざまな応用ができるようになった。仮想HDDはソフトウェアからは、HDDのように見えるが、実際の記録は物理ディスク上に置かれたファイルに対して行なう。このファイルを仮想HDDファイルという。
マイクロソフトの仮想マシン技術はWindows 7まで使われていたVirtual PC系から、サーバー向けに開発されたHyper-Vへと移行している。これにともない、Windowsで扱える仮想ハードディスファイルも、Virtual PC時代のVHD形式に加え、Hyper-V用のVHDX形式が使えるようになった。VHD形式よりも、VHDX形式のほうが効率が良く、特に障害対策や「容量可変」の設定では有利だ。
仮想HDDファイルは作成時に容量を指定する。容量を指定しておかないと、HDDとして扱う場合にソフトウェアが残り容量を確認できないからだ。このとき、実際に使っている領域のみがファイルに記録されて、記録が進むに従い仮想HDDファイルの容量が大きくなっていく。これが容量可変だ。これに対して容量固定は、作成時に指定した容量を記録できるサイズのファイルを最初に作ってしまう設定を指す。
そういうわけで利用するのは、VHDX形式の容量可変タイプだ。なお、VHDXの制限のため、保存先のメモリカードはNTFSでフォーマットしておく。容量をどうするかだが、まず、利用するメモリカードの容量や将来のアップグレードを考慮する。VHD/VHDXファイルは、デバイスから独立しているので、たとえば、現在32GBのメモリカードを使っていて、あとから128~256GBのメモリカードに差し替えることもできる。仮想HDDのメリットは、こうした物理メディアの変更でも仮想HDDファイルをコピーするだけで対応できる点にある。
つまり、容量可変にするなら、現在のメモリカードの容量に合わせて小さなファイルにする必要はない。すでに512GBのSDカードも出荷されているようだが、タブレットの多くはmicroSDカードスロットを搭載しており、一般的な製品は128GBタイプが数千円ぐらいから。このあと256GB製品などが登場することを考えると、256GB程度が適当ではないかと思われる。将来的にはもっと容量は上がるだろうが、その前に他のマシンに乗り換えている可能性のほうが高い。
なお、以下の作業で、仮想HDDに割り当てるドライブ文字を指定することになるが、割り当てには十分注意してほしい。というのは、OneDriveの同期ソフトウェアは、固定したパスでしか同期したファイルを置くフォルダを指定できないため、ドライブ文字が変わってしまうと、フォルダがなくなったとしてエラーになってしまうからである。
なお、マイクロソフトでは、仮想HDD(Virtual Hard Disk)をVHDと略すが、仮想HDDファイル形式の「.VHD」とは混同しないように注意する。「コンピュータの管理」などのメニューにあるVHDとは「仮想HDD」のことで、実際の仮想HDDファイルとしては.VHDまたは.VHDXが対応する。
(次ページでは、「実際に仮想HDDを作成する手順を解説する」)
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