東北大などは6月17日、3次元構造を持つグラフェンを用いた高性能な水蒸気発生材料を開発したと発表した。
太陽光エネルギーの利用は、太陽電池だけではなく太陽熱による温水供給や水の蒸発(海水の蒸留、塩の濃縮)など、さまざまな用途で用いられており産業で重要な役割を果たしている。
研究チームでは、多孔質のグラフェンが毛細管現象で水を吸い上げ、太陽光を吸収して水を局所加熱することに着目して実験を行った。グラフェンはもともと疎水性だが、化学ドープにより親水化加工し、擬似太陽光を照射したころ、水の蒸発スピードは世界最高レベルの水蒸気発生効率を記録した。水蒸気への変換効率は従来の56%(グラファイト粉)から80%にも向上したという。
単にグラファイト粉を使った場合よりも厚みは1/200に減りながらも24%も効率が高いことに加え、薄く作れるということはヒーターを併用する際にヒーターの熱が伝わりやすく効率向上が期待できる。研究チームでは、金属を使わず環境負荷が低い水蒸気発生素材は、水の生成や汚染水浄化など、さまざまな産業用途として可能性を持つとしている。
また、グラフェンの活用としては、MIT(マサチューセッツ工科大)が5月30日に発表した熱交換パイプへの利用も興味深い。熱交換パイプは家庭用エアコンから火力発電所までさまざまな場所・機器で利用されていて熱を液体から空気へと移す冷却器。
冷媒を通す銅パイプの表面にグラフェンをコーティングすると、その撥水性により表面に結露した水が落ちるのが早くなる。水が結露したままでは熱が空中に伝わりにくく、熱交換効率(冷却効率)が下がってしまうのを大きく改善できるという。撥水性ポリマーのコーティングでは熱によって変質してしまうことから、エアコンから火力発電所までさまざまな機器の効率を高める可能性を持つという。
グラフェンは高い電気伝導率などから電子デバイスとしての利用も期待されているが、熱伝導率や強度など多彩な特性を持つため、既存の各種機器への利用も広く研究されている。
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