学習交流を名目としていた
字幕付き海賊版動画を公開した企業も摘発
もう1つの中国国内の反応が大きかった出来事は、今月報じられた日本やアメリカなどの中国国外の動画に字幕をつける「字幕組」と呼ばれるサイトの「射手網」や「人人影視」の取り締まりだ。
この2つのサイトは字幕のついた動画を公開していたが、サービスはすでに利用できない。
字幕がついた海賊版には、「学習交流用に提供されたものであり、保存したら24時間以内に削除してください」という言い訳で正当性をアピールするのが定番だったが、海賊版コンテンツの助長をしているということで、閉鎖に追いやられた。
字幕職人による字幕組(グループ)が複数あることからもわかるように、競争は激しく、実力がある字幕組は、1番組の字幕を(精度はともかく)1~2時間で完成させているという。字幕組の収入はユーザーからの出資や広告収入がメインで、ボランティア的な要素が強いようだ。
日本やハリウッドなど海外コンテンツ愛好者には衝撃のニュースで、コメント欄には惜しむ声が多数書き込まれた。
今年の摘発はちょっと違う
海外コンテンツとデモ映像の拡散防止に関係?
このように中国政府は、対海賊版について具体的でインパクトある動きをとっている。
とはいえ、これまではアダルトビデオも海賊版の動画も、NGとはいいつつも、黙認ともいえる状況だった。
中国政府は海賊版配信で多くのユーザーに支持されたサイトやサービスが何回か停止に追い込んでいる。2009年には、「中国BT聯盟」など3サイトが、2011年に「電驢(VeryCD)」が、2013年に「思路」が閉鎖され、このときにも多くのユーザーに衝撃を与えた。
ただ、今年の取り締まりが過去の取り締まりと同じとは思えない。企業の有名無名を問わず、セットトップボックスのコンテンツ規制が行ない、国家新聞出版広電総局による、root化できないOS「TVOS1.0」が搭載されていないセットトップボックスは利用できなくなった。
また9月には、サイトでの海外の映画やドラマなどのコンテンツの購入と配信数について、前年に購入・配信した国産コンテンツ総数の3割までと規定する新通知を発表している。つまり日本を含む海外のコンテンツを少なくしようという動きの中で、著名な海賊版サイトの取り締まりがあったわけだ。
さらに、今年はネットの追加規制がGoogleやLineやInstagramなどを対象に行なわれ、厳しさが増している。中国当局は香港のデモをはじめ、中国各地のデモの動画拡散を大変嫌っており、最近ではYouTubeを何度となく名指しで非難している。
ミニブログの「微博(Weibo)」や、メッセンジャーの「微信(WeChat)」などと同様に、P2Pサイトや動画サイトを市民メディアとして警戒している。どうにも単なる正規版コンテンツ推進運動に思えないのだ。
ただし、完全にこの手のサイトがなくなるとは思えない。最近では、江蘇省の中学の教師がポルノサイトを運営し逮捕されたというニュースが、「聖職者がポルノサイト運営して荒稼ぎするなんて!」とばかりに話題になったばかり。字幕組とて全部が一掃されたわけではない。
今回挙げた、快播や射手網や人人影視がなくなることについては、ネットで惜しむ声が多くあがっている。
しかしこうしたサイトはまた次から次へと出てくるだろうと、経験則で中国人は知っている。「これからどうすればいいんだ」といった声はあまりあがっておらず、ヒアリングしてもあまり心配していないようだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場[2011.11-2012.10] 現地発ITジャーナリストが報告する5億人市場の真実」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)。
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