人間が接触する情報のパターンは4点
そこで今回は人間と情報との関係にまつわる、直近の問題を考察していくための事前準備として、われわれの身近に存在する情報の種類を整理してみたいと思う。
ひとまず、大多数の人々と情報(特にデジタル情報)との今日的な関係を大雑把に分類してみると、おそらく以下の4パターンに収斂されるのではないか?
ダウンロードする情報 |
---|
1 自発的/選択的に任意の情報を自分が取得する |
2 ひょんなことから目的以外の情報にうっかり接触してしまう |
アップロードする情報 |
---|
3 どんなにささいなものであれ、自律的に情報を公開/投稿する |
4 ほぼ無意識のうちにデジタル機器から情報が吸い上げられる |
いまのわれわれはこの1~4が抜き差しがたく絡み合った情報環境の中に生きている。
本連載の初期では主に、自発的に取得した情報の中に、目的以外のものがノイズとして急増しているという議論の端緒に、個人の情報公開が加速している以上、純粋に望んだ情報の取得だけを遂行することはほぼ不可能であると述べた。
いくらTwitterのタイムラインが厳選されたフォロワーだけだとしても、すべての情報が必要や目的にかなったものであることはあり得ない。だからといって、第三者の意見や見解に不当な制限や抑圧を加えるなどということもできない。なぜなら、自分の発言や投稿も、誰かにとっては不愉快なノイズであるからだ。
しかも、人間と情報との関係は「効率性」や「合理性」だけでは硬直や停滞を招きやすい。したがって、うっかり接触した情報を「セレンディピティー」(情報との偶然の出会いが思わぬ好結果を生みだすこと)として肯定的にとらえる視点も提示した。情報の入力にまつわる調整弁のコントロールは常に自分の判断で行なうしかなく、その基準は自分というメディアの「編集方針」にほかならない。
新たな情報への意識がコンテンツ産業の常識を覆す
ところがノイズである2の代表格たる「広告」について言えば、徐々にこれを排除する方向性も出現し始めている。「無料で利用できるのであれば広告が入るのは仕方ない」というコンテンツ産業の常識が、「広告を見なくて済むのであれば有料でもよい」という消費者の志向や意識の出現によって揺らいでいることも事実だ。
9月1日から日本でもサービスが開始された北米最大の動画ストリーミングサービス「Netflix」は、ユーザーから月額視聴料を徴収する代わりに広告が一切表示されない。Netflixのライバルであり国内では先行してローンチしている「Hulu」も広告なしのメニューを準備しているという。
過剰な「情報の提供」ではなく、適度な「情報の遮断」が新しいビジネスを誘発していくことはほぼ間違いないだろう。
(次ページでは、「アップロードもダウンロードも良し悪しが付いて回る」
この連載の記事
-
第15回
トピックス
ネットの民意がリアルに反映されないケースはなぜ起こる? -
第14回
トピックス
電子書籍がブレイクしない意外な理由とは -
第13回
トピックス
国民半分の個人情報が流出、情報漏えい防止は不可能なのか -
第12回
トピックス
Apple WatchとGoogle Glassは何が明暗を分けたのか? -
第11回
トピックス
誰も教えてくれない、ウェアラブルを注目すべき本当の理由 -
第9回
トピックス
PCと人間の概念を覆しかねないシンギュラリティーの正体 -
第8回
トピックス
PCが売れないのはジョブズが目指した理想の終了を意味する -
第7回
トピックス
ビジネスにもなってる再注目の「ポスト・インターネット」ってなに? -
第6回
スマホ
アップルも情報遮断の時代、情報をうまく受け取る4つのポイント -
第5回
スマホ
僕らが感じ始めたSNSへの違和感の理由と対処を一旦マトメ - この連載の一覧へ