古くさいイメージのあったサイボウズ Officeの先進性について紹介した前回に引き続き、今回は「グループウェア=スケジュール」というイメージを覆していこう。事故車の買取査定を行なうプラスワンオートは、サイボウズ Office 10のカスタムアプリ機能をフル活用し、業務改善を進めている。
圧倒的なスピードで廃車・事故車を買取
サイボウズ Officeをはじめ、多くのユーザーがグループウェアで使っているのは、スケジュールの機能である。複数ユーザーで同じカレンダーを共有することで、効率的に業務を進めようというのはグループウェアのわかりやすいメリット。サイボウズ Officeには便利な機能がいくつもあるが、実際、今も多くのユーザーがスケジュール中心で使っている。そんな中、クラウド版のサイボウズ Office 10の「カスタムアプリ」機能をゴリゴリに使い込んでいるユーザーがプラスワンオートである。
千葉県野田市を拠点とするプラスワンオートは廃車・事故車買取を展開する専門業者。ユーザーや保険会社からの連絡を受け、事故車・廃車をスピーディに査定し、高額で買い取るほか、事故車の移動や保険会社の引き取り業務まで代行する。買い取られた事故車や廃車はそのまま、あるいは修理して業者向けのオークションにかけられ、ディーラーや部品業者、海外への輸出業者に販売されることになる。また、日本一のオークション会場がある千葉県野田市には自社工場を完備。中古パーツを使った鈑金サービスも提供しており、幅広くドライバーの要望に応える。
同社のアピールポイントは「スピード」だ。今回お話を聞いたパーツ・サービス担当の鈴木隆司氏は、「自動車は毎月査定の値段が落ちていきますので、書類が来月ですでは商売になりません。営業の移動、引取の手配、書類の準備、買取まで含めて、他社より早くやらせていただきます」と語る。
「午前中に言ってくれれば間に合ったのに」をなくしたい
プラスワンオートでのサイボウズ Office 10導入の経緯は、紙や電話でのやりとりを減らし、業務を効率化したいという鈴木氏の思いがあった。
もともと同社は事務所が越谷市、車両置き場が野田市に別れていたため、現場と営業などでコミュニケーションロスが発生していた。鈴木氏は「夕方に車来るとか、修理やっておいてみたいなやりとりがすべて電話や紙のメモで行なわれていた。そのため、『午前中に言ってくれば、間に合ったのに……』ということが発生していた。営業担当のPCに情報が入っていても、外出先から見られないのも課題だった」と語る。
こうした課題を解決できそうなクラウドサービスを検索し、約3年前に鈴木氏が行き着いたのが、サイボウズ Office 10のカスタムアプリ機能だ。
カスタムアプリ機能は従来Excelで管理していたようなデータを共有するのに最適なWebデータベース機能。タスクやクレーム管理、安否確認、商談進捗や契約書管理、社内Q&A、見積もり依頼などさまざまなアプリを、豊富なテンプレートから選択し、簡単操作で項目自体をユーザーがカスタマイズできる。また、集計やステータスを表示できるほか、更新したら通知を飛ばしたり、アプリや項目単位でアクセス権を詳細に設定することも可能だ。
プラスワンオートにとっても、管理したい対象は従業員より、あくまで買取車の状態や作業のステータス。そのため、スケジュールではなく、自社のビジネスフローにあわせた専用アプリケーションが必要だった。このニーズにぴったりだったのが、まさにカスタムアプリ機能である。スケジュールではなく、自社向けにカスタマイズできるこの機能があったからこそ、同社はサイボウズ Office 10を導入したわけだ。
もちろん、クラウドサービスということでOffice 365、Google Apps、Salesforce等も検討したが、敷居が高かったという。ITはまったくの門外漢と語る鈴木氏は、「そもそもAccessデータベースをイチから作るなんて無理。ほかは海外製品のとっつきにくさもなんとなく感じたし、サイボウズの説明が一番わかりやすかった。自分が作って、自分で説明しないといけないので、説明がわかりやすいのは重要だった」と語る。
「このアプリがなければ業務は止まる」
コミュニケーションロスを解消するという目的でクラウド版のサイボウズ Office 10を選択したプラスワンオート。まずは工場や配送担当のドライバーに、端末としてiPadを配布し、どこからでも使える環境を整備したという。「特にドライバーはパソコンに抵抗があったので、家に持ち帰ってもいいよということで、iPadを使ってもらった。とはいえ、操作を指導するのも大変だった」と鈴木氏は振り返る。
その上で、まずはサイボウズ Office 10のスケジュールから使い始め、従業員の出勤予定や現在担当している作業を登録。慣れてきたところで、いよいよカスタムアプリの作成に取り組んだ。
メインとなる車両管理アプリは、鈴木氏と現場が綿密なヒアリングを元に作ったもの。とはいえ、現場で欲しい情報が膨れあがり、項目を作るのに苦労したという。
たとえば、車両の色1つとっても、写真で見た色と実物が違うことを想定し、ドライバーにカラーを記載してもらう項目が必要となった。また、走行距離も顧客ニーズを踏まえて作られた項目。「自走できるか、できないかだけではなく、タイヤが転がるかという項目も入れました。積載車に積むのにフォークリフトを使うか、使わないかで、値段も大きく違ってくるので」(鈴木氏)。結局、1台当たりの項目数は車のスペック、車検の有無、書類の有無、ナビやバックカメラの有無といった車の状態はもちろん、作業のステータス、修理の必要性、部品の調達状況、配送スケジュール、顧客情報、ドライバーへの伝言、保管先情報、出品方法、鈑金担当者の売上高まで約230項目になったという。
現場を巻き込み、約半年間かけた試行錯誤の結果、作られた車両管理アプリ。オークションに出す順番で買取車が並び、徹底的な現場の見える化が実現した。仕上げが完了しないで、配送に回ってない車は一目でわかる。入力が完了しなければ、次のプロセスに進まないので、従業員はアプリを使わざるを得ない。「入庫番号をとるという些末な作業さえ、今までは人手をわずらわせていた。今は事故車を登録すると、入庫番号が自動的に振られるようになり、取引に必要な情報や作業状態を見渡すことができる。もはや、このアプリがなければ、業務が止まります」と鈴木氏は断言する。
「私たちにとってのグループウェアはカスタムアプリ」
カスタムアプリでもう1つ作ったのは、買取前に使う営業向けの案件管理アプリだ。こちらはサイボウズのメールワイズを利用して、問い合わせを受け、営業がカスタムアプリに案件を登録。グループ内で進捗を管理できるようになっている。「ステータスが変わると上司にメールが飛び、アドバイスを追加できるようになっています」(鈴木氏)。
プラスワンオートの差別化ポイントであるスピードを実現すべく、鈴木氏が描いていた業務改善の理想の姿にはかなり近づけたという。「高速道路のサービスエリアで営業マンが案件をチェックし、近くで査定があれば、地図を元に現場に直行。現地から写真を送ったら、すぐに査定し、場合によっては、そのまま買取まで進むこともある」という圧倒的なスピード感だ。
正直、スケジュールアプリはサイボウズ Officeでなくても選択肢はある。しかし、手塩にかけて作ったカスタムアプリは、まさに同社のための業務基盤となっている。「私たちにとってのグループウェアは、まさにカスタムアプリです」と語る鈴木氏。既存の使い方、ビジネススタイルに固執せず、自社のためのグループウェアを作り、業務改善を進めたプラスワンオート。サイボウズ Office 10の先進的な機能をうまく活用した好例と言えるだろう。
(提供:サイボウズ)