2014年9月4日「Startup Asia Tokyo 2014」デヴィッド・コルヴィン(Tech in Asia)によるインタビュー。「スマートシッター」「トゥナイト・フォー・トゥー」などゲーム以外のビジネスについて、GREEの田中 良和CEOは「狭い意味でのECではなく、広い意味でのECがトレンド」「マーケットが大きくなりつづけるかという仮説が大事」と話す。
――売上が落ちているGREEをどう回復させるか。
3年前はガラケー向けのゲームが中心だったが、市場というよりハードとして(ケータイが)どんどん減っていく事態に直面した。IT業界で産業ごと消滅する機会はなかなかないもの。本業であるブラウザーゲームをスマホに切り替えなければならず、ネイティブゲームも当てる必要があり、グローバル展開もする必要がある。難度の高いことを同時にやらなければならない。まずスマホへの移行、次にグローバル展開、最後にネイティブゲーム、というふうに組み換えている。2番目までは出来たので、最後に3番目のネイティブゲームをやりたい。
――ゲーム業界を去りたいとは思わない?
そんなことはない。ゲームとインターネットが交差した世界はとてもいいもの。日本から生まれた会社なので、日本にあることを強みに成長したい。ゲーム産業は日本で作って、世界で売ることに競争力がある。収益の柱としても(日本製である点は)重要。日本で始めてもすぐグローバルな事業ができるのもいいなと思っている。ただ、単にゲームだけをやる会社ではないので、最近はゲーム以外の事業もやっている。
――「スマートシッター」「トゥナイト・フォー・トゥー」など4つのサービスはあまりつながりがないが。
事業を考える上で、マーケットが大きくなりつづけるかという仮説を大事にしている。ECは右肩上がりに違いない、コミュニケーションビジネスは大きくなっているに違いない、といった形。楽天でも、オークションなのか通販なのかというのはやりながら適正化していった。(スマートシッターのような)モバイルコミュニティーサービスは大きく成長するだろうという仮定でやっている。これから来る大きなサービスは何か。たとえばUberが1つのトレンドになっている。狭い意味でのECではなく、広い意味でのECがトレンドになるのでは。
※「トゥナイト・フォー・トゥー」は9月3日に提供を停止。開始わずか3カ月と短命のサービスとなった(編註)
――今後はベビーシッターがトレンドになるという意味?
ビジネスの手法としての話。Uberは運転手レベルまでスマホを持ったから出来たサービス。たとえば10年前、パソコンからタクシーを呼ぶというのは難しかった。ベビーシッターも同じこと。
――ユーザー数はどうか。
規模としては伸びている。もともとGREEのブラウザーゲームは単なるフィーチャーフォン向けの釣りゲームを作ったのが始まりだった。「モバイルゲームのプラットフォームを作り、サードパーティーを集めたいので、まずは釣りゲームを作りたい」とプレゼンしていたわけではない。アマゾンも、もとは本しか売っていなかった。スマートシッターがうまくいけば、家にいるお母さんにいろんなビジネスを展開できるのではないか。
――そのほかについては?
いずれもスマホに特化したビジネスで、シェアリングエコノミー的な概念がある。
――ゲーム以外の事業が増えたことについて、GREE社員はどう思っている?
インターネットでなにかを変えていくのがコーポレートスローガン。ゲームだけをやる会社じゃないというのは多くの人が分かっていると思う。ゲームは大きな分野なので間違いない。この5年間はモバイルゲームにだけフォーカスしていたが、今は違う。
――会場に若い起業家が参加しているが、アドバイスがあれば。
自分で自分の首を絞めるようだが、高い目標を持ち続けて頑張ってほしい。会社をやっているといろいろ大変なことがあると思う。たとえば半年に1回人事面談をするが、全員に二重丸をつけたくなる。しかし、結果として誰かにサンカクをつけることになる。自分として、こういうビジネスを通じて何をしたいか、どうやったらこういう高い目標を持ち続けられるかを考え続けている。
※本文は講演内容を編集したものであり、発言内容・発言順序の同一性を保証するものではありません。
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