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顧客データの徹底活用で、一人ひとりに合わせたまったく新しい顧客体験目指す

ユニクロで「デジタル買い物体験」を、ファストリとアクセンチュア協業

2015年06月16日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 ファーストリテイリング(ファストリ)とアクセンチュアは6月15日、消費者向けサービスにおける「デジタルイノベーション」実現に向けた協業で合意した。モバイルやアナリティクス、クラウドといったテクノロジーの活用を進め、チャネル横断で消費者一人ひとりに合わせてカスタマイズされた「新たな顧客体験」の創出を目指す。

(左から)発表会に出席したファーストリテイリング グループ執行役員CIOの玉置肇氏、ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長の柳井正氏、アクセンチュア 成長市場担当グループ・チーフ・エグゼクティブのジャンフランコ・カサーティ氏、アクセンチュア 取締役副社長執行役員 製造・流通本部統括本部長の江川昌史氏

 発表によると、両社はこれまでの関係性を強化し、「ユニクロ」などファーストリテイリンググループの衣料小売店の顧客が、実店舗とデジタル店舗の境なく、いつでもどこでも商品の選択、試着、購入、受け取りなどの「買い物体験」を楽しめるデジタル環境を実現していく。詳細については今後議論していくが、将来的には合弁会社の設立も目指すとしている。

 具体的には、ファーストリテイリングの基幹業務システム(CRM、SCMなど)のクラウド移行や、Eコマースプラットフォーム構築などのオペ-レション基盤/IT基盤の構築をアクセンチュアが支援する。さらに、ファーストリテイリング内でのアナリティクスやモバイル、クラウドなどのテクノロジースペシャリストの育成、世界中の先進的な事例や事業構想の収集なども共同で進めていく。

協業におけるファーストリテイリングとアクセンチュアの役割

 会見で流されたイメージビデオでは、顧客が気になるファッションの人を撮影すると該当商品のカタログがスマホに表示され、そこからすぐに購入できる仕組みや、ユーザーが撮影した映像をもとに商品企画が行われる様子などが紹介された。

会見で披露されたイメージビデオ

「『服を買う体験』を変える」ファストリ・柳井社長

 ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長は、消費者サービスのイノベーションに向けた今回の協業について、「アクセンチュアとの約15年に渡る関係によって実現するもの」だと語った。

 「いつでも、どこでも、誰でも、最高の買い物体験ができる。オムニチャネルに留まらず、『服を買う体験』を変える。その実現に向けて商品の作り方、社員の働き方、情報活用の仕方といった、すべてのものを変えていくことになる」(柳井氏)

ファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長

 具体的には、顧客の声の商品への素早い反映、顧客に気に入ってもらえる商品構成やコーディネートの提案、業務プロセスの完全デジタル化による商品企画から販売までのリードタイム短縮、クラウド活用による最適なサービス提供体制の確立などに取り組むという。

「高度IT人材育成に注力、IT内製化を進める」ファストリ・玉置CIO

 ファーストリテイリング グループ執行役員CIOの玉置肇氏は、「すべての顧客を会員化し、ブランドと店舗スタッフが一人ひとりの顧客とつながり、顧客の要望や趣向にあった商品や情報を、時間や場所の制約をなく届けることができる体制を作る」と説明した。

 「これまでは、ユニクロ店舗に月1回だけ訪れる顧客も、頻繁に訪れる顧客も差がなかった。またECサイト経由の顧客も、店舗に訪れた際は“アノニマス(匿名)”な状態だった。すべての顧客を会員化できれば、トレンドを取り込みながら、個々の顧客の好みや購入履歴、サイズなどを把握したうえでの提案が可能になる」「今年秋冬シーズンから、顧客情報をデータベース化し、これを活用して利便性を高めたサービスをリリースしたい」(玉置氏)

 なお玉置氏は、同社ではITを重要なツールだと考えており、「IT組織は社内に置きながら推進する。ITエンジニアの内製化を進めるものになる」「クラウドのインフラだけでなく、クラウド上やモバイルで動作するアプリの開発も内製化していく」と語った。

 「こうした(サービスの)環境を実現するには、現在の組織では難しく、最新技術へアクセスできる優秀なIT人材の採用と育成が大切だ。アクセンチュアが持つ、グローバルな知見、ノウハウ、技術を活用し、デジタル化による新たな産業の創出に貢献できるイノベーター人材を採用、育成していきたい」(玉置氏)

「消費者の財布はひとつ。アップルやディズニーが競合になるかも」

アクセンチュア 成長市場担当グループ・チーフ・エグゼクティブのジャンフランコ・カサーティ氏

 アクセンチュア 取締役副社長執行役員 製造・流通本部統括本部長の江川昌史氏は、「デジタル関連の技術は日々進展している。今回の協業にあわせて、グローバルのビッグデータ、クラウドの専門家など、デジタルに精通したタレントを日本に集約し、ファーストリテイリングを支援する」と述べた。

 一方、アクセンチュア 成長市場担当グループ・チーフ・エグゼクティブのジャンフランコ・カサーティ氏は、今回の協業について、「2020年までに世界のトップ10カ国は、新たな技術を活用することで1.4兆ドルもの生産性向上を実現できるといわれている。ファーストリテイリングに業界を変えてもらいたい。これからの協業を楽しみにしている」と語った。

 「デジタル化、グローバル化した時代の競合相手は、同じ業界の企業だとは思っていない。世界中のブランドと競合することになる。(消費者の)財布はひとつ。ディズニーやコカ・コーラ、ネスレ、P&G、そしてアップルが競合になるかもしれない。ファーストリテイリングは、日本発の新たな産業を創出することになる。顧客から情報を集めて、お金を払って買いたいと思う商品を市場に投入していく」(柳井氏)

協業を通じて「日本発の新しい産業」を創出していくと語った

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