このページの本文へ

天才エンジニアでなくても10億ドル企業を起こせる

2014年08月24日 07時00分更新

文● Matt Asay via ReadWrite

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

スーパー開発者はもはや時代遅れだ。

MTE5NTU2MzIyNjI5NjgyNjk5_0

今からおよそ10年前、エキサイトの創業者であり現在グーグル・ベンチャーズのパートナーであるジョー・クラウスは明言した。「起業家にとってこんなに良い時代はない」と。クラウスはスタートアップの経済面、つまりサーバやネットワーク、その他コンピューティングに必要な機材の安価さについて述べたのである。

そして10年後、アンドリーセン・ホロウィッツのパートナー、サム・ゲルステンザングはクラウスの発言からさらに一歩踏み込んだ。彼は最近のブログ記事において、コストだけではなく製品開発に必要な能力も歴史的に低いと主張した。

エンジニア未経験者でも起業できるのである。

資金がない?問題なし!

いまや懐かしい話だが、アプリケーションを作りそれを元手に起業するためにはかなりの資金が必要だった。ハードは高額。ソフトも高額。ストレージもやはり高額。

一方でエンジニア費用は比較的安価だった。

しかし2005年にクラウスが着目したように、その頃から変化は始まっていた。「ハードは100倍安くなりました…。エキサイト時代はSun専売のハードウェアを購入し、Sun専売のドライブアレイも購入して…。でも今は多くの会社が販売している汎用的なIntel boxを買っています」。

さらにこうも書いている。「1993年当時はサービス構築のために必要なものを購入後、メンテナンスにも費用を払い続けなければいけませんでした。オペレーティング・システム、コンパイラ、ウェブサーバ、アプリケーションサーバ、データベース、もうあらゆるものにです」。

「費用だけじゃありません。権利交渉にも時間と労力が必要でした」とも述べている。

しかし2005年当時、「無料オープンソースのインフラが当たり前」そして「いつどこでも入手可能」という状態になっていた。
そういった状況を踏まえて彼はこう述べた。「今までになく多くの人が起業家になれます。300万ドル用意できる人より10万ドル用意できる人の方が多いですから」。

開発者は安くならない

クラウスは触れなかったが、ほとんどのコストが低価格化する中、優秀な開発者のコストは右肩上がりだった。例えば、開発者の雇用とストレージの相対費用は下記の通りである。

graph01

インフラ・コストとエンジニア・コストの割合

1985年、ストレージは1ギガあたり10万ドルという会社にとっては主要な支出であったのに対し、開発者の賃金はといえば年間2万8000ドル程度だった。

2013年になると状況は大きく変わっていた。いまやストレージは1ギガあたり0.05ドルと安い。一方で開発者は年間9万ドルと高額だ。

現在、エンジニアの給料は史上最高かつ急上昇中なのである:

graph02

ソフトウェア・エンジニアの給料の上昇

InstagramやPinterest等、インターネット界のビッグネームに投資したベンチャーキャピタルでパートナーを務めるゲルステンザングによれば、この状況も変わりつつあるという。

平凡な開発者の台頭

SnapchatやInstagramのような「少エンジニア多ユーザー型」企業に投資した経験から、ゲルステンザングはこう仮定する。「今までになく、少数のエンジニアと資金で多くのユーザーにコードを送信できる」ということが「新しい常識」であり、「ソフトウェア・エンジニア一人あたりの潜在的影響力を上昇」させていると。

そして影響力が高まるとコストも高まるのだ。

しかし、開発者が作業を行う上での大きな障壁は既に解消されているとゲルステンザングはいう。 Amazon Web Services、その他のプラットフォームやインフラプロバイダーが、開発上の障壁を取り除いたことにより、コーディングは簡単に、またはまったく必要なくなっているのだ。

プログラマーになるための障壁は急速に崩壊している。WhatsappやImgurの成長を可能としたソフトウェア開発環境(オープンソース・ソフトウェア、Githubのような開発ツール、Digital Ocean等のようなインフラ・サービスなど)もその要因と言える。それらの存在は、ソフトウェア開発の経験や能力が重要でなくなってきたことを表している。

いまや個人でもDigital OceanやHeroku、AWS(Mesosphereで管理可)を使ってウェブアプリを数百万のユーザーに使ってもらうことができる。Google App Engineにデータベースをスケールするのに、MySQLパラメータを深く理解する必要はない。常に使用しているCPUチップの知識さえ必要ないのと同じ所まで来たのだ。

つまり、平凡でいるのにこんなに良い時代はないのである。

もちろん、「まだファンデーション(インフラ等)の構築には」スーパーウーマンやスーパーマンのような「10倍エンジニアが必要」なこともあるだろう。しかし彼はこう締めくくる、「一般的なファンデーションはもう構築済みなので、個人がプラットフォームを構築するために必要な能力や経験は減少しています」。

減少するだけではなく、なくなる可能性もある:

今日、ソフトウェア製品の素晴らしいアイディアを持っているなら、自身がエンジニアになるか一人探せばいい。明日には、10億ドル規模のスタートアップの獲得にエンジニアなんて必要ないかもしれない。

世界中の英語が堪能な人々にとって、風向きはより一層良いと言えるだろう。

関連記事:テクノロジー企業が文系の人材を必要とする理由

Matt Asay
[原文]


※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちら


週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中