聖域なく改革を断行する
高橋社長は、「シャープの業績悪化の要因は、変化への機敏な対応力の弱さ、成長事業の立ち上げの遅れ、コスト競争力の低下、ガバナンス・経営管理力の不足にあったと認識している」と語り、「新たに策定した中期経営計画の達成と、いち早い業績回復を実現することにより、株主の期待に応えられるように、一丸となって邁進していく所存である」とした。
「2015~2017年度 中期経営計画」では、事業ポートフォリオの再構築、固定費削減の断行、組織・ガバナンスの再生・強化の3つの重点戦略を実行し、安定的収益基盤の構築を図る計画を打ち出す。初年度となる2015年度は売上高が2兆8000億円、営業利益は800億円の計画を打ち出す。
今年10月からは、5つのカンパニーを設置する一方、上期中には国内3500人の削減を実施し、全世界で全社1割にあたる人員を削減。「聖域なく改革を断行する」として、本社の土地、建物の売却を行うことにも言及した。さらに、緊急人件費対策として役員報酬および従業員給与削減を実施することも示し、「私は、今年2月から役員報償を55%削減。7~9月は70%削減することにした。それ以降の削減幅については、9月に決定していく」と語った。
シャープの取締役13人への役員報酬は、3億1300万円。1人あたり平均で約2400万円。高橋社長の報酬額は、1億円を超えていないことから有価証券報告書でも具体額は公表されていないが、下世話な話とはいえ、55~70%の減額によって、果たしてどれぐらいの額が手元に渡るのが気になるところだ。
2014年度に、シャープと同じ最終赤字決算となったソニーの平井一夫社長が、50%カットといいながらも、約3億2000万円の報酬を得ていることに比べると、その差は歴然。1人で、シャープの取締役13人分に匹敵する規模だ。 ソニーは、米国企業と同じ発想を持ち込み、再建や構造改革に取り組む経営トップは多額の報酬を得るという仕組みのようだが、一方で、シャープは旧来からの日本企業の仕組みを踏襲していることが差になっているともいえる。だが、米国経験が長いシャープの高橋社長は、米国時代の友人から、再建に取り組む経営トップとして、多額の報酬を得ていると誤解されているというから、その点でも可哀想だ。

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